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儚き想い、されど永遠の想い

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55部分:第五話 決意その八


第五話 決意その八

「今の時代はです」
「積極的になのですね」
「与謝野晶子さんみたいに」
 女流詩人だ。与謝野鉄幹との愛はこの時代語り草になっていたのだ。
「あの様に。熱く一途にです」
「いかなければならないのですね」
「忍ぶ愛も美しいです」
 その愛もまた、だ。喜久子は否定しなかった。
 しかしだ。それでもだというのであった。彼女は。
「ですが熱い愛はです」
「忍ぶ愛よりもですね」
「素晴らしいものだと。私は思っています」
 喜久子はここまで話して笑った。確信する笑みである。
「これからは。女性もそうあるべきです」
「駆け落ちをしてでも」
「愛は純粋であり高潔なものですから」
 だからだという喜久子だった。
「ですから」
「ううん、確かにそうできたらです」
 麻実子は顔を一旦正面に戻してだ。そのうえで話すのだった。
「素晴らしいですけれど」
「そう簡単にはできませんね」
「駆け落ちまでは流石に」
 どうかというのである。
「過激過ぎて」
「ですが多少過激でいいと思いますよ」
「与謝野晶子さんの様にですね」
「愛は何なのか」
 また熱く語る喜久子だった。
「それを考えますと」
「そうですか。道ならぬ恋や純粋でない愛ならともかく」
「道として正しく、純粋な愛ならです」
 それならばだと。喜久子の言葉は変わらない。
「是非共です」
「貫くべきなのですか」
「家柄も。家同士の対立も」
 そうした要因もだ。どうかというのだ。
「乗り越えてこそです」
「成程。そういうものですか」
「私はそう考えます」
 喜久子はここまで話して結論を述べた。
「それが愛です」
「では私も」
 ここまで聞いてだ。麻実子はだ。
 少しだけ強い言葉になってだ。こう言うのだった。
「そうした方に出会えたら」
「そうされますね」
「そうしたいと思います」
 こうだ。喜久子に顔を向けて答えたのである。
「そう願います」
「いいことだと思います」
「そうですね。そして」
「そうですね。そしてですね」
 二人の言葉が合った。そうしてだ。
 彼女達はそれぞれ笑顔になってだ。中央にいる真理に顔を向けた。そうしてそのうえでだ。彼女に対して問うたのだ。今度はそうしたのである。
「真理さんはどう思われますか?」
「愛については」
「どの様にお考えなのでしょうか」
「一体」
「私ですか」
 話を振られてだ。まずはだ。
 真理はきょとんとした顔になった。そのうえで、であった。
「私は」
「はい、真理さんは」
「どういった風に御考えでしょうか」
「私はです」
 こう前置きしてからだ。そのうえでの言葉だった。
「やはり。愛はです」
「はい、その愛は」
「どういったものだと」
「清らかで美しいものです」
 そう考えているとだ。話すのである。
「それが愛だと思います」
「清らかで美しいもの」
「それが愛ですか」
「そうです。愛です」
 また話すのだった。
 
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