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騙される者

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第三章

「ああした連中の後ろにはな」
「北朝鮮とかとつながっていたりするな」
「あれだろ、ベ平連ってな」
「ベトナム戦争の時のな」
 正式名称をベトナムに平和を!市民連合と言う。ベトナム戦争に反対しアメリカ兵の脱走等を助けていた組織だ。小田実という作家が指導者で現在の市民運動はこの市民団体からはじまったと言われている。
「あの連中だな、確か」
「あの連中の金の出所な」
「ソ連からだったよな」
「ああ、つまり連中には黒幕がいたんだよ」
「ソ連だったな」
「連中の残党は今もいるけれどな」
 参加していた者達が今も市民運動を行っているのだ、沖縄だの原発前だの行けばその実態をよく見ることが出来る。
「連中もな」
「後ろにソ連がいてか」
「煽ってる奴がいたんだよ」
「ソ連か」
「ああ、それと一緒でな」
「あの連中もか」
「絶対に後ろにいるからな」
 門倉は山村に言った。
「今ネットで愛国とか言ってる連中にもな」
「いるか」
「見ればわかると思うぜ」
「その煽ってる連中が誰か、か」
「それでその正体もな」 
 扇動者のそれもというのだ。
「わかると思うぜ」
「そうか、あの連中も煽られていてか」
「その煽ってる連中が問題だよ」
「成程な、そういえばな」 
 ここでだ、山村はこれ以上はないまでに苦い顔になって門倉に言った。牛丼の肉や御飯、玉葱の味も苦い顔の元の前には消え去っていた。
「球界再編の時もそうだったな」
「あの新聞社の社長とか」
「ああ、金融会社の会長にな」
 山村はこの二人を今でも忌み嫌っている、今は別の球団のファンでも彼にとっては忘れる筈がないことだ。
「あの連中が動いてな」
「球界を私物化する為にな」
「ああ、しかしな」
「他に煽ってる連中いただろ」
「新聞社の社長の靴の裏舐めてる奴いたよ」 
 山村はこれ以上はないまでに忌々し気に言った。
「あの落語家でしょうもないことばかり言ってシャモジ持って喚いて人様の家に勝手に上がり込んで飯漁るしか能のない奴な」
「ああ、あいつな」
「あのドクスがそうだったしな」
 先程よりも苦い顔になって言う山村だった。
「あいつ観たらテレビの画面蹴り抜きたくなる」
「その馬鹿だけじゃないだろ」
「ああ、夕刊キムってあるだろ」
「宇治参詣グループのタブロイド紙だな」
「あそこはあの社長の太鼓持ちばっかりしてるからな」
「系列違うのに虚塵大好きだからな」
「それで連中が盛んに一リーグ制に持っていこうとしてたぜ」
 怒りに満ちた声で言う山村だった。
「あの時のあそこの報道は忘れないからな」
「タブロイドってのは飛ばし記事で好き勝手書くものにしても」
「ああ、あそこはな」
 その夕刊キムはというのだ。
「もうな」
「特にだったな」
「同じ系列のジョンイルスポーツも酷かったがな」
 同じ宇治参詣グループのスポーツ新聞だ、この新聞も何故か系列は違うが今では喜代原終身監督の下シーズン一二〇敗という『偉業』を達成し十年連続百敗での最下位を達成している虚塵の太鼓持ちばかりしている。
「夕刊キムはな」
「特にだったよな」
「何でも最後はあの社長の思い通りなるとか書いてな」
「それで御前激怒したんだよな」
「ああ、その記事ネットで見た瞬間全身の血が沸騰したよ」
 そこまで怒ったというのだ。 
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