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遊戯王GX~鉄砲水の四方山話~

作者:久本誠一
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ターン56 鉄砲水と幻魔の皇者

 
前書き
前回のあらすじ:転送装置の準備を妨害せんとするマルタンの差し向けた三幻魔を食い止めるべく、三沢VSハモンのデュエルが行われた。 

 
「ラビエル……勝負の前に、ひとつ聞かせてもらおーか」
「ほう?」
「マルタンに憑いてるのが誰かは知らないけど、わざわざ荒事担当に三幻魔を復活させるなんて、なんでそんなに手のかかることをする必要があったのさ?いや、それだけじゃないか。プロフェッサー・コブラといいゾンビ軍団といい校舎にけしかけたウラヌスといい、マルタン自身はお膳立てばっかりで全然動こうとしてこない。強大な力を持つ精霊なのはわかるのに、だったらなんでそのご主人様は自分から動かないのさ」

 これは、実はずっと気にかかってきた疑問でもある。大量の精霊を使役するその力に加えてアカデミアごと次元移動指せるだけの実力を持っていながら、なぜかマルタンは……いや、あのオレンジ色の人影は決して僕らに直接攻撃してこない。十代に会いたい会いたいというのなら、それこそピンポイントで神隠しにでも合わせる方がよっぽど簡単なはずだ。なのに、それをしてこない。一から十まですることなすこと全てが回りくどいのだ。
 過去1度だけとはいえ、ラビエルと直接対峙した僕にはわかる。奴は嘘をつくようなタイプじゃない……少なくとも、この疑問に対する答えを持っているならば、それを誤魔化したりするような真似はしないはずだ。

「ククク……そうか、お前らは何も知らぬのか」
「だから聞いてるんだっての」
「まあよかろう。他ならぬ遊野清明、お前の頼みだ。我々の勝負の最中そんなくだらぬことに思考を裂いて興が冷めることがないよう、憂いは先に断っておいてやろう。とはいえ私も認めたくはないが、奴の力により封印を解かれた身……全てを口にすることはできないが、ヒントぐらいは与えておこう。奴は確かに強い、だが同時に、奴は誰よりも弱い。奴の最大の強みはその弱さにこそあり、それゆえもし私が奴と会いまみえることがあれば、奴に対し私は特に敗北するだろう」
「……そんなポエム聞きたくて聞いてんじゃないんだけどね。さっぱりわかんないんだけど」

 もっとこれこれこんな訳で~、とか説明してくれないと、僕の脳味噌じゃついていけない。ただ、『私は奴に特に敗北する』という部分が妙に引っかかった。日本語としてはむちゃくちゃだけど、言いたいことはわからんでもない。要するに、極端に相性が悪いってこと?確かラビエルの効果は、元からの高打点に加えさらに自軍モンスターの魂を文字通り生贄としてさらにその火力を増大させる力押しスタイルだったはずだ。それがとくに相性が悪い……どういうことだろう。

「もうよかろう。これ以上私は口を割らぬ、もはや言葉は蛇足でしかない」
「そうね、僕もあの時の引き分けには納得いってないし、リターンマッチと洒落込ませてもらおうか……」

「「デュエル!」」

 しかし、まさかこうしてラビエルと再びデュエルするだけでも驚きだなんてもんじゃないのに、その舞台がこんな異世界だなんて、ねえ。人生何が起きるかわからないとはよく言ったものだけど、それにしたって限度ってもんがあるんじゃないかと思う。

「先攻は僕だ!永続魔法、補給部隊を発動!さらにフィッシュボーグ-アーチャーを守備表示で召喚して、この魚族モンスターの召喚をトリガーに手札のシャーク・サッカーの効果発動。出ておいで、サッカー!」

 フィッシュボーグ-アーチャー 守300
 シャーク・サッカー 守1000

「まずはこれでターンエンド……かかってきな、ラビエル!」

 最低限の壁モンスターと、それが破壊されたとしてもその行動をトリガーとしてのドローを行う補給部隊。次の1ターンを耐えきることさえできれば、さらなる展開に繋げるルートもすでに考え付いている。我ながら、これは悪くない立ち上がりだ。

「私のターン。何だそれは、壁でも出したつもりなのか?だとすれば……遅いな」
「え?」

 ラビエルが心底冷たい声で告げたその言葉が、まるで死刑宣告のように胸に突き刺さった。嫌な予感が全身を包み、ふと気がつけば気づかぬうちに出ていた冷や汗が首を伝っていくのを感じた。

「魔界発現世行きデスガイドを召喚し、その効果を発動する。これによりデッキからレベル3の悪魔族、メタボ・サッカーを特殊召喚」

 ラビエルの姿からは想像もつかない、赤いショートヘアの女性型モンスター。営業スマイルと共に手を振ると、その背後からのっそりと不気味な姿の悪魔が這いずるように現れる。

 魔界発現世行きデスガイド 攻1000
 メタボ・サッカー 攻800

「魔法カード、二重召喚(デュアルサモン)を発動。このターンに限り召喚権を1つ増やし、それを利用し2体のモンスターをリリース。怨邪帝ガイウスを召喚し、アドバンス召喚時の効果を発動。闇属性モンスターをリリースしたことで全フィールドから合計2枚までのカードを選択しゲームから除外し、相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える。消え去れ、雑魚どもよ」
「サッカー!アーチャー!」

 ガイウスがその両腕にそれぞれ1つずつ闇の塊を発生させ、それを無造作に投げつける。光さえも歪んで消える得体の知れない暗黒は正確に僕の2体のモンスターを捉え、あっという間もなくその存在ごと消え去った。

 怨邪帝ガイウス 攻2800
 清明 LP4000→3000

「さらに、闇属性モンスターのアドバンス召喚に利用されたメタボ・サッカーの効果を墓地から発動。アドバンス召喚のためのリリース不可なメタボトークン3体を、全て守備表示で特殊召喚する」

 ガイウスの足元の地面が膨れ上がり、植物が成長するのを早回しで見ているかのようにそこから先ほどリリースされたメタボ・サッカーそっくりのモンスターが3体伸び上がる。

 メタボトークン 守0
 メタボトークン 守0
 メタボトークン 守0

「これで3体のモンスターが揃った……」

 ああもう、ここまで見せられれば嫌でも察しが付く。さっきまで雲一つなかったはずの空にはいつの間にやら暗雲立ち込め、不穏な雷鳴が遠くの方でバックサウンドのごとく低く響きわたる。

「悪魔族モンスター3体をリリースすることで、私自身は特殊召喚できる!全てを潰す破壊の御子、幻魔皇ラビエル!」

 メタボトークン3体が消え、その代わりに巨大な人型の魔神が大地を割って地の底からその姿を明らかにする。
 ……なるほど、言うだけのことはある。確かにこれはあまりにも早い。しかもご丁寧にその隣にまで最上級モンスターを立たせる徹底ぶりだ、あの時よりもはるかに腕が上がっている。

 幻魔皇ラビエル 攻4000

「これで終わりとは、私の復讐の日々も報われぬ気がするが……もはや語ることはないな、消え去れ人間よ!奥義、天界蹂躙拳!」
「清明っ!」

 後ろから誰かの声が聞こえたが、振り返らずに大丈夫だと軽く手を振りかえす。実際そのラビエルの拳は風圧だけでテニスコート中の窓という窓をすべて叩き割りながらも、がら空きになった僕の体を捉えることはなかった。瞬間的に目の前に組み上がった氷の壁が、その一撃に対する盾となったのだ。

「……ほう?」
「手札から、ゴーストリック・フロストの効果発動。相手のダイレクトアタック時にこのカードを裏側守備表示で特殊召喚し、さらにその攻撃モンスターをセット状態に変更する……悪いけど、僕だってあの日からはずっとずっと進化してるのさ」

 ???(ゴーストリック・フロスト) 守100

「なるほどな……いいだろう、先ほどの非礼は詫びておこう。だがこの戦い、勝利を得るのは私だ。ガイウスで攻撃」

 怨邪帝の太い腕に薙ぎ払われ、防寒具を着た雪だるまが一瞬で吹き飛ぶ。これは防げない攻撃で、どうしようもない……ワンキルを防いでくれたフロストと、このカードを僕にくれた稲石さんに心の中で礼を言う。

 怨邪帝ガイウス 攻2800→??? 守100(破壊)

「僕のモンスターが破壊されたことで、補給部隊の効果発動。これにより、カードを1枚ドロー!」
「私はこの手札を伏せ、ターンエンドだ」

 強がっては見せたけど、状況はすこぶるつきで悪い。僕の計画だと本来は、2体のモンスターのうちどちらかでも生き残ればそれを起点に2体のモンスターを並べ、さらにそれをリリースして超古深海王シーラカンスをアドバンス召喚、その効果である魚介王の宣告でデッキの魚族を大量リクルートするつもりだった……まさか2体とも、しかも除外されるとは。これだとアーチャーの蘇生能力も使うことができない。

清明 LP:3000 手札:2
モンスター:なし
魔法・罠:補給部隊
ラビエル LP:4000 手札:1
モンスター:幻魔皇ラビエル(攻)
      怨邪帝ガイウス(攻)
魔法・罠:1(伏せ)

「僕のターン、ドロー」

 計画は変更だ、どう動くにしても要となるアーチャーがいなくなった以上、このラビエル相手に悠長に2体のモンスターを召喚権を残したままで並べることはまず無理だろう。幸い、仕切り直しにはもってこいのカードが手札に来てくれた。

「魔法カード、強欲なウツボを発動。手札から超古深海王シーラカンスとオイスターマイスター、この2体の水属性モンスターをデッキに戻してシャッフルしてカードを3枚ドロー!」

 最初期のころから共に戦ってきてくれたモンスター2体をデッキに戻し、改めてカードを引き直す。僕の思いは、どうやらデッキに伝わったらしい。

「モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド」
「ドロー。1ターンの猶予も、結局期待はずれか?ガイウス、露払いは任せるぞ」

 ガイウスの腕がまたもや振りぬかれる。ガイウスから攻撃してこのモンスターを撃破、ラビエル自身の一撃でとどめを狙っているのだろう。もちろん戦術としては極めて真っ当だし、立場が逆なら僕だってそうするだろう。
 ただこの場合、普通に殴ってきてもらうことそのものが僕の手のひらの上なだけで。

 怨邪帝ガイウス 攻2800→??? 守1000(破壊)

「補給部隊の効果で、また1枚ドロー」
「再び手札誘発でも引けたのか?もう終わりにしよう、この天界蹂躙……」

 そこまで言ったところで、我慢できなくなってにやりと笑う。

「させるかぁ!引っかかったね、ラビエル!僕が今伏せたモンスターは、グレイドル・コブラ!このカードは戦闘破壊された時に相手モンスター1体を選び、そのモンスターに寄生してコントロールを得る!」

 ガイウスの拳に押しつぶされ、銀色のしぶきとなったコブラがガイウスを飛び越え、その向こう側の総大将……ラビエルめがけて飛んでゆく。幻魔を幻魔で倒すとしたら、これほど皮肉の利いた最後もないだろう。
 そして無事に付着し、グレイドルとしての能力をいかんなく発揮しにかかるコブラ。だが喜びもつかの間、何か様子がおかしいことに気が付いた。普通の相手ならばとうに体内に潜り込んでいるはずの銀の液体が、表面を覆うのみで進まない。ラビエルの方も寄生完了を示す銀の紋章が浮かび上がらないし、片目が銀色のオッドアイになるはずの瞳は依然として両方とも赤い光を放つままだ。
 やがてラビエルがゆっくりと腕を上げ、自らの体に着いたコブラをひと払いする。すると驚いたことに、コブラだった銀の液体が一斉に薙ぎ払われて地面に落ちて消えていった。

「コブラ!?」
「カウンタートラップ、闇の幻影。闇属性を対象としたカードの効果を無効にし、破壊する!」
「ラビエル……は、そういや闇属性だったね。やってくれるじゃん……だけど、僕もそれなりにしぶといんでね!リバースカードオープン、強化蘇生!この効果により墓地のコブラをレベル1、攻守100ポイントアップした状態で特殊召喚する!」

 グレイドル・コブラ ☆3→4 守1000→1100 攻1000→1100

 ラビエルの巨体に比べると、あまりにちっぽけなコブラの威嚇。だがそれは、今まさに動こうとしていた幻魔の皇を停止させるには十分な効力を発していた。

「いいだろう、カードを伏せてターン終了だ」

 さて。グレイドルの何よりの強みは、この初見殺しの才能だ。それが回避された以上、ラビエルもこれからはでたらめに攻撃を仕掛けるような真似はしてこないだろう。ただセットするだけで相手の攻撃待ちなんて雑な戦法は、もう2度と通用しない。そういう意味ではこのターンは何とかしのいだのではなく、むしろ仕留めきれなかった致命のターンともいえる。
 次のターンからが、本当の勝負だ。

清明 LP:3000 手札:2
モンスター:グレイドル・コブラ(守・強化蘇生)
魔法・罠:補給部隊
     強化蘇生(コブラ)
ラビエル LP:4000 手札:1
モンスター:幻魔皇ラビエル(攻)
      怨邪帝ガイウス(攻)
魔法・罠:1(伏せ)

「僕のターン!」

 引いたのは……このカードか。せめてインパクト、グレイドル・インパクトのカードさえ来れば、コブラと相打ちであのラビエルを倒すことも夢ではないのだが、引けない物はどうしようもない。それに、このカードだって悪い物じゃない。今は使うべきじゃないというだけで。

「このまま、ターンエンド……」
「私のターン。まずはクリッターを召喚し、私の効果を発動。その魂を贄とし、攻撃力をこのターンの間吸収する」

 クリッター 攻1000
 幻魔皇ラビエル 攻4000→5000

「いくら攻撃力を上げたところで、コブラは突破できないよ!」

 言うだけ言ってはみたけれど、無論僕だってそこまで馬鹿じゃない。ラビエルの狙いは攻撃力を上げることではなく、その副産物……クリッターの特殊効果の能動的な発動だ。

「クリッターはフィールドから墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体をこのターンの使用不可という制約付きでサーチすることができる。私はこれで、D.D.クロウをサーチする」

 デッキ圧縮を果たすラビエル。なるほど、確かに墓地から効果を発揮するグレイドルにとっては、フリーチェーンでこっちの墓地を除外してくるあのカラスは天敵ともいえる。なかなかいやらしい準備をしてくれたが、だがそれだけでは済まない、済まさないとその瞳が物語っていた。まさか、もう仕掛けてくるっての!?

「私はこのターン、バトルを行う!行け、ガイウスよ!そしてこの伏せてあった速攻魔法、禁じられた聖衣を発動する。この効果を受けた私の分身はこのターン攻撃力600ポイントと引き換えにカード効果により破壊されず、さらにカードの対象とならない!」
「なっ……コブラ!」

 幻魔皇ラビエル 攻5000→4400
 怨邪帝ガイウス 攻2800→グレイドル・コブラ 守1100(破壊)

 対象を取るグレイドルの効果が、先ほどからピンポイントでカウンターされている。実際この寄生の際にいちいち対象を取ってしまう点はグレイドルたちの数少ない弱点だけど、まさかその点をこんなに早く見抜かれるとは。それにガイウスの攻撃でコブラが破壊されたことで、強化蘇生までついでに破壊されてしまった。
 だけど、まだ僕にはドローが残されている。

「ラビエルが奪えなくても、グレイドル・コブラの効果をガイウスに発動!さらにチェーンして補給部隊の……」
「速攻魔法、サイクロン!いい加減そのドロー加速に付き合うのも飽きたわ!」

 このラビエルの詰めの判断が、僕の命を繋いだといっていい。もしもドローを放っておいて装備カード状態のコブラを破壊されていたら、僕にはもう攻撃力5000のラビエルによるダイレクトアタックを止める手段はない。どうやら最初のゴーストリック・フロストがよほど気に食わなかったらしく、確実に手札誘発を引く可能性を潰しに来たようだ。もう僕のデッキに眠るカードの中で、相手の攻撃に手札から干渉できるカードは存在しないというのに。
 そしてそのおかげで、コブラはガイウスの体を乗っ取りにかかる。ラビエルの側にもこれ以上の防御札はないらしく、ようやく寄生が完了した。

「立て、ガイウス!」
「承知の上よ!天界蹂躙拳、塵芥へと還るがよい!」

 幻魔皇ラビエル 攻4400→怨邪帝ガイウス 攻2800(破壊)
 清明 LP3000→1400

「ぐっ……!」

 いくら攻撃力2800を誇るガイウスとはいえ、ラビエルの前ではただの的にしかならない。寄生したコブラもろともその拳の前に塵一つ残さず消失し、今度こそ僕のフィールドは空になった。

「ターンを終了する。そしてこの時、私の効果と禁じられた聖衣の効果は同時に消える」

 幻魔皇ラビエル 攻4400→4000

清明 LP:1400 手札:3
モンスター:なし
魔法・罠:なし
ラビエル LP:4000 手札:1
モンスター:幻魔皇ラビエル(攻)
魔法・罠:なし

 奴の手札には実質グレイドルの効果を無効化できるカードであるD.D.クロウがいる。状況は最悪の一歩手前、だけどここで折れるわけにはいかない。ここで僕が勝利を諦めたら、後ろにいる皆は、このアカデミアはどうなる。それに何より、そんな結末は僕自身が認めない。この2年近くに渡る僕の歴史が、グレイドルやフロスト、幽鬼うさぎとの出会いが、デュエルの日々が、全て無駄だったことになってしまう。

「僕のターン、ドロー!」

 確かにラビエルは強い。だけど、決して無敵の存在じゃない。モンスターの枠にいる以上、どこかに攻めどころはあるはずだ。

「魔法カード、強欲で貪欲な壺を発動。デッキトップ10枚を裏側で除外し、カードを2枚ドロー……よし、埋葬されし生け贄を発動!このターン2体のリリースを行いモンスターをアドバンス召喚する場合、フィールドではなく互いの墓地からモンスターをリリースできる!僕の墓地からはグレイドル・コブラを、お前の墓地からはメタボ・サッカーをそれぞれ除外し、アドバンス召喚!来い、絶望の妖星!The() despair(ディスペア) URANUS(ウラヌス)!」

 真ん中に顔のついた、岩石の巨大な球体がせり上がる。このモンスターはこの砂漠で出会ったカード、このカードならば、ラビエルに対抗するだけの力を持っている!

「ウラヌスは僕のフィールドに魔法も罠も存在しない状態でのアドバンス召喚に成功した時、その特殊効果を発動できる。ラビエル、お前が永続魔法か永続罠、好きな方を選びな!そして僕は宣言された種類のカード1枚を、僕のフィールドにセットできる」
「魔法か、罠か……いいだろう、好きな永続魔法を選ぶがいい」
「永続魔法……グレイドル・インパクトをデッキからセットして、そのまま発動。そしてウラヌスは僕のフィールドで表側表示の魔法か罠1枚につき300ポイント攻撃力がアップする」

 The despair URANUS 攻2800→3100

「だけどこれだけじゃないはずだよね、ラビエル?」
「……ああ。相手がモンスターを通常召喚するたびに、幻魔トークンを1体特殊召喚する」

 幻魔トークン 守1000

「邪魔邪魔、そのトークンには退場願おうか。装備魔法、ビッグバン・シュートを発動!装備モンスターの攻撃力を400アップして貫通分ダメージを与える効果を付与、さらに表側の魔法カードが増えたことでウラヌスの攻撃力アップ!」 

 The despair URANUS 攻3100→3500→3800

「バトル、ウラヌスでトークンに攻撃!」

 The despair URANUS 攻3800→幻魔トークン 守1000(破壊)
 ラビエル LP4000→1200

 このデュエルではまだ初ダメージだからラビエルのライフは残っているが、それでも一気にその半分以上を削ることができた。手札の状況や残りライフを考えると、恐らくこのウラヌスが最後の希望になるだろう。流石にこれ以上、このデュエルで大型モンスターを引っ張り出す余裕があるとは思えない。
 チャンスは1回、勝負は1瞬。このターンでの攻撃はこれまでだけど、なんとしてでも、ここでこのデュエルを終わらせる。

「カードを2枚伏せてエンドフェイズ、グレイドル・インパクトの効果でデッキからグレイドル・パラサイトを手札に加える。ドール・コール!さあかかって来い、ラビエル!」
「いいだろう、ドロー!闇の誘惑を発動、カードを2枚ドローし手札の闇属性モンスター、D.D.クロウをゲームから除外する」

 ラビエルも考えることは同じだったようだ。グレイドルへの最大のメタになりうるカラスを捨ててまで新たなカード2枚を手札に残す道を選んだ……おそらくあの2枚とフィールドのラビエルのみで、これ以上デュエルを続けることなく決着をつける気なのだろう。

「まず魔法カード、火炎地獄を発動!私が500ポイントのダメージを受ける代わりに、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
「熱っ……!」

 清明 LP1400→400
 ラビエル LP1200→700

 一瞬だけこちらが優位に立ったライフも、捨て身の火炎地獄によりまた僅差とはいえひっくり返される。確かに熱い、だけど今更バーンダメージぐらい、死ななきゃ十分安い安い。

「さらに魔法カード、ナイト・ショットを発動。相手のセットカード1枚を、チェーンを許さずに破壊する。私が選択するのは……右の伏せカードだ」
「僕のスキル・サクセサーが……」

 本来スキル・サクセサーはフリーチェーンでモンスターの攻撃力を400ポイントアップさせるカードなのだが、ラビエルの言った通りナイト・ショットのせいでそのチェーンが許されずになすすべなく破壊される。本当なら攻撃してきたところを返り討ちにする気だっただけに、少し表情が歪むのが自覚できた。

「堕ちるがいい、絶望の妖星とやら!受けて見よ、天界蹂躙拳!」

 幻魔皇ラビエル 攻4000→The despair URANUS 攻3800(破壊)
 清明 LP400→200

「残り200……そのライフ、必ず我が拳で削りきってくれようぞ。私はこれでターン……」
「待ちな!」
「……何?」

 ラビエルが驚くのも無理はない。ウラヌスが沈んだ今、フィールドを支配しているのはラビエルのみ。その目の前にほのかに赤く光る剣を手にして立っているのが、モンスターではなくプレイヤーの僕自身なのだから。

「何のつもりだ、遊野清明」
「別に?ただ、これを受けてもらいたくってね」

 そう言って、手に持っている剣をこれ見よがしにかざしてみせる。少し訝しげな顔でそれを見た後、ややあってラビエルが息をのむのが聞こえた。

「その形状……まさか!」
「そのまさかさ。トラップ発動、極星宝レーヴァテイン!このカードは戦闘でモンスターを破壊したモンスターに対してのみ発動でき、一切のチェーンを許さずに対象となったモンスターを破壊する!そう……れっ、と!」

 まっすぐに投げつけた剣は何の抵抗もなくラビエルの心臓を貫き、やがて陽炎のようにラビエルの巨体が砂漠の空に消えていく。

「く……!」
「そして、これをラストターンにしてみせる!僕のターン、ドロー!」

 もはやお互いのフィールドにカードはなく、僕の手札にもさっきサーチした永続トラップ、グレイドル・パラサイトしかない。このドローカードで通常召喚可能なモンスターが引ければ僕の勝ち、もし引けなければ残りのライフから考えてもまず間違いなくラビエルの勝ち。
 ここまで来た以上、小難しい戦略は必要ない。原点に立ち返っての1発ドロー勝負、いいじゃない。皆が、ラビエルが、そして僕自身がじっと見つめる中、ゆっくりと今引いたカードを表側にしていく。

「ありがとう。いつも僕を、助けてくれて。僕は今引いたカード、霧の王(キングミスト)を自身の効果によりリリースなしで妥協召喚!」

 フィールドの中心に空の果てから落ちてきた青い光が走り、その光の中からゆっくりと僕がどんなカードよりも信頼する最強の魔法剣士がその一歩を踏み出す。

 霧の王 攻0

「モンスターを……引いたか……」
「ああ。墓地からスキル・サクセサーの効果発動、このカードをゲームから除外して霧の王の攻撃力を800ポイントアップさせるよ」

 霧の王 攻0→800

 そう、これこそがとにかく通常召喚できるモンスターさえ引ければよかった理由。ラビエルのライフが800を下回った時点で、たとえ僕がどんな攻撃力のモンスターを引いたとしてもこの結果は変わらなかった。
 もしも、ラビエルが自身のライフを気にして火炎地獄を温存していたら?もしも、ウラヌスの召喚時にラビエルが永続トラップを宣言していたら?もしも、クリッターでD.D.クロウ以外のカードをサーチしていたら?どれか1つでもここまでの流れに狂いが生じていたら、あるいはこのデュエル、もっとほかの結末を迎えていたのかもしれない。もっとも、それこそ考えたって詮無いことではあるが。

「そう、か……私が負ける、か」

 そう言って両腕を広げ、霧の王の一撃を黙って受け入れるようなポーズをとるラビエル。このデュエルが終わることに一抹の寂しさを覚え、そんなことを感じる自分自身にやや驚きながらも、霧の王に最後の宣告をかける。

「バトル。霧の王でダイレクトアタック……ミスト・ストラングル」

 最後の一撃は高揚するでも感慨に浸るでもなく、ただただ静かだった。そんなもの、なんだろうか。

 霧の王 攻800→ラビエル(直接攻撃)
 ラビエル LP700→0





「……」
「……」

 僕もラビエルも、今度こそ今生の別れとなるであろうこの時も、特に何を話すこともなかった。お互い、言いたいことは全てデュエルで伝えあった。いまさら言葉なんて、蛇足にしかならない。 
 最後にラビエルの目を見ると、向こうもまっすぐに僕の目を見返してくる。ほんの少し、その口元が笑った気がして……ラビエルが自身のカラーリングと同じ濃い青い光となり、マルタンのもとへ飛んで行った。

「ぐっ……!」

 余韻もへったくれもなく、問答無用で襲い来るデスベルトの力に膝をつきそうになるも、最後まで光の行く末を見続ける。僕にとっての三幻魔との戦いは、今この時を持ってようやく完結した。 
 

 
後書き
特に言うことはないですかね。まさかラビエルをこんな引っ張るとは、前回ラビエル戦を書いた時には思ってなかったですが。 
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