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ドリトル先生と悩める画家

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第四幕その七

「これが中々」
「抜け出られないね」
「そうなんですよ」
「前にもスランプにかかったことは」
「あります」
「あるんだね」
「はい、そうでした」
 このこともです、太田さんは先生にお話しました。
「高校二年の時に」
「今みたいにだね」
「思う様な絵が描けていない、描いても描いてもこうじゃない」
「そう思ったんだね」
「どうしても」
「高校二年の時はだね」
「そんな時期がありました」
「じゃあ聞くよ」
 先生はここで太田さんに穏やかな声で尋ねました。
「その時はどうして抜け出たのかな」
「スランプからですね」
「うん、どうだったのかな」
「はい、何か」
「何か?」
「気付いたら抜け出ていました」
 スランプからというのです。
「自分でも描いて描いてです」
「描いてだね」
「そうしているうちにです」
「抜け出ていたんだね」
「そうしていました」
「そうなんだね、だからだね」
「はい、今もです」
 今のスランプの時もというのです。
「そうしています」
「描いて」
「そうしていっています」
「中学の時の先生の言葉を思い出してだね」
「描いていまして」
「それで抜け出たんだね」
「そうなりましたから」
 また言う太田さんでした。
「今回もそうしていますけれど」
「抜け出られないんだね」
「前回以上に苦労しています」
 高校二年のスランプの時以上にというのです。
「本当に」
「そうなんだね」
「苦しくて仕方ないです」
 太田さんは今の偽らざる心境もお話しました。
「抜け出たいのに抜け出られない」
「それがだね」
「苦しいです」
「前は描いて抜け出た」
「それが出来ました、美術館にも通って」
「今回みたいにだね」
「美術の本も読んでです」
 勉強もしてというのです。
「そうしています」
「本当に前向きだね」
「起きてから寝るまで」
 まさにというのです。
「食事とお風呂、そしてトイレの時以外は」
「描いてだね」
「勉強してです」
 そうしてとにかく絵に向かってというのです。 
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