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星河の覇皇

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第六十二部第四章 選挙前日その十九

「それも難しい」
「遠く連合にいますし」
「最早工作員は連合には入り込ませられませんし」
「暗殺もですね」
 それもだった。
「それも出来ない」
「そして悪い噂を流すことも」
「それも」
「私生活はよく知られているがだ」
 八条の豪奢なそれはだ、彼が何故豪奢な私生活を送っているかというと連合屈指の企業グループの経営者一族だからだ。
「しかし悪い噂はな」
「ありませんね」
「政治資金も潤沢ですし」
「しかも清廉潔白ですね、そもそもが」
「酒癖も悪くない」
 酒癖の悪さから悪評も立つ、政治家は酒の場も注意しなくてはならないのだ。
「そして異性、同性問題もな」
「そのどちらもですね」
「悪い噂がない」
「それ故にですね」
「スキャンダルも流せない」
「それも」
「弱みがない政治家は厄介だ」
 攻められないからである。
「連合でもエウロパでも政治家のスキャンダルは致命傷だが」
「あの長官殿はそれとも無縁で」
「中々手出し出来ない」
「そのことも気になるが」
 しかし、というのだ。
「あの御仁はな」
「八条長官はといいますと」
「彼自身のことですか」
「あの長官殿は気品もあり優雅だ」
 彼のそうしたこともというのだ。
「エウロパ貴族以上にな」
「階級がなく言うなら平民しかいない国だというのに」
「それでもだというのですね」
「あの長官殿は貴族以上の気品がある」
「それで、ですか」
「そのことも」
「好きになれない」
 実に、というのだ。
「連合にあそこまで気品のある者がいると思うとだ」
「確かにですね」
「喜ばしいことではありませんね」
「我々にしても」
「どうしても」
 スタッフ達も貴族かそれに準ずる立場の者が多い、平民の者もいるがその彼等にしても同じ考えだった。
「連合といえば下品です」
「下品な大衆とやらの世界です」
「その者達に気品があるなど」
「認められません」
「だからですか」
「光源氏か」
 やはり忌々しげに言うカミュだった。
「何でも皇室の出らしいな」
「日本の、ですね」
「よりによって」
「それが家臣に降って宰相になるのだったな」
「物語ではその様ですね」
「そうなるとか」
「政治力、知力、魅力、教養、気品に溢れた貴公子か」
 それが源氏の君だ。紫式部はこの主人公をかなり愛していたことは間違いない。実在のモデルも入っているそうだが紫式部の憧れも加わっているだろう。 
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