私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー
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4-3
数日後、私はグラウンドの隅にある樹の陰から、見ていた。あの人がボールを追って走っていたのだ。初めて見る姿に、へぇーあんな風にやるんだと。だけど、私には声を掛ける勇気が無かったのだ。どう声を掛けたら良いのかと。すると、ジャージ姿の女子学生がこっちに向かってくる様子だった。さっきまで、グラウンドの中でボールを拾ったりしていた人。私は、即差に逃げるようにその場を離れていた。
せっかく ここまで追ってきたのに・・・声を掛ける勇気が無いのだ。
うじうじとしたまま、1週間程して、クラブの歓迎会をやるからと、街の居酒屋さんで・・私達新入生は勿論お酒を飲めなくて、食べるだけで、お茶を飲んでいたのだが、リーダーという朋子先輩は平気でビールをがぶ飲みしていたのだ。
終わった時に、私はトイレに行って、お店を出てきたら、もうクラブの連中は誰も居なかったのだ。私は真菜ちゃんに待っててねと言っておいたのだけど、だいぶ機嫌が良くなっている朋子先輩が、次行こうと騒いでいたので、強引に連れて行かれたのだろう。
店先には、二人の男子大学生らしき人が居て・・・ひとりはあの人だ。もうひとりの方が声を掛けてきて
「わぁー 可愛い娘 さっきの峰ちゃんクラブの子? 置き去りにされたんだー」
私が頷くと、あの人が振り返って、私を見て・・・驚いているんだかどうだか、じぃーっと見つめてきた。その間にも「ねぇ ねぇ 俺等 ラグビー部なんだ 置いて行かれたんだから俺等と飲みに行こうよー」とか話し掛けてきたけど、私も黙ったままあの人を見つめ返していた。しばらくはそのままで・・・私よ 真織よっ わかんないのかなー なんか言ってよー
だけど、店の中からひとりの女子生徒が出てきて「お待たせー じゃぁ 行こうか?」と、さっきトイレで入れ違いになった人だ。それに、あの時ジャージを着てグラウンドに居た人。
あの人は、促されて、黙ったままあっちを向いて歩き出したので、私は・・・おもわず
「ここに来たんは・・・ウチの勝手やー 勝手に思い込んだんやーっ」
少し、足が止まったように見えたけど、無視しているみたいに歩き出して・・・一緒の女子学生が
「ねぇ いいの? 思い詰めてるみたいだよー あの子 たぶん グラウンドで練習見てたのよー」と、言っているのが聞こえて、その時 (いいの? このままで せっかく ここまで追いかけてきたのにー)と誰かの声がしたように感じた。私は大声で叫んでいた。今までの想いを精一杯ぶつけるつもりだった。
「マオは 忘れて無いよ! ずっと 好きだったんだよ! あの時はごめんなさい #####・・・伊良夫《いらぶ》のこと ずっと 待っとったんよ!」涙声でちゃんと言えていたのかはわからない。それに、自分でも訳のわからない声が・・・
すると、届いたのか あの人は戻って来て、いきなり私を抱きしめて
「今度は、勝手させない 俺が受け止めるよっ しっかりと」と、言ってくれて・・・きつく抱きしめて、唇を合わせてきた。涙でくしゃくしゃになっている私に頬刷りもしてくれていた。その時には、もう他のふたりは居なくなっていたんだけど
「こんなー いきなりぃ 初めてやったんよー キス・・・ 責めてるんちゃうけど・・・」と、言いながらも私は初めての・・・で 胸が張り裂けるかと動揺もしていた。そんな風に言ってもらえると思っていなかったから・・。
「それがどうした 俺も初めてだよ なんで マオがここに・・・驚かすなよー」
その後、カフエに二人で入って
「さっきの女の人 いいの? 彼女ちゃうん?」
「なに言ってんだよー あれは ラグビーのマネージャー まぁ 仲 良いけど、同学年だしな 関西出身なせいもあるけど 恋愛関係は無いよ!」
「ふ~ん これからは?」
「あのさー 真織って 嫉妬深いのか?」
「ううん だって 伊織利さんのこと なんにも知らないからー」
「だよな 俺も 真織のこと 何にも知らない まさか 同じ大学に来るってなー それに・・・ さっき 変なこと言ってたな? ・・・いらぶ?」
「??? なんか言ったよね マオもわかんない・・・ 突然 何かに襲われたようなー でも 変な 二人になっちゃったネ! 良かったぁー 本当に あの時はごめんなさい あんな風に思って無かったのに・・・つい ゆうてしもぉーた」と、二人で笑い合っていたのだ。
「ん わかってるってー ようやく 二人のスタートだ よろしくな 仲良くやろうな!」
「良かったぁー もう 知らんぷりされるかもって思っていたから・・・ あのさー 伊織利さんって何学科?」
「ははっ そーだな 応用生命科学科 真織は?」
「生物資源科学科 よろしくネ」と、私には素敵な大学生活が見えてきていたのだ。
そして、少しあるけど、歩いて帰ろうかとなって、歩き出してしばらくしてから、私が彼の手に触れたら、繋いでくれたのだ。彼のアパートは私のより大学の反対側にあって、場所を教えてもらって「寄っていくか?」と、聞かれたけど、そんなー いきなり そんなこと出来ないからと 拒んで 彼は、私を送ってきてくれた。だけど、寮の近くに来ると、木陰に連れ込まれて、もう一度、抱きしめられて・・・「ず~っと好きだった 忘れて無いよ」と、言ってくれて、今度は、彼の舌が私の歯の間を潜り込むようにしてきて、私の舌を捉えていたのだ。
その夜、私は幸せだった。遅くに、真菜が帰って来て「ごめんね 逸れちゃったネ」と、私の部屋を訪れていたけど・・・私は、その方が良かったのだと、でも、嬉しくて、その夜は気持ちが高ぶってあまり寝れなかったのだ。お母さんを説得してまで、ここまで来たのだから・・・
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