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星河の覇皇

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第六十二部第四章 選挙前日その二十

「連合にいるのか」
「下品な大衆の筈が」
「そうした者もですか」
「いると思うだけで不愉快だ」
 実に、というのだ。
「だから私はあの御仁が嫌いだ、そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「負けたくはない」
 この考えもあった。
「政治家としても紳士としてもな」
「エウロパ貴族として、ですか」
「絶対に」
「私は貴族だ」
 カミュのアイデンティティはここにあった、何といっても。
「貴族としてだ」
「負けたくはない」
「あらゆることで」
「そうだ、だからだ」
 それ故にというのだ。
「私はあの御仁を全てにおいて凌駕するのだ」
「そしてエウロパの方が優れている」
「それを見せたいのですね」
「オリンポス条約の時に苦い思いをした」
 その条約締結に来た八条を見てだ。
「あの御仁の気品を見てな」
「それで、ですか」
「非常に」
「そうだった」
 こう話したのだった。
「あそこまでの人物はエウロパにもいない」
「政治家としての資質もですか」
「それも巨大だ」
 政治家としてもだ、八条は凄かったというのだ。
「正直エウロパにいればとさえ思う」
「有能であるが為に」
「敵であることが残念だ」
 カミュは実際に苦々しく言った。
「そう思うと余計にだ」
「あの長官殿がですか」
「好ましくない」
「そう思われますか」
「その通りだ、嫌いと言えば嫌いでだ」
 そして、というのだ。
「残念にも思う」
「その強敵がですね」
「今連合にいる」
「そのことがですね」
「残念ですか」
「彼とはこれからも長く戦うことになる」
 そうなるというのだ。
「剣を交えることはないだろうがな」
「政治戦略の中で、ですか」
「あの御仁とはですか」
「エウロパは戦うことになる」
「そうなりますか」
「敵将ならば戦場でだけ戦う」
 軍人は戦場に出て来る、そうして戦場で刃を交える。しかし相手が政治家であったならばどうなるかというのだ。
「政治家は政治で戦う」
「その全ての場で、ですね」
「戦うことになりますか」
「戦場の後ろにいて」
「全体で」
「政治は国家と国家が全力でぶつかる世界だ」
 戦争もそうである、しかしここでこうも言うカミュだった。
「戦争は政治の一手段に過ぎない」
「戦争という手段でなければ軍人とは遭わない」
「しかし政治家は、ですか」
「常に対するのだ」
 そうなるからこそというのだ。
「軍人以上にな」
「対することになり」
「それだけに苦しめられる」
「だからですか」
「彼は強敵なのですか」
「彼がいる限りだ」
 まさに、というのだ。
「我々は彼と対し続ける、彼が中央政府にいる限りはな」
「連合中央政府にですか」
「あそこにいる限りは」
「我々は八条義統という強敵と対峙しなければならない」
「どうしても」
「そうなる、もっとも連合は複雑な社会だ」
 それも実にだ、連合の複雑さはエウロパと比べても相当なものだ。それこそ多層的にモザイク状に様々なものが入り混じっている社会だ。 
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