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星河の覇皇

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第六十二部第四章 選挙前日その十六

「その後の皇帝達もな」
「ドイツ皇帝やフランス皇帝も」
「そうした存在も」
「皇帝はローマ皇帝だ」
 エウロパではこうなる、欧州の皇帝とは即ちローマ帝国皇帝なのだ。中華圏の皇帝や日本の天皇とはここで認識が違うのだ。
「西であろうとも東であろうともな」
「神聖ローマ帝国は西ローマですし」
「ビザンツ帝国は東ローマでした」
「皇帝はローマ皇帝だけ」
「そうなりますね」
「その通りだ、その為だ」
 ここで話は今のエウロパの話になった。
「今のエウロパはな」
「東西を統合したローマですが」
「それでもですね」
「ヨーロッパ連合はローマ帝国だったのだ」
 EUのことだ、この国家連合はその実態はローマ帝国だったというのだ。
「欧州の統合、それは新しいことではなかった」
「むしろ古代への回帰でしたね」
「それだったのですね」
「そうだ、ローマ帝国だったのだ」
 こう看破するのだった、EU即ちエウロパの前身を。
「そしてEUは共和制だった」
「帝制ではなく」
「それであったが為にですか」
「エウロパは皇帝を持てないのだ」
 共和制を選んだが為にというのだ。
「そして各国もだ」
「エウロパ中央政府がローマ帝国であるが故に」
「統一されたそれであるが故にですね」
「王を持つことは出来ますが」
「皇帝は、ですね」
「持てないのだ」
 エウロパは宿命的にそうなるというのだ、カミュはこのことを冷徹なまでに看破してみせてそのうえでスタッフ達に話すのだ。
「総統は皇帝ではない」
「間違ってもですね」
「それではありませんね」
「共和制の国家元首だ」
 それになるというのだ。
「権限は強いがな」
「世襲は認められていません」
 これはない、必ず選挙を通じて選ばれしかも任期がある。独裁者でもないのがエウロポ総統なのである。
「やはり総統は共和制ですね」
「そうだ、その国家元首だ」
「皇帝ではなく」
「ヒトラーも皇帝ではなかった」
 独裁者であった彼もだ。
「そもそも彼に皇帝になろうという意志はなかった」
「第三帝国と言っても」
「それでもですね」
「ヒトラーは皇帝にはなろうとしなかった」
「その野心はなかったですね」
「欧州の制覇は考えていた」
 世界制覇を考えていたというのが連合側の意見だがそれは実は違うらしい、彼の野心はあくまで欧州に限られていた様だ。
「しかし世襲の皇帝への座はな」
「考えておらず」
「あくまで欧州の独裁者となりたかったのですね」
「だから貴族にも否定的で」
「党を重視していたのですか」
「ヒトラーはジャコバン派だった」
 もっと言えばナチスがだ、その在り方や考え方はフランス革命期の急進的共和主義者であった彼等だったというのだ。
「スターリン、ソ連もそうだったがな」
「ロベスピエールは貴族を否定しましたが」
「そして王も」
「ヒトラーもそうだったのですね」
「スターリンも」
「そうだ、彼等もまた共和主義者だった」
 ヒトラーだけでなくスターリンもそうだったというのだ。 
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