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MS Operative Theory

作者:ユリス
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技術解説
  ビーム兵器に対する防御


——「最強の矛」を防ぐ「無敵の盾」を求めて——

 投石や弓矢を受け止める盾、HEAT弾(対戦車榴弾)やAPDSFS(翼安定式装弾筒付徹甲弾)を防ぐ複合装甲、弾道・巡航ミサイルを迎撃するミサイル・ディフェンスなど、強力な攻撃手段に対しては、必ず防御手段が編み出された。しかし、攻撃力と防御力の強弱関係———防御性能の高い盾が作られれば、それを凌駕する銃弾が作られ、さらに従来の方法では防御不可能な攻撃方法が考案される———は一定ではなく、時代によってシーソーゲームを繰り返してきたが、旧世紀末期以後、攻撃力が優勢な時代が長く続いた(長距離ミサイルなどは、複数の核弾頭やダミーを搭載し、突入速度がマッハ20にも達することもあって、防御手段が皆無に近い絶対兵器であり、これに迎撃するために莫大な予算と人員、システムが費やされた)。

 最も防御とは剣に対する鎧のように、単純に装甲で防ぐようなものだけを指すのではなく、回避や迎撃もその範疇に入る。RX-78(ガンダム)のビーム・ライフルを見たシャア・アズナブル少佐(当時)が、「当たらなければ、どうということはない」と言ったことは、一つの真実なのである。しかし、問題は攻撃が「当った」場合である。特にビーム・ライフルに代表されるメガ粒子砲は、通常兵器の中では最大の威力を持つ「最強の矛」であり、一年戦争時にガンダムのビーム・ライフルの直撃を受けた機体は、MSは当然のことMAや艦艇まで、例外なく撃墜されている。いうなれば、メガ粒子砲は有効な防御手段が存在しない「絶対兵器」であったのだ。

 ではシャアの言う「当たらない」ことは可能なのだろうか。ニュータイプと呼ばれるようなパイロット同士であっても、互いの技量が拮抗していれば直撃を受ける可能性が有ることを考えると、(ニュータイプではない)パイロットでは「当たる」事を前提として戦闘を行わなければならない。もちろん、MSには主力戦車を上回る強固な装甲が施されており、その防御性能は既存のあらゆる兵器を凌駕している。しかし、装甲材———ガンダリウム合金のような、いわゆる高級素材であっても———そのものはメガ粒子ビームの耐性を持たない。このため、メガ粒子砲、特にMSが携行するビーム・ライフルが普及するにつれ、その防御対策が考えられるようになった。

 一年戦争時には、既にビーム・コーティングやIフィールド・バリアなどが開発され、一定の成果を挙げていた。しかし、システムの耐久性や運用性などに欠点も持っていたため、技術者達が目指した「無敵の盾」には程遠いものであった。しかし、技術の進歩によって、ビーム防御技術は「最強の矛」であるメガ粒子砲をも防ぐ「無敵の盾」を生み出すのであった。


——対ビーム防御システムの仕組み

 メガ粒子ビーム対策には、そのエネルギーを奪う(拡散させる)ものと、特殊な「場」でビームを屈曲させるものの二つがある。前者の代表が耐ビーム・コーティングであり、後者がIフィールド・バリアである。また、U.C.0100年代には、これらとは異なる系統のビーム・シールドが開発され、以降の主流となった。

■ビーム・コーティング

 初期のビーム防御法である。装甲表面に施した特殊な塗膜が、ビーム命中時に気化し、威力を減退させる。命中箇所の塗膜が溶解するため、2発目以降を防御できないという欠点を持つ。

■Iフィールド

 主にMAなどに搭載されている防御システム。メガ粒子ビームを偏向させるIフィールドを展開し、ビームが命中する直前に「曲げて」機体への直撃を回避する。ビームに対しては絶対的な防御力を持つ。


——耐ビーム・コーティング—————初歩的なビーム対策——

 臨界半透体技術を応用した塗膜を機体に塗布し、被弾時に塗膜が気化することでビームの熱を奪い、威力を減衰・拡散させる。大出力ビームや長時間の照射に耐えられないが、比較的安価なためMS用シールドなどに使用された。

 一般機ではシールドに施されることが多く、ガンダム・タイプなどの高級機ではバイタル・エリア、もしくは機体全体に処理されていた。また、百式の金色の塗装も耐ビーム・シールドが一般的になったあとも多用された。

■MSZ-010(ZZガンダム)

 フルアーマー化された際フッ素樹脂系のコーティングが施され、耐ビーム性能がさらに向上した。


——Iフィールド—————絶対的な対ビーム防御——

 MAなどの大型機に使用されるビーム防御システム。Iフィールドを機体外に展開することでバリア化したものである。メガ粒子ビームは、Iフィールドを展開したエリアを通過できないため、ビーム兵器に対しては絶対的な防御を持つ。

 Iフィールドをビーム・バリアとして使用した初の機体は公国軍のMAビグ・ザムである。その後もMAを中心に装備されたほか、サイコ・ガンダムをはじめとする大型TMAにも採用されている。MSではV2ガンダムのアサルト・パーツに、Iフィールド・ジェネレーターが設置されている。

■RX-78GP03(ガンダム試作3号機)

 機体の左側にIフィールド・ジェネレーターを持つ。このように外部にジェネレーターを持つ機体は珍しい。


——ビーム・シールド—————「無敵の盾」の決定版——

 「ビームでビームを弾くことができるのだから、機体を覆うビームの板を作ればいい」という発想から開発されたシステムがビーム・シールドである。ビーム・サーベルを面で展開するものでU.C.0120年代から普及し始め、MSだけで無く艦艇にも装備された。

 ビーム・シールドは大気圏突入用デバイスとして使用できる多機能装備であった。また、重力下対応の飛行機構ビーム・ローターや、バリア・ビットの採用によってエリア防衛をも可能としたメガ・ビーム・シールドなど多彩な進化を遂げた。

■LM312V04(Vガンダム)

 コンパクト化した発生装置を両肘に内蔵し、広い防御範囲を確保していた。


——その他—————歴史の狭間に消えた対ビーム・システム——

 上記の3つのシステム以外にも、フィン・ファンネルやビーム攪乱膜など、メガ粒子ビームを防ぐ機構は存在していた。しかし、ビーム攪乱膜は技術の進歩から取り残され、またフィン・ファンネルは使用者が限定されるために、進歩の道を閉ざされた。

■RX-93(νガンダム)

 ファンネル間にビームを展開し、バリアとする。ビームだけでなく実体弾からの防御も可能であった。

■パブリク

 ミノフスキー弾頭により、高濃度のビーム攪乱用ガスとミノフスキー粒子を散布し、長距離ビーム砲撃を無効化した。

■ZM-S22SC(リグ・シャッコー)

 近衛師団用リグ・シャッコーは、金属鞭「メタル・ウィップ」でビームを防御するという得意な方法を採った。



補足事項

——ニュータイプバリアと環境を利用したビーム防御——

■ニュータイプバリア

 非Iフィールド搭載機がビームを無効化した事例が報告されている。これはニュータイプが(準)サイコミュ搭載機に搭乗している場合に発生したことから、感応波とサイコミュに共振したミノフスキー粒子がIフィールドを形成したと推測される。

■環境を利用した対ビーム防御

 地上やコロニー内などでは、「水」を使った防御を行うことも可能である。水中での戦闘やウォータースクリーンなどがその代表的な防御方法とされる。「水」はビーム兵器の威力を大幅に減衰させるため、高い防御効果を得ることが出来る。

 
 

 
後書き
次回 MS、MAの冷却問題 
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