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儚き想い、されど永遠の想い

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97部分:第九話 知られたものその三


第九話 知られたものその三

「どうされるかはですが」
「では僕は」
「よくお考えになられて。それで宜しければ」
「宜しければ?」
「私でよければです」
 今度は微笑んでだ。己の主に話す佐藤だった。
「お話下さい」
「相談に乗ってくれるんだね」
「はい、他言はしません」
 それは絶対だった。佐藤はそうしたことを言う様な男ではない。信義というものをだ。誰よりも何よりも堅く守る男なのだ。それが彼なのだ。
「ですから」
「有り難う。じゃあその時にはね」
「そうして頂けると何よりです」
「それではね」
「はい、それでは」
 こうした話をしてであった。
 彼は微笑んでだ。佐藤に対して頷いてみせた。それからだった。
 こんな話もだ。佐藤にしたのだった。
「この前だけれど」
「新しい書を読まれたのですか」
「トリスタンとイゾルデという話だけれどね」
「トリスタンですか」
「うん、それとイゾルデね」
 その話をだ。読んだというのだ。
「その二人の話だよ」
「トリスタンとイゾルデですか」
「知ってるかな」
「いえ、はじめて聞きました」
 佐藤はいぶかしむ顔で義正に答えた。
「どうした話でしょうか」
「英吉利、いや愛蘭になるかな」
「愛蘭ですか。確か」
「そう、英吉利本土の西にある島だね」
「今は英吉利から独立するそうだね」
「あの大英帝国からですか」 
 まだ英吉利が強かった頃だ。もっとも先の世界大戦を境にして斜陽になっていた。だがこの頃はまだそれが顕著になってはいなかった。
「独立したのですか」
「いや、まだしていなかったかな」
 この辺りの情報はだ。二人はよく把握していなかった。彼等にとっては遠い国の話であるからだ。
「あの国は」
「ですが独立はですか」
「もう決まっていたと思うけれど」
「そうですか」
「そう、その国の話だったね」
 その愛蘭の話がだ。為されてからだった。
 話がまた戻った。その愛蘭のことだと話されてだ。
「その国の姫がウェールズの王に嫁ぐ」
「そこも確か」
「そう、英吉利だよ」
「英吉利といっても色々なのですね」
「英吉利は一国じゃないんだ」
 義正は佐藤にその国の事情も話した。
「英蘭があり」
「英蘭ですか」
「そして蘇格蘭」
 次はこの国だった。英蘭の北の国だ。
「それでさっき言った」
「愛蘭ですか」
「そう、そしてウェールズなんだ」
「その四つの国により成っているのですか」
「連合王国なんだ」
 一人の君主が四つの国の王を兼ねていると言ってもよい状況というのだ。
「それがあの国なんだ」
「ううむ、中々複雑なのですね」
「どの国にもそれぞれ事情があるんだね」
 義正はこう佐藤に話す。
 
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