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星河の覇皇

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第六十二部第四章 選挙前日その十七

「そもそもヒトラーには家庭がなかった」
「継がせるべき血筋もなかった」
「最初から」
「彼は家庭を重視していなかった」
 これもヒトラーの特色だ、この人物は死ぬその間際まで結婚しなかった。自身を母なるドイツを妻とした男と称して。
「それで何故血筋によって成る皇帝になるのか」
「それ自体がですね」
「ありませんね」
「その段階で」
「とても」
「そうだ」
 まさにとだ、カミュはスタッフ達に話した。
「彼もまた共和主義者だった、彼の生きた二十世紀は王の存在を否定していった」
「その時代によってですか」
「エウロパ皇帝も考えがなくなった」
「それで、ですね」
「その断絶もあってですね」
「エウロパでは国家元首は共和制となったのですね」
「皇帝ではなく」
「ブラウベルグは皇帝になれた」
 欧州を中興しエウロパの国父と呼ばれている英雄である彼ならというのだ。
「彼が望めばな」
「その圧倒的な支持を受けてですね」
「エウロパ総統からですね」
「皇帝になれたのですね」
「ナポレオンの様に」
「彼はナポレオン以上の人物だった」 
 軍神とさえ言われた彼以上の英傑だったというのだ。
「統率力、知力、政治力、カリスマにおいてな」
「軍事的にはともかくですね」
「政治家としてはですね」
「彼はナポレオン以上だった」
「ナポレオン以上の英傑だったのですね」
「間違いなくな、しかし彼は皇帝になろうとしなかった」
 皇帝になれたが、というのだ。
「EUをエウロパにあらためこ中央政府及び国家元首の権限を強化してだ」
「総統を国家元首にしてですね」
「エウロパを中央集権国家にしましたね」
「しかし、ですね」
「それでも」
「そうだ、彼は共和主義者だった」
 それに尽きた、彼は。
「EUをエウロパにしてもだ」
「皇帝にはならず」
「総統に留まりましたね」
「そこから先は進まずに」
「決して」
「そうだ、そしてそれからだ」
 そのブラウベルグ以降の話にもなった。
「彼がそうしたからな」
「エウロパ最大の英雄が、ですね」
「神格化さえされている人物が」
「皇帝にならなかったからこそ」
「後の人物も」
「皇帝にならなかったのだ」
 総統にはなっても、というのだ。
「もっと言えばなれなくなった」
「実際に法で定められていますね」
「総統は世襲はならないと」
「選挙を経て任期も定められています」
「だからですね」
「皇帝はエウロパでは、ですね」
「存在出来ない」
「ローマ帝国であるエウロパ中央政府がそうなったからこそ」
 スタッフ達も話していく。
「皇帝は、ですね」
「持てなくなったのですね」
「それでよかったかも知れないが」
 共和制には共和制の利点がある、一つの家の下で腐敗が進まないという利点だ。そして総統の権限の強さでの改革のしやすさもだ。しかも有能な国家元首を市民が選挙で選べる。カミュはそうしたことも頭に入れているのだ。 
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