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儚き想い、されど永遠の想い

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53部分:第五話 決意その六


第五話 決意その六

「それよりもです」
「融和は」
「力は衝突しません」
 それがないというのだ。融和はだ。
「御互いの力が一つになりそれだけでも多くのものを生み出しますが」
「さらにだね」
「はい、さらにです」
 それだけではないというのだ。佐藤は微笑みと共に話すのだった。
「そこから生じたものが周囲に広がります」
「だから融和の方がいい」
「私はそう思います」
「なら」
「私個人の考えですが」
 こう前置きしてから。佐藤は主に話した。今言いたい核心をだ。
「八条家と白杜家もです」
「融和すべきだね」
「和解すべきかと」
 そうなった方がいいというのである。
「そう思います」
「それが君の考えなんだね」
「内密にして欲しい話ですが」
「わかってるよ、そのことはね」
「すいません」
「誰にも言わないよ」
 そのことは保障した。義正は秘密を漏らすことはしない。そうした仁義というものもだ。彼はその中に備えているのである。
「けれど。御互いに」
「融和すべきです」
「そういうことなんだね。つまりは」
「はい、旦那様が若しです」
「白杜家との和解を選ぶのならだね」
「それはいいことだと思います」
 微笑んで主に対して述べた。
「対立よりも多くの。そして素晴らしいことを生み出すから」
「不可能じゃないかな」
「不可能ですか」
「両家の対立は根深いから」
 そのことは否定できなかった。日本において両家の対立がどれだけ強く深いものかは誰もが知っていることだった。
 とりわけ関西においてはだ。実に知られていることなのだ。
 だからだ。彼は言うのであった。
「無理ではないかな」
「こうした言葉があります」
 主の言葉にだ。佐藤はまた話すのであった。
「不可能と思っていても実際には可能であることが多いのです」
「不可能と思っていても」
「理想、もっと悪く言えば妄想と思うこともです」
 どうかというのである。
「行動に移せば実現できることがです」
「多いんだね」
「はい、世の中確かに不可能はことも多いです」
 そのことを認めて。そのうえでの言葉だった。
「ですが何もかもを不可能と認めて何が動くでしょうか」
「動かないね、全く」
「人類の社会そのものがそうですね」
「そうだね、じゃあ」
「はい、まずは動くべきなのです」
 佐藤の声が強くなっていた。自然にだ。
「そして実現するべきなのです」
「夢や理想があればそれを目指して動く」
「そうして実現することが大事なのです」
「じゃあ僕は」
「はい、そう思われそうされたいと思えば」
「動く」
 義正は言った。一言だった。
「そうするんだね」
「如何でしょうか、それは」
「決めたよ」
 考えさせてくれとは言わなかった。既に一ステップ先に進んでだ。彼は言うのだった。そこには確かな決意があった。
「その時はね」
「はい、それでは」
 こう話をした。そしてだ。
 
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