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儚き想い、されど永遠の想い

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4部分:第一話 舞踏会にてその一


第一話 舞踏会にてその一

                 第一話  舞踏会にて
 華やかな、鹿鳴館を思わせる場所だった。
 舞踏の場はシャングリラで眩く照らされそこに華やかに着飾った紳士と淑女達が集っている。その中でだ。 
 タキシードの紳士達がだ。赤や白の絹のドレスの淑女達に話している。丸いそれぞれのテーブルには白いテーブルかけがかけられている。
 そしてそのテーブルの上にだ。ワインや欧州のご馳走が並べられている。その中でだ。彼等は話をしていた。
「ようやく戦争も終わりましたし」
「欧州は大変だったそうですね」
「独逸はもう立ち直れないかと」
 敗戦国の話がまず為されていた。
「そして墺太利は解体されるとか」
「あの帝国がですか」
「解体されるというのですか」
「まず洪牙利がです」
 まずはこの国だった。
「完全に独立するとか」
「ううむ、まずはあの国がですか」
「墺太利と分かれますか」
「そして他の国もですね」
「墺太利から分かれる」
「そうなっていきますか」
「あの国の皇室もどうなるのか」
 ハプスブルク家だ。言わずとしれた欧州きっての名門である。
 その名門もだ。どうなるかというのである。
「存続できるでしょうか」
「先帝が崩御して間もないですが」
「まさかロマノフの様になるとか」
「いや、それはないでしょう」
「流石に」
 多くの者がだ。それは何とか否定した。否定したかったと言うべきか。
「何でも廃され皇室は殺されたとか」
「あの革命を言う者達にですか」
「赤軍に」
 次第にだ。話し合うその声が不穏なものになってきていた。
「あの者達は革命の為には手段を選ばないとか」
「誰であろうと粛清するとか」
「とんでもない奴等だそうですね」
「そんな連中がロシアを牛耳れば」
 どうなるか。彼等は危惧を覚えながら話していく。
「革命が我が国にも来る」
「共産主義者ですか」
「あの者達が我が国にも来て」
「多くの者を粛清し」
「そして」
 ここからはだった。彼等が最も恐れることだった。
「陛下をも」
「いや、まさかそれは」
「それはないでしょう」
「幾ら何でも」
 多くの者がそれは何とか否定しようとした。しかしだ。
 一人がだ。現実を話すのだった。
「しかしロマノフ家はです」
「殺された」
「だからですか」
「我が国でも」
 まだロマノフ家のことが話される。
「それは起こり得ると」
「そうなりますか」
「まさかとは思いますが」
「警戒が必要ですな」
 誰かが言った。
「共産主義には」
「確かに。我が国に入れてはなりません」
「あの思想はです」
「絶対に」
 こんな話が為されていた。華やかな舞踏の場にもだ。そうした政治の話が為されていた。かと思えばであった。
「今日も来られてますね」
「はい、あの方が」
「今日も」
 少女達がだ。憧れの目で一点を見ていた。
「まことにお麗しい」
「何とお綺麗なのでしょう」
「声をかけたいですけれど」
「それは」
 躊躇われるという彼女達だった。
「はしたないですよね」
「ええ、そうですわね」
「それは」
 恥じらいであった。この頃はまだそれが強かった頃なのだ。
 
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