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星河の覇皇

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第六十二部第四章 選挙前日その二十一

 カミュもそのことがわかっている、それで言うのだ。
「彼がこれからも常に中央政府にいるかというとな」
「それはわからない」
「そういうことですね」
「地方政府に戻るかも知れない」
 即ち日本にだ。
「若しくはだ」
「一族が経営しているグループのですね」
「主になるか、ですね」
「彼は後継者だからな」
 八条グループのそれだからだというのだ。
「そちらの世界に行くかも知れない」
「だから、ですか」
「これからはわかりませんか」
「今は中央政府にいても」
「先のことか」
「彼は家を継がねばならない」
 このことは絶対だというのだ。
「何しろ一族の嫡男だからな」
「後継者にも定められていますし」
「政界から身を退き」
「そうして、ですか」
「そのうえで」
「そうなる、彼はいなくなる可能性も高い」
 エウロパの敵の座、それからというのだ。
「それはな」
「幸いにして、ですか」
「エウロパにとっては」
「これから彼が死ぬまで対峙しなくて済む」
「そうなのですね」
「彼の出自に感謝することになるかも知れない」
 エウロパは、というのだ。
「連合にいてしかもな」
「連合有数の企業グループの経営者でもある」
「そのことに」
「そうだ、切れ者であってもな」
 その出自が、というのだ。
「彼についてはそうだ、だがどうしても私は思う」
「あの御仁がエウロパにいれば」
「そう、ですね」
「そういうことだ、強敵であるが故にな」
 そう思うというのである。
「エウロパにいたならばあの侯爵殿がいてだ」
 ギルフォードのことに他ならない。
「私がいてモンサルヴァートエウロパ元帥もいる」
「そしてあの長官殿もいれば」
「四人も人材がいればですね」
「エウロパにとって大きな力になる」
「それ故に」
「だから惜しく思うのだ」 
 実に、というのだ。
「強敵は味方であって欲しいと思う故にだ」
「嫌われますか」
「その様に」
「連合にも英傑がいる」
 それが八条義統だというのだ。
「その英傑の存在が疎ましい」
「連合にも人材はいますか」
「彼がそうである様に」
「雑多な石の中には稀に宝石もあるのだ」 
 そしてその宝石が八条だというのだ。
「もっとも彼とても完全ではないがな」
「如何に彼でもですか」
「完全ではありませんか」
「完全な人間なぞこの世にはいない」
「だからこそ」
「彼は政治家だ」 
 その立場だというのだ。
「政治家としては極めて優秀であるがだ」
「政治家として範疇は出ない」
「そうなのですね」
「政治家に出来ないこともある」
 そうだというのだ。
「そして政治家として不得手なこともある」
「超人でもないですか」
 ニーチェの言葉が出た、神は死んだと言いその後に出て来るべきだとされている存在である。 
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