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MS Operative Theory

作者:ユリス
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内部図解
  カタパルト———発進/着艦シークエンス②


——発進シークエンス——

 脚部固定式のMS用カタパルトは、WB級強襲揚陸艦で確立された技術であると言われる。のちのMS発進用機器のスタンダードとなったが、発進プロセス自体は航空母艦のものをベースとしており、公国軍のムサイ級巡洋艦が誕生した時点でほぼ確定していた。下記の発進プロセスは、カタパルトと滑走甲板が露出したアーガマ級巡洋艦のものであるが、ほかの艦でも大きな違いはない。

①カタパルト接続

 MSの発進が決定されると、MSはカタパルトに接続される(カタパルトを「履く」形になる艦が多い)。例示したアーガマ級はカタパルトと滑走甲板が分割されているため、カタパルトを「履いた」MSが格納庫から出され、滑走甲板に改めて接続されるという少々複雑な過程を経る。MS格納庫と外部滑走甲板が繋がっている一般的な「開放型」や発進用機器が艦内に収納されているWB級などの「密閉型」では、プロセスはカタパルトに接続するだけで終了する。

②前方進路確保

 甲板要員(直接甲板に出ていることは少ない)やオペレーターによって、進路上の障害物や敵機も有無を確認される。問題が無い場合「進路クリア(グリーン)」となり、発進許可が下される。障害物などがあった場合、進路の変更や障害物の破壊などが行われるが、緊急時には何があっても「進路クリア」となる。往々にして「どこの進路がクリアだって?」(ガルマ戦隊との戦闘時におけるアムロ・レイの言葉)と言う状況に陥るのはそのためである。

③発進許可

 進路の「安全」が確認されると、MSの発進が許される。艦長や甲板長の許可が直接下されるのではなく、オペレーターから発進許可(発進可能)の旨が伝えられる。「○○(機体名やパイロット名)、発進どうぞ」といった言葉で許可されるほか、一旦発進してしまうと艦とMSの間の通信は困難になるため、口頭で戦況や指示などが伝えられる。なお、「発進許可」は前述の「前方進路確認」と一体であることも多い(進路確認が発進許可となる)。

④発進

 「発進許可」が降りると滑走甲板のガイド・ランプの点灯などが行われ、パイロットが「○○(パイロット名や機体名、または双方)、行きます」といった連絡を行うとMSがカタパルトで加速され、発艦する。なおMSの射出はパイロット側だけでなく、艦側でも可能である(強制射出)。アーガマ級などではパイロットの発進連絡直後、カウントダウン・シグナルが点滅し発進となる。この後、カタパルトが定位置に戻り後続機が接続される。


——着艦シークエンス——

 発艦よりも着艦のほうが難しいと言うのは旧世紀の空母からの伝統(?)で、それはMSの着艦についても同じである。これはMS運用艦艇が、空母と戦闘機が融合した「両生類」的な艦であるため、甲板(デッキ)が狭い、つまり着艦できる場所が狭いことや、宇宙空間特有の距離感の掴みづらさに理由が求められる。オート着艦も可能だが、基本的にはマニュアル着艦が行われる。

①着艦許可

 所属MSであっても、基本的には着艦許可が必要である。これは艦側の受入態勢の不備や艦内火災、被弾した機体の先行収容などを想定しているためだ。通常の着艦申請と承認は、パイロットと甲板要員またはオペレーターとの間で行われるが、白旗を掲げるMSや、使者が搭乗する機体が着艦許可を求めている場合は、艦長や指揮官の判断が必要になる。チームワークに秀でる艦では、申請なしに「あうんの呼吸」で着艦してしまう場合もある。

②進入経路確認

 着艦が許可されると、艦は滑走甲板のガイド・ランプや侵入経路を示すガイド・ビーコンが灯される(ビーコンは遠方からでも艦の位置を明かしてしまうので、戦闘中には点灯は避ける)。カタパルトを使った減速と着艦が行われる場合はカタパルトを着艦位置へと移動させる。MSパイロットは、ビーコンなどを頼りに進入経路を確認し、着艦体勢へと移行する。ベテランパイロットの中には、確認しつつ着艦という妙技を身に着けたものもいる。

③着艦体勢

 進入経路を確認後、艦との相対速度を減らしながら着艦コースに入る。着艦時に相対速度がゼロになるのが理想的だが、カタパルトに着地して採集減速を行う場合は急激に減速する必要はない。「開放型」はデッキが露出しているため、様々な着艦体勢とコース取りが可能だが(真上からのアプローチすら可能)、「密閉型」はハッチを真正面に据え続ける必要があるので、着艦体制は限られている。また着艦時の体勢や相対速度によっては、機体が破損することもある。

④着艦

 着艦体勢を維持しつつ艦との相対速度を合わせて着艦(=タッチダウン)し、その後、格納庫へと移動させる。着艦時にMSの速度が少々速くても、脚部ユニットの「踏ん張り」でブレーキを掛けることも出来るため、相対速度が完全にゼロでなくとも問題ない。アーガマ級の場合、デッキの先端(発進時の最終位置)に配られたカタパルトに着地し、カタパルトの逆進を利用して減速。カタパルトが発進位置まで戻ったところで停止し、格納庫に収納される。



補足事項

——MS運用艦の傾向——

 MS運用艦の系列は、カタパルト・レールが走る甲板(=デッキ)が艦外に露出しているか否かで、大きく二つに分けられる。ここでは露出タイプを「開放型」、格納庫と一体化したタイプを「密閉型」と分類している。また、「開放・密閉」両装型やカタパルト非搭載型などの特殊な艦もある。

■開放型

 滑走甲板が艦外に露出していているのが開放型の艦艇である。このタイプはU.C.0083頃に出現し、グリプス戦役期には一般化。以後のMS搭載艦のスタンダードとなっている。密閉型と比較して長大な(=加速力の高い)カタパルトを搭載できるのが利点となっている。

▼ザンジバルⅡ級(U.C.0083)

 数少ない一年戦争期の開放型。片手・片足で接続する珍しいカタパルトを2基持つ。後部着艦デッキは「密閉型」である。

▼ドゴス・ギア級(U.C.0087)

 バーミンガム級を基にしたと言われるティターンズの大型戦艦。後部デッキを含めると13基というデッキ数を誇る。

▼アーガマ級(U.C.0087)

 100m級のカタパルトを2基装備したアーガマ級。MSの運用を重視した堅実な設計は、同じエゥーゴのアイリッシュ級の影響によるものと思われる。

▼カイラム級(U.C.0093)

 ロンド・ベル隊の旗艦として知られるカイラム級は、全長に対して長い滑走路を確保できるアングルド・デッキ(斜めデッキ)と、着艦用の後部デッキを搭載。

■密閉型

 最初期に出現したMS搭載艦で、格納庫にカタパルトなどのMS発進システムが内蔵されている。古来、宇宙船は「密閉」されたコンテナ式があたり前であったため、その影響かに誕生したタイプだと考えられる。一年戦争期のMS運用艦は、殆どがこの型であった。

▼ホワイトベース級(U.C.0079)

 2基の密閉デッキを持つ。連邦系一年戦争型MS運用艦の完成系と言える。

▼ドロス級(U.C.0079)

 200機近いMSを搭載可能と言われる公国軍最大の空母。前方に7基のMS射出口が設置された。

▼チベ級チィベ級(U.C.0080)

 原型艦がMS搭載艦として設計されていないためか、カタパルトは装備されていない。艦首にMS格納庫が設置された。

▼ムサイ級後期型(U.C.0083)

 横たわった状態でMSを射出する、背部接続式カタパルトが4基設置されている。

■その他

 開放型と密閉型の合併タイプや派生型、特殊な仕様の艦艇を此処にまとめた。中には実験的な艦や、旧世代と新世代の過渡期的なタイプも存在し、艦船開発の歴史から見ても興味深い。ここではU.C.0120年代に出現したクロスボーン・バンガードの艦艇までを紹介する。

▼アルビオン(U.C.0083)

 U.C.0083就航。密閉型デッキ(着艦デッキ兼用)の上部に露出型デッキを持つ。密閉型と開放型の過渡期的艦艇である。

▼グワダン級(U.C.0087)

 2基ノ開放型デッキのほかに、MS射出方向を変更する「MSランチャー」を艦底に装備する。

▼エンドラ級(U.C.0088)

 ネオ・ジオンの巡洋艦。密閉型艦艇の一種で、内部では2基のカタパルトが立体交差している。

▼ザムス・ナーダ(U.C.0123)

 クロスボーン・バンガードの駆逐艦。小型でカタパルトは設置できないため、舷側にMS用ベッドを固定している。


——艦載機の着艦法——

 航空機の着艦はMSのような「踏ん張り」が利かないほか、重力下での失速速度といった問題があるが、レーザー誘導などによるオート着艦機能があるため旧世界ほど事故率は高くない。航空機の着艦性能の向上は、艦の下に張られたワイヤーへのアプローチと言った「神業」が可能な、コア・ファイター(RX-78系列用のFF-X1)を誕生させている。


——実は危険なガイドビーコン——

 MS発進システムと格納庫が一体化した「密閉型」艦艇は、特定方向に開口したハッチしMSの出入口がないため、着艦時にはガイド・ビーコンを出して進入路を明確にすることが多かった。ガイド・ビーコンはレーザーで示された道筋であるため視認しやすく、着艦作業には都合がいいのだが、敵に艦の位置を知られやすいという諸刃の剣であった。このため戦闘継続中はガイド・ビーコンの発信はほとんど行われず、「密閉型」が廃れる一因になったようである。 
 

 
後書き
次回 MSの操縦訓練 
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