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私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

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4-2

 私達は一度、帰って、私はベージュの綿パンに着替えていて、もう一度集まってから、その先輩のとこを探して訪れていた。4階建てのマンションの2階の部屋。

 部屋の中は1Kの10畳あるかないかのワンルームで、ベッドに勉強机に真ん中に炬燵の台がポツンとあって、その上にホットプレートが置いてあって、唐揚げとお茶だけ置いてあった。

「私のね 特製のお好み焼きを焼こうと思ったのよ まぁ 狭いけど 適当に座ってちょうだい」

「あっ ありがとうございます」

「あの 先輩は・・・ ひとりでここに 心細くないですか?」

「うん 隣りはさー こっちが空手部の3年生で、こっちはラグビー部の4年生の男の子でさー 私が なんかあって、大声出せば、駆け付けてくれるから・・心強いよ」

 私は、ラグビーってことにビクッとしていたのだけど、真菜ちゃんが

「それって ある意味 余計に危険感じません?」

「あっ あーぁー あいつ等 私みたいな ガサツなの 相手してないから 大丈夫」

 その時、別の女の子が現れて、挨拶をしてきて

「この子は チームの2年生 みんな 自己紹介やなー」

「ウチは 農業環境工学の2年 三茶屋(さんちゃや)しのぶ 大阪の玉造出身やー 朋子先輩の後輩」

「後輩ってこともないんよ 同じ大阪やけど 私は生物資源科学科やからー 改めて 藤井朋子ね」

 私と、同じ学科なのだけど、私はあの人が何学科なのか知らなかったのだ。同じ農学部なんだろうけど・・・。

 その後、私達も自己紹介をして、峰ちゃんクラブは全部で10人くらいで、半分くらいが関西出身なのだと聞いていた。

「峰ちやんクラブって 古いんですか?」

「そうねー まだ 2.3年かなー 私が1年の時にね 学科の飲み会の帰りに、校門のとこでね 屋台を曳いて構内に入ろうとしてたの 木の屋台だよ! 車輪がブロックの間に挟まって苦労していたのよ それで、私達が3人程で手伝ってね 聞いたら、ここの4年生で 勘治さんっていう人 その人が始まりなんやろーなー」

「へぇー 屋台引っ張っていたんですか?」

「そう 12時過ぎてたかなー それでね 構内の端っこに屋台を置いて、話を聞いたのよー そーしたら すごぉーい 話でね 駅前でたこ焼き売ってたんだって そしたら、恐いお兄さんが来て「勝手に ここで 商売するんじゃぁ無いよ!」って だから、勘治さんは その日の売り上げ 全部2千円を差し出して「すんまへん これ 全部なんです 俺は 学費を稼ぐ為にやっているだけでしてー」と、言ったそうな そしたら、そのお兄さんが「なんだ これっぽちか? お前 学生なんか?」と、聞いてきて、そう答えると「学費 稼いでいるのか?」と、聞かれたので「うちの親は仕送りなんか出来ないので、自分でなんとかするしかないんです だから 大阪名物でっせー ちょこっとでも 稼げればと思って 昼間は学校でっしゃろー そやから、夜にと思って」って・・・その後、そのお兄さんは、お金を返してきて、たこ焼きを買ってくれたんだって その話を聞いてから 私も ちょこちょこ手伝う様になったの それが、峰ちゃんクラブのきっかけよ 峰ちゃんクラブは私が勝手にネーミングしたの」

「なんか すご~い 始まりなんですねー」

「そーなんよ それでね その勘治さんっていうの 食わせ者でね 後でわかったんだけど 大阪の天下茶屋のたこ焼き屋さんの息子でね そのお店が流行っていて3店舗あるのよ 仕送り出来ないなんてウソよ それにね 昼間でもスーパーの敷地で店をやっていて、けっこう稼いでいたって話よー だから 私も 夜の駅前の時は手伝いに行くでしょ バイト代 はずんでくれてね でも、時々来る お兄さんは恐かったけど・・・勘治さんは可愛がられてたの どうしてか気に入られたみたい」

 その間に、しのぶ先輩がお好み焼きを焼いていてくれて

「おいしいー これっ」と、みんなが食べていて

「そうでしょ 私の自慢のレシピなの ソースもブレンドしてあるのよ」

「それで その屋台を先輩が引き継いだんですか?」

「まぁねー 彼は留年してね その間に私はチームを増やして行って、彼が卒業した後に、今の軽バンを置いて行ったの もう、屋台を引っ張っている時代じゃぁないよ もっと行動範囲を広げろって」

「ふ~ん 伝説の人みたい」

「そんなんじゃぁなくってね 調子いいっていうか要領いいのよね このお好み焼きのレシピ私から奪ってさー 屋台で売り始めたりしてね それまではたこ焼きだけだったのにー でも何とか卒業してね その前に鬼怒川の温泉旅館の仲居さんと仲良くなって、居候みたいにしてたんだけど 今は、旅館で働いている人にたこ焼きとかお好み焼き 届けてるのよー これが、結構 売れていてね 儲かっているみたい 去年の秋も県営グラウンドでフェスタがあって 峰ちゃんも出店したの そーしたらさー あの人 すご~い 外車に乗って来てさー 今度、草津温泉にも2号店出すようなこと言ってたのよ なんだか あの人 何しに大学に来たのかしらー で ちゃんと卒業してるのよねー 私なんか 必死で峰ちゃんクラブ引き継いでるのにさー ちょっと そいつに魅かれてしまったことがあったけど 自分でもバカみたい でも なんか 優しいとこもあるんだよー」

 朋子先輩はひとりでビールも飲んでいて、次第に酔っぱらってきている様子だった。帰る時に、しのぶ先輩が言っていたのだけど

「朋子先輩は いつも 飲み過ぎるんよねー クラブの飲み会でも 男の子に平気で抱き付いていくし・・・ 今日は おとなしいほうよ」  
 
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