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儚き想い、されど永遠の想い

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338部分:第二十六話 育っていくものその四


第二十六話 育っていくものその四

 義正がだ。こう言った。
「大丈夫です」
「そうですね。まだ」
「はい、まだです」
 彼も微笑みだ。言うのだった。
「労咳はそこまで早く進みません」
「だからですね」
「はい、大丈夫です」
 これが義正の言葉だった。
「御安心下さい」
「そうですか」
「それまで。時間があります」
 時間の話もだ。義正はしてみせた。
「何も気にやまれることはありません」
「そうですね。それでは」
「今を過ごしましょう」
 これが聡美にだ。彼の言うことだった。
「そうしましょう」
「わかりました」
 聡美は義正の言葉に頷き。そうしてだった。 
 そのうえでだ。二人でだ。
 庭を歩きだ。その中でだ。
 真理はあるものを見た。それは一輪の花だった。
 白い百合だった。それが庭の池のほとりにある。それを見てだ。
 真理はだ。義正に話した。
「あの時もでしたね」
「そうでしたね。パーティーの席で」
「花を見ましたね」
 真理は微笑んで義正に話す。
「この花を」
「百合は素晴らしい花です」
 義正もだ。微笑んでだ。真理に話す。
「花言葉は清純です」
「清純ですか」
「そうです。清純です」
 その清純をだ。二人で見てだ。
 真理はだ。また言うのだった。
「特に白い百合は」
「見てもわかりますね」
「それが百合ですか」
「そうです。思えばあの時に私達が出会った時も」
 この花を見ていた。そのことをだ。
 二人で思い出しながらだ。見ている。
 白い花が青い池のほとりにある。その青も見てだ。
 真理はだ。青についても話した。
「青もありましたね」
「はい、百合は水辺にあるものですから」
「その青のほとりにあって」
「あの時と同じで」
「白と青はどちらも」
 その二つの色について。義正は緑の上にいて話す。二人は庭の草原の上に立っている。そこからその白と青を見ているのである。
 そこでだ。義正はまた話した。
「清純ですね」
「私達の中にあるのは」
「人は誰しも清純なばかりではありません」
「そうですね。誰もが」
「中には汚れたものもあります」
 そうした意味でもだ。人間だというのだ。
 しかしだ。それでもだとだ。また言う義正だった。
「醜いものもまた」
「ええ。人は」
「ですがです」
 ここでだ。義正は話をまた動かした。
「それと共に」
「清純もですね」
「人にはあります」 
 全く違うものがそれぞれだ。人の中にはあるというのだ。
 
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