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儚き想い、されど永遠の想い

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95部分:第九話 知られたものその一


第九話 知られたものその一

                第九話  知られたもの
 義正は今は仕事を終えてだ。己の部屋の中でだ。
 物思いに耽ってソファーに座ってだ。その中で佐藤に言うのだった。
「僕もそろそろ」
「そろそろといいますと?」
「一人でいる時は終わるのか」
「そうですね。終わるべきですね」
「君もそう思うか」
「はい、旦那様もです」
 その彼の傍に立ってだ。佐藤は言うのだった。
「御一人でいられる時は終わりました」
「では。二人だな」
「ご結婚のことですね」
「それをだな」
「本気で考えられていますね」
「考えている」
 真理のことをだ。想いつつの言葉だった。
「そのことをな」
「そうですね。それでなのですけれど」
「それで?」
「はい、お見合いですが」
 この話がだ。佐藤の口から出された。
「そのことですが」
「お見合い?」
「はい、そのことは考えておられますか?」
「いや、全く」
 真理のことを考えているからだ。そうしたことは全くだった。
 それでだ。少し戸惑いながら話すのだった。
「そういうことは」
「考えていませんか」
「うん、そういえば前に」
「はい、高柳様のご令嬢ですが」
「ええと、確か」
「はい、喜久子様です」
 彼女のことをだ。佐藤は話に出すのだった。
「覚えておられますね」
「そうだね。あの方と」
「それでどうされますか?」
 佐藤は主に問う。
「あの方と。また合われますか?」
「いや、それは」
 いいとだ。答える彼だった。
「どうもね」
「宜しいのですか」
「いい人だね」
 それはわかるというのだ。義正にもだ。
「とてもね。心の奇麗な人だね」
「はい、それで評判の方であります」
「けれど。それでも」
「御考えにはなられませんか」
「うん、どうしてもね」
 乗らないというのだ。義正は眉を曇らせて話す。
「そういうことにはね」
「左様ですか」
「悪いね」
「いえ、悪くはないです」
 それはないとだ。佐藤は言うのだった。
「ではそういうことで」
「済まないね」
「いえ。ただ」
「ただ?」
 ここでだ。話の色が変わった。二人もお互いそのことはわかっている。
 そうしてだ。佐藤から言うのであった。
「旦那様がお断りになられるということはです」
「そのことがなんだ」
「はい、何かがおありですね」
 こう主に言うのだった。
「そうですね」
「それは」
「御相手が見つかったのでしょうか」
 己の主に笑顔を向けてだ。そのうえでの問いだった。
 
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