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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  Mの襲撃/噂をすれば


風が常に吹く街、風都。

風が運ぶものは様々だ。
幸せ、笑顔、笑い声―――そして、必ずしもいいものばかりとも限らない。


何事もそうだ。
今までも。そして、今回もだった。


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「よっ、と!!」

風都郊外の廃工場。
半分自然に侵食されている屋内で、景気のいい声と、それに合わせて怒号や衝撃音が響き渡る。


というか、響いていた。
14人いたドーパントは、すでに最後の一人になっていた。

メモリブレイクされて倒れるのは、20代くらいの男女である。
そしてその中心に、風都名物「仮面ライダーW」こと「正義の半分こ怪人疾風切り札マン」が


「誰だそれ!?」

『翔太郎?どうしたんだい?』

「い、いや・・・なんでもねぇ・・・」


なんだか説明が逆だ。
というか、前半だけでよかった。

そんなことをなんとなく思いながら、最後の一体に対してマキシマムドライブを叩き込んでメモリを砕くW。

ここ最近になって、またドーパントの出現が目立ってきていたのを調査しているうちにここを発見したのだが、どうやら本格的なアジトだったらしい。


とはいえ

『本拠地ですらこんな貧相なアジトなら、大したことはなかっただろ?翔太郎』

変身解除し、ベルトからジョーカーメモリを引き抜いていると、ベルトを通して頭の中にフィリップの愚痴が聞こえてきた。


今の彼は鳴海探偵事務所の地下におり、戦闘と言うことでベルトを通して呼び出されたのだ。
目下「気になることワード検索」をしていた彼にとってみれば、楽しい時間を中断されているだけ不機嫌である。

「しょーがねーだろ?ここはともかく、持ってるメモリ自体は中々強力だったんだしよ」

意思疎通のためにベルトを外さずに答える翔太郎。
確かに、ここのメンバーが持っていたガイアメモリはなかなか強いものだった。


細かい内容を言うと「マッスル」「マント」「マンモス」「マインド」「ミックス」「モール」「マシーン」「モルキュール」「モンスター」「メディカル」「マーキュリー」「ミラー」「ムーン」「モスキート」である。


ドーパントの脅威は強化された肉体以上に、それぞれのガイアメモリに由来する特殊能力だ。
これだけの数がいるとなれば、フィリップがいなければわけのわからぬまま倒される可能性だってあった。


『まあ確かにね』

「今度埋め合わせしてやっから」

『たのんだよ。じゃあ、僕は検索に戻るよ』

「何の検索してんだ?」

『じゃあ気を付けたまえ翔太郎・・・・こんなものにまでチャレンジしているのかい!?ガチャピン、何者なんだ。驚きですぞ・・・』


口調がムックになってる。
検索を始めてしまったフィリップに、そんなことを思いながらベルトを外す翔太郎。

まあいい、こっちはこっちで進めるか。



ベルトをしまうと、翔太郎は倒れている最後の青年の首根っこを掴んで仕事にとりかかった。

「おい、このガイアメモリ、どっから手に入れた!!」

「うぅ・・・・・」

「お前らが作ってんじゃないってのはわかってる。元はどこだ!!!」

ガクガクと揺すりながら、青年を問いただす翔太郎。
メモリブレイクされて間もなく意識を失うだろう彼だが、だからこそフッと思いついたことを漏らす。

まあ、そのまま意識を失ってしまう可能性もあるが。


「え・・・え・・・・」

「ん?なんだって?」

だが今回は大丈夫そうだ。
何とか言葉を絞り出してくれそうだ。


「「エム」・・・・・」

「・・・は?」

「うぐぅ」

青年は、それだけ言ってガクリと意識を失った。
それに対し、翔太郎はというと


「おぅふ」

そんな声を漏らしていた。


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「「エム」だと?それはABCの「M」でいいのか?」

「だと思うけどよ」

1時間と少しあと。
風都警察の休憩室で、さっそく翔太郎は仕入れた情報を仲間である仮面ライダーアクセルこと「三段変色振り切り信号男」、照井竜に――――

「だから後半いらねぇ!!」

「どうした左」

突然叫ぶ翔太郎。
はて、いったいどうしたのだろうか?

「なんだか理不尽な気がする・・・まあいいか」

「ああ、続きを」

「簡単にいうと、なんの事かはさっぱりだ」

「まあそうだろうな・・・「M」では該当が多すぎてフィリップの検索でも絞り切れまい」

「ああ・・・だからここに来たのも、何かないかと思ったんだけどな」

「残念ながらこちらも目新しい情報はない」

「そうか・・・・」

「だが」

「だが?」


そう言って、照井は三枚ほどの紙の入ったファイルを手渡す。
それを手に取り翔太郎は、その内容に顔をしかめた。


「これは」

「「EARTH」からの通達だ。なにやら、最近きな臭い「仮面ライダー」が連続出没しているらしい」

「・・・何か掴んでるのか?」

「いや、こちらに兆候はない」

だが気を付けろ。
照井はそう言って、休憩室を後にする。

窓から見える風都タワーは、今日もゆっくりと回っていた。
まるで、この街の平穏を表しているかのように。


(確かにここ最近、変な仮面ライダーの話を聞くな・・・・)

最初は2か月くらい前だったか。
オーズが変なのに絡まれて大変だったとかの話を聞いた。

その2週間後には城戸さんたちの前にもライダーが現れた。
この間蒔風に電話したら、津上さんのとこも何やらあわただしいことになってるらしい。


ポケットの中からジョーカーメモリを取り出して、顔の前に持ってきて眺める翔太郎。

今までのライダーは皆、それぞれの「敵」と言えるものだったらしい。
もし自分たちの前に現れる仮面ライダーがいるのならば、それはガイアメモリを使ったライダーだろう。

「ガイアメモリを使った仮面ライダー・・・か」

またエターナルみたいな敵が来るのか。
コアみたいな化け物は勘弁してほしいが。


まあ、何が来ようともオレたちで街を守るだけだ。
そうしてジョーカーメモリをしまい、これから戻る旨を事務所にいる亜樹子に伝えて警察署から出る。


ハードボイルダーに跨り、駐車場から出口に向かう。
両脇を緑に挟まれ、建物の裏から脇の道路に直接出る形で出ようとした。


今日の晩飯何にするか。
フィリップがあの調子じゃ、すぐ食わねぇから保存できるモンじゃないとな。

そんなことを考えていた。

その先に現れた、白衣の男がいなければ。


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「テメェ何もんだ!!」

『ジョーカー!!』

転がるハードボイルダー。
握りしめ、起動させるジョーカーメモリ。
腰にはロストドライバー。


翔太郎の後ろの方からは、転倒したハードボイルダーの音を聞いて来たのだろうか、何人かの声がする。



転がるハードボイルダーは、進行上に立つこの男のために転がることになった。
それは飛び出して来ただとかそういう事故を回避してのことではなく、この男のパンチで横殴りにされて転がったのだ。

握りしめたジョーカーメモリと腰に装着したロストドライバーは、万が一に備えて出しているわけではない。
この男の腰にも、似たようなものを見たからだ。


だから叫んだ。
何者だと。


男はというと、答えるようにこちらを向いた。

「―――噂をすれば、ってことかよ」

男の腰には、ドライバーがあった。
色、形はダブルドライバーに似ている。が、少し違う。

ダブルドライバーは、閉じた状態を物凄く簡潔に説明してしまうと「|Λ|」だ。
二本棒を外向きに押し倒して、「W」の文字を作る。

一方、男のつけているドライバーは「|||」だった。
密着した三本棒だ。


「左翔太郎。仮面ライダーWですね?」

ベルトを見ていた翔太郎に、男の声が掛けられる。

男の声には確信がある。
これは質問ではなく確認だろう。


しかも、いきなり襲い掛かってきたところから

「話し合いの余地はなしだ」

らしい。



『マキシ!!』

「証明させてもらいますよ」

「なにをだ」

「有能性を」

「誰の」

「私の」

「チッ!!」


男が動いた。
「なぜ」と聞きたかったが、もう始めるつもりらしい。


「マキシ」と起動させたガイアメモリを右に差し込む男。
それをまったく同じく、翔太郎もロストドライバーにジョーカーメモリを差し込んだ。

数拍の間を置いて、男が僅かに速くベルトを起動させ、翔太郎も続く。


「「変身!」」

掛け声は同時。
翔太郎はいつも通りに左手でロストドライバーを右側に押し倒し起動させた。


対して、男はベルトの二本棒の内、メモリの入った右側だけを握り、レバーのように外に引く。
メモリの入った右側は、傾いたりすることなくまっすぐに横へと平行移動し、残された一本とは斜めにラインがつながった状態で展開される。

正面から見れば「N」の字だ。


『マキシ!!』

『ジョーカー!!』

ベルトから発せられるガイアウィスパー。
そして展開される装甲。

黒一色のジョーカーに対し、鱗のようなその装甲の色は銀。


「テメェ・・・・」

「仮面ライダー―――マキシだ」


そう言って、襲い掛かるマキシ。

戦いは始まった。
その結果―――――



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「左!!!」

ハードボイルダーの転倒音から8分。

駆け付けた照井竜が見た光景とは

「ライダーキック!!」

「むゥア!!」

ゴガギィ!!!


互いのマキシマムドライブを発動させ、空中で交差する二人のライダーの姿だった。


「くっそ、またか!!」

ザシャァ、と片膝を着く状態で着地するジョーカー。
振り返ると、マキシの方はトットンといった具合にキレイに着地し立った状態で「クイクイ」と指を向けて曲げていた。


「のやろ―――」

「左!!熱くなるな!!―――おい!!ここを封鎖しろ。表に回れ!!」

戦いの状況を見て、集まってきていたほかの警察官を下げさせる。
そして人の目がなくなったところで、自身もアクセルドライバーを取り出して腰に装着、アクセルメモリを起動させながら駆けだした。


「そっちはアクセルか!!」

「俺に質問をするな!!」

ブン、と無造作に振られた手を躱し、メモリを差し込み、逆の手で帰ってきたマキシの手を肩と腕で受け止める。

「変――――」

そしてそのまま押し込まれながら後退し、押し退けながらベルトのハンドルを握った。

「―――身!!」

『アクセル!!』


そこで攻撃に転じる仮面ライダーアクセル。
マキシの腹部に3発パンチを叩き込み、さらに呼び出したエンジンブレードがくるくると回りながら襲い掛かった。

パンチに怯みながらマキシがエンジンブレードを弾くと、それをキャッチしてアクセルがマキシに斬りかかっていった。


「オォお!!」

「はっ、おぉ!!」

襲い掛かるエンジンブレードの剣撃を、マキシは横殴りに弾きながら対処する。
それを見て、アクセルがギジメモリを起動させブレードに挿し込んだ。

そして切っ先をマキシに突き出すと、そこから赤い光弾が飛び出して彼の身体を突き刺していった。


「ぬ、うあ!!」

「よっしゃ、いいぜ照井!!」

『ジョーカー!!マキシマムドライブ!!!』

「合わせろ!!」

「ああ!!」

『アクセル!マキシマムドライブ!!』



「ライダーパンチ!!」

「アクセル―――グランツァー!!」

「・・・・」


タイミングを合わせるため、両者ともに必殺技を叫びマキシに迫る。
それに対し、マキシは無言で受け

ドッ、ゴぉ!!!


轟音がし、土煙が舞った。
直後、その中からアクセルとジョーカーが弾かれたかのように、突っ込んでいった方向とは逆に吹き飛ばされた。

マキシはというと、土煙の中からゴロゴロと転がり出てきた。


「あのやろう・・・」

「踏み込みで土煙を起こし、オレ達を同士討ちだと・・・!!」


おそらく、転がり出てきたのは衝撃に弾かれてだろう。
だが実際、マキシにダメージがあったわけではないはずだ。

現にマキシは何事もなく立ち上がり、小さく挙手して

「あの」

などと言ってきたのだ。


「・・・なんだ」

「考えてみれば、俺の目的は全力の仮面ライダーを倒すんであって、今のあんたらじゃ意味ないというか」

「なんだと?」

「で、今日はまあ疲れてるだろうし、後で出直そうって思うんだが」


そんなふざけたことを言ってくるマキシ。
ジョーカーとアクセルが怒りで立つ。

だったらなんだ?
この場は逃げるとでもいうのか。

いきなり襲い掛かって、そんなのがまかり通るとでも思っているのか。


「悪いがそれはできないな」

「お前にはベルトも事も含めて話してもらうからな」

「そうなるか――――まあ想定内」

『ミスト!』

「ま、こういう運用の仕方も見せとくか」

((新しいメモリ!!?))


マキシは新たに取り出したミストメモリを、まだ装填されていない―――マキシドライバーとでもいうのか、彼のベルトの左側に突き刺した。
そして右側を押し閉じ、今度は両側を掴んで引き広げた。

片側ならば「N」の字に。
ならば両側なら「M」の字になる。

『ミスト!マキシ!!』

銀の身体のところどころに、群青色のラインが走る。
直線のラインではなく、少し煙のような意匠をしたそれは一目見て、そしてメモリ名からして明らかだった。


「去り際も素晴らしく。できるだけ派手に―――」

『ミスト!マキシマムドライブ!!』

「・・・騒いでくれ」


「ッ、左!逃がすな!!」

「オォ!!」

炎を吹きだし、駆けだすアクセル。
同時にジョーカーも、身柄をとらえようと掛けた。

瞬間、マキシの身体が煙と消え――――


「左!!来るなァ!!」

アクセルは加速し、叫んだ。


煙を突っ切り、反対側から突っ込んできたジョーカーを突っぱねる。
後ろに転がるジョーカー。

見ると、メモリの色と同じ群青色をした煙のような霧が、ぐるぐると回転してアクセルごとその付近を覆っていた。

何かヤバい。
今すぐにでも飛び込み、アクセルを助けようとしたジョーカーだが、それより早く


「おおおおおぉぉォォオオオオオ!!」

『アクセル!アップデート、ブースター!!』

アクセルは霧の中でアクセルブースターへと強化変身を遂げ、全身の噴出口から炎を吐き出しながら回転して霧を払っていた。


そこにはすでにマキシの姿はなく、同時にアクセルの変身は解け照井が膝から崩れて地面に倒れる。

「照井!!」

変身を解除し、駆け寄る翔太郎。
その翔太郎の手を掴み、照井は


「―――、―――――――!!!」

何かを言おうと口を開き、しかし声は出ず

「げブォッ・・・!!!」

いきなり吐血し、意識を失った。


「まさか・・・毒!?」

そう、先ほどのミストはただの霧ではなかったのだ。
その色にふさわしいほどの、毒性を持っていたのだ。


「クソッ!!!」


『去り際も素晴らしく。できるだけ派手に騒いでくれ』



マキシの声が耳に残る。

ついに来た。
この風都の地にも、仮面ライダーが。



風都タワーが、今日も回る。
突風に煽られて、風車がここまで音を立当てて回った。




to be continued
 
 

 
後書き

第七章、W編のスタートです!!!

フィリップ、何調べてんだ・・・・


そしてその間に始まる事件。


時系列としては、キバ編の前日です。
午前にアジトを叩き潰し、午後に襲撃を受けたということですね。

仮面ライダーマキシ。
さて、どのような能力なのか。

そしてまだメモリは持っているのか!?


蒔風
「「W」に対して「M」・・・・それってマリオとワリオじゃね?」

立場は逆だけどね!!





照井
「次回、マキシの正体とはげほぉ!」

翔太郎
「照井ーーー!!」

ではまた次回 
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