星河の覇皇
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第六十二部第四章 選挙前日その十五
「あの国を軍門に降す」
「その連合のことですが」
ここでだスタッフの一人がカミュに問うた。その問うたこととは。
「閣下はあの国の中でどの国が一番お嫌いでしょうか」
「連合の構成国の中でだな」
「はい、一体どの国でしょうか」
「全て嫌いだがな」
実にエウロパの人間らしい返事だった。
「しかしその中でもだな」
「はい、最も嫌いな国は」
「日本だろうか」
あの国ではないかというのだ、言わずと知れた連合で屈指の長い歴史を誇る国でありしかも六大国の一つである。
「あの国か」
「日本ですか」
「あの国には我々にはないものがあるからな」
「エウロパには、ですね」
「あの国にはですね」
「そうだ、皇室だ」
これがないというのだ、エウロパには。
「エウロパには王室があるがな」
「皇室はないですね」
「どうしてもですね」
「エウロパのどの国にも」
「それは」
「総統はだ」
中央政府国家元首であるその地位はというと。
「選挙で選ばれ世襲制ではない、任期がありだ」
「共和制の国家元首ですね」
「そうした立場ですね」
「共和制の国家元首には地位はあるがだ」
それでもだというのだ。
「権威がないからな」
「だからですね」
「共和制の国家元首はですね」
「そのことは」
「どうしてもですね」
「これは連合中央政府でも同じだがな」
エウロパと対する彼等もだ。
「しかしだ」
「日本にはその皇室がある」
「そのことがですか」
「閣下としてはですか」
「お気に召されませんか」
「日本は国力と歴史だけではない」
この二つに加えてというのだ。
「我々がどうしても持つことが出来ないものを持っているのだ」
「皇室、ですか」
「連合でも二つしかない」
「その皇室が彼等にはある」
「それが、ですか」
「忌々しいと思う時が多い」
実際に、というのだ。
「どうにもな、嫉妬だとわかっているが」
「そう思わずにはですか」
「いられませんか」
「皇室は特別だ」
ひいては皇帝もだ。
「王の上に立つ」
「まさにその文明圏の主ですね」
「そこまでの地位であり権威ですね」
「エウロパでも持っていない」
「そこまでの」
「法皇様はおられたが」
しかし、というのだ。このローマ=カトリックの頂点である存在も。
「連合に行かれた」
「残念なことに」
「そうなりましたね」
「そうだ、我々にはもういない」
皇帝、そして皇帝に匹敵する存在はというのだ。まさに権威の中の権威である至高の存在はだ。それでカミュは言うのだ。
「ローマ皇帝はいたがな」
「そして、ですね」
「神聖ローマ皇帝も」
「勿論ビザンツ皇帝も」
「最早いませんね」
「そうしてだ」
さらに言うカミュだった。
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