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儚き想い、されど永遠の想い

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5部分:第一話 舞踏会にてその二


第一話 舞踏会にてその二

 それで彼女達はだ。躊躇っていた。その視線に先にいるのだ。
 一人の青年だった。黒い髪を流麗に分けている。その髪は眩く輝いている。
 黒いタキシードに包んだその身体は高くすらりとしている。まるで乗馬選手の様にだ。足も長く端整な姿である。
 顔は睫が長く眉は黒く細い。そして二重の切れ長の目は黒く明るい光を放っている。白い顔をしており鼻は高く細い。唇は小さく赤い。
 その彼を見てだ。少女達は話していたのだ。
 その彼女達を見てだ。彼の周りにいる青年達が面白そうに彼に言った。
「見給え、また君を見ているぞ」
「そして君の話をしている」
「今日もな」
「そうなのか」
 だが彼はだ。素っ気無い調子で彼等に言葉を返した。やはり背が高くだ。彼等から頭半分程高い。だからこそ余計に目立つものがあった。
「僕を見て何になるのだろう」
「いや、その姿なら見るだろう」
「誰もがな」
「少女ならばね」
 彼等は楽しげに笑って彼にこう言った。
「何故なら少女は夢見るものだからね」
「その夢を君に見ているのさ」
「そうしているんだよ」
「夢か」
 夢と聞いてだ。彼はまた言った。
「夢とはいっても」
「とはいっても?」
「どうだというんだい?」
「いや、それは誰にもあるものじゃないかな」
 微笑んでだ。こう周囲に話すのだった。
「誰にもね」
「というと君もか」
「君もかい」
「うん、僕もね」
 他ならぬ彼もだ。そうだというのである。
「あるものだと思うよ」
「じゃあ君の夢は何かな」
 一人がだ。笑顔で彼に問うてきた。
「一体何だというんだい?」
「そうだね。その夢は何か」
「それが問題だね」
「八条財閥の三男」
 彼自身についても話される。
「八条義正君の夢は何か」
「それは何かな」
「そうだね。夢と言われるとね」
 その彼、八条義正はだ。友人達の言葉にまずは微笑みになってだ。
 そしてそのうえでだ。こう彼等に述べた。
「この前小説を読んだけれどね」
「小説?」
「小説をかい」
「そう。恋愛小説をね」
 こう話すのだった。
「物凄く。純粋で熱い恋愛の小説を読んだんだ」
「じゃあ君もそういう愛をしたい」
「そうしたんだ」
「それが君の夢なんだね」
「強いて言うならそうかな」
 義正は微笑んで話した。
「僕もそんな恋愛をしたいね」
「浪漫だね」
 友人の一人がまた言った。
「つまり君の夢は。浪漫だね」
「そうなるかな」
 笑顔でだ。彼もその友人の言葉に応えた。
「結局ね。僕はそれを夢見ているんだろうね」
「浪漫ねえ」
「純愛をかい」
「それが望みなんだ」
「こんなことを言うとキザかな」
 義正は苦笑いになってだ。こんなことも言った。
 
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