星河の覇皇
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第六十二部第四章 選挙前日その六
「何としてもです」
「自己防衛本能があり」
「生き残ろうとしますね」
「そうしますね」
「その為にお世辞にも綺麗とは言えないことも起こりました」
俗に蜥蜴の尻尾切り等と言われる行為がだ。
「おおっぴらには言えません」
「そう言われることはですね」
「実際にありましたね、軍でも」
「我が保守派にもありましたが」
「それと同じく」
「そうでした」
組織故に、というのだ。
「表立っては言えませんが」
「そうしたこともありました」
「全ては組織を守る為に」
「そうしたこともありました」
「私はそうしたことは好きではありません」
モンサルヴァートは騎士道精神を重んじる、これは典型的なエウロパ軍人の考えであると言える。その考えの中でこう言った。
だが彼はよくも悪くも愚かではない、それでこうも言うのだ。
「しかしです」
「そうしたことがあることはですね」
「ご理解されていますね」
「組織が時として醜いことをすることも」
「自己防衛の為に」
「それも知っています」
軍もそうしてきたからだ。
「本能ですね」
「組織も人の集まりですから」
「そうします」
「人も生き残る為に時として醜いことをします」
「それと同じです」
「変わることはありません」
個人と集合体、それだけの違いだった。大きい様でその違いは実はあまり大したことがないとも言えるのだった。
それでだ、長老達も言うのだ。
「この場合は醜くはありませんが」
「撤退戦をして、です」
「そうして少しでもです」
「傷を浅くしましょう」
「下手に退くよりもですね」
軍人の戦術から考えてだ、モンサルヴァートは言った。
「積極的に攻めて」
「はい、そして」
「生き残るのです」
「そうなりますね、では攻めましょう」
最後の最後までと言うモンサルヴァートだった。
「ここは」
「ではお願いします」
「この選挙の最後まで」
「健闘されて下さい」
「全身全霊で」
「そうします、それではですね」
ここまで話してだ、モンサルヴァートは時間を確かめた。そのうえで長老達に対してこう言ったのだった。
「お茶の時間ですから」
「お茶を飲みましょう」
「コーヒーでもいいですが」
長老達も彼の言葉に応えた。
「そうしてですね」
「一休みしましょう」
「それでは」
こうしてだった、すぐに紅茶やコーヒーそれに茶菓子が運ばれて来た。茶菓子はクッキーであった。そのクッキーはチョコレートクッキーだった。
「このクッキーは絶品です」
「クリーモンド社が特別に提供してくれたものですが」
「チョコレートも質がよく」
「最高の味です」
「新製品でしょうか」
こう問うたモンサルヴァートだった。
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