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儚き想い、されど永遠の想い

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129部分:第十一話 断ち切る剣その三


第十一話 断ち切る剣その三

「それは凄く素晴しいことだね」
「確かに。江戸時代ではありませんでした」
「有り得ませんでした。鎖国していましたから」
「けれど今は違うね」
「はい、確かに」
「こうして様々なものが味わえるようになって」
 そうしてだというのだ。
「楽しめるようになった」
「いいことですね」
「うん。時代は変わったんだ」
 笑顔で話す義正だった。
「様々なものが楽しめて」
「そして。古いしがらみも断ち切ることができるようになりました」
「そうした時代になったんだね」
「そういうことですね。だからこそ」
「一週間後。行って来るから」
 話が戻った。そちらにだ。
「それじゃあね」
「はい、それではその様に」
「それでね」
 義正はまた話を変えた。今度の話は。
「君も飲むかい」
「ブランデーをですか」
「うん、どうかな」
 佐藤に笑顔で勧めるのだった。
「このお酒はね」
「では」
 そしてだ。佐藤はというと。
 微笑みを浮かべてだ。こう答えたのだった。
「御言葉に甘えまして」
「そうしてくれるね」
「お酒は好きです」
 甘いものだけではなかった。彼はそちらも好きなのだった。
「それに旦那様の御誘いとあれば」
「乗ってくれるんだね」
「そうさせてもらいます」
 これが彼の返答だった。
「では。今から」
「一人で飲むより二人で飲む方が美味しいからね」
「お酒もですね」
「そう、二人の方がね」
 いいとだ。義正は微笑んで佐藤に話すのだった。
「何でもいいね」
「人生もまた」
「そういうことだね。じゃあ」
「はい、それでは」
「二人で飲もう」
 こうしてであった。義正は佐藤と二人でそのブランデーを飲むのだった。
 そうして話をしてだ。その一週間後だ。
 伊上の屋敷に向かう。当然一人ではない。傍らには彼女がいる。
 真理だ。真理は白いドレスを着ている。義正も白だ。彼は白いフロックコートにズボン、それとスーツにネクタイだ。その姿でだった。
 真理に顔を向けてだ。こう話すのだった。
「白ですね」
「こうした時はですね」
「そうですね。白がいいですね」
 二人共だ。こう思ってのことだった。
 そしてそのうえでだ。彼は真理に話すのだった。
「大事なことを決める時には」
「白は決意の色ですか」
「決意、そうですね」
 その決意という真理の言葉にもだ。義正は応えて話した。
「これはそうなりますね」
「そうですね。決意ですね」
「はい、決意です」
 その通りだとだ。義正も述べた。
「私達のことを伊上先生にお話するのですから」
「その決意の色がですね」
「白です」
 まさにだ。その白という色がだ。決意の象徴だというのだ。
「そしてその白で」
「向かうのは」
「戦場に赴く様です」
 義正はこんなことも口にした。
 
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