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儚き想い、されど永遠の想い

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96部分:第九話 知られたものその二


第九話 知られたものその二

「それでなのでしょうか」
「いや、それは」
「あっ、いいです」
 言いにくいと見てだった。
 彼はだ。自分から話したのである。
「それは申し上げてくださらなくともです」
「いいんだね」
「はい。あえてということで」
 微笑んでだ。義正に話すのだった。
「今は」
「今はなんだ」
「はい、旦那様がそれを申し上げられる時にでも」
「悪いね。けれど」
「私が察しているのかということですね」
「察しているんだね」
 話の核心をだ。自分からあえて言ってみせた義正だった。
 そしてだ。義正はそれを今ここで話すのだった。
「そのことを」
「今わかりました」
「その。僕が断ったところで」
「普通に断るだけでは普通ですが」
「けれどそれが違う」
「はい、微妙に空気が違いました」
 それでだ。わかったというのである。
「失礼ながら」
「いいよ。そう、いるよ」
 それをだ。自分から言った義正だった。
「そうした人がね」
「ではその方と」
「うん。ただ言うべき時はね」
 その時はだ。どうかという話にもなった。それについてはだ。
「まだだね」
「わかりました。それでは」
「僕自身心の準備が欲しい」
 顔を俯けさせてだ。そうしての今の言葉だった。
「それに」
「それに?」
「言えることはある」
 それはあると言ってからだった。彼はまた言うのだった。
「けれど。言えないことも」
「そうですか」
「今は言えないんだ」
 残念な笑顔でだ。こう言う彼だった。
「言える時期が来ることを願うよ」
「ではそうした時はです」
「どうすればいいというのかな」
「そうした時期が来るようにされることです」
「自分でだね」
「そうです。自ら動いてです」
 佐藤の頭の中ではだ。またあの西洋の悲しい二人のことが浮かんだ。その二人こそは。
「ロミオとジュリエットは。それができずにです」
「悲劇になってしまった」
「しがらみは。不要です」
 佐藤は強い言葉で話した。
「そうしたものは。何があってもです」
「それが道ならぬものでない限りはだね」
「そうです。そうした束縛の鎖は断ち切らなければならないのです」
 その強い言葉でだ。義正に話していく。
「私はそう思います」
「それじゃあ」
「時には一直線に進むのもいいでしょう」
 突進案であった。まさにそれだった。
「どうされるかは旦那様次第ですが」
「僕次第だね」
「そうです。全ては旦那様次第です」
 他ならぬだ。義正次第だというのである。
 
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