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儚き想い、されど永遠の想い

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54部分:第五話 決意その七


第五話 決意その七

 真理もだ。今はだ。
 海辺を歩いていた。白い砂浜の左手に青い海が淡い泡を立てながら波をその白浜に送っている。そこを三人で歩いていた。
 共にいるのは麻実子と喜久子だ。二人が彼女に話していた。
「昨日の舞台はよかったですね」
「本当に」
 笑顔でだ。真理に話すのである。三人は一列に並んでそのうえで話をしている。真理が中央にいてだ。麻実子が右、喜久子が左にいる。
 真理を囲んでだ。二人は話すのだった。
「やはり。最後は幸せでなけれれば」
「なりませんね」
 こう話すのである。
「ああして結末がよくなければ」
「悲しい気持ちになってしまいます」
「苦難はあっても結ばれる」
「祝福がなければ」
「そうですね」
 二人のその話にだ。真理も頷く。
「私もそう思います」
「真理さんもですね」
「そう思われますね」
「はい、やはりです」
 静かにだ。前置きしての言葉だった。
「最後に幸せがなければどうしても」
「喜べませんね」
「後に残るのは悲しみだけです」
「救いがなければ」
 また言う真理だった。
「よくないと思います」
「舞台でもそうですし」
「それが現実ならばです」
 どうなのか。喜久子と麻実子も話していく。
「余計に。幸せな結末でなければ」
「駄目でしょうね」
「そう思います。現実では」
 どうなのか。真理は二人にまた話した。
「誰もが幸せになって欲しいですね」
「二人が御互いに純粋に愛し合うならですね」
「どんな苦難があったとしても」
「それは乗り越えられるべきものであり」
「祝福され、幸せになるべきですね」
「心からそう思います」
 真理の顔が切実なものになっていた。その切実な顔で話すのである。
「誰であろうともです」
「今も身分や家柄を言う方がいますけれど」
 麻実子が言った。その白と青の世界を歩きながら。
「それはもう、ですね」
「古いと思いますけれど」
 喜久子がその麻実子に対して述べた。
「最早そうした考えは」
「そうですね。古いですね」
「四民平等です」
 この場でもだ。この言葉が出るのである。実は彼女達は華族の家であるがそれでもだ。この言葉を強く意識しているのである。
「自分自身にとって相応しい方、尊敬できる方であれば」
「その方がどういった方であろうともですね」
「結ばれるべきだと思います」
 喜久子は彼女にしては強い声で言った。
「是非共」
「そうですね。私もそう思います」
 麻実子は喜久子に対してこう返した。
「やはり。身分などは」
「あとは。家同士の対立もありますね」
「そうした話もありますね」
「それも間違いです」
 喜久子はここではだ。言い切ったのである。
「そんな。家同士がどうとかは」
「本人達には関係ありませんね」
「いざとなればです」
 喜久子の言葉が熱を帯びて来ていた。自然と感情が篭もってきているのだ。彼女はそれを自覚しているがだ。止める気はなかった。
「駆け落ちでもしてです」
「過激ですね」
「今はそれをしてもいいと思います」
 その熱をだ。麻実子に語るのだった。
 
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