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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第74話忌々しい記憶

GGO、《バレット・オブ・バレッツ》予選第一回戦バトルフィールド・失われた古代寺院

バトルフィールドに自動転送されて、オレは今古代寺院の鳥居らしき柱に隠れて辺りを見回している。今のところ目に見える範囲には対戦相手の餓丸はいないみたいだな。そう思っていたらーーー突然右から少し強い風が吹いてきた。その方向を目を凝らして見てみると、草木に紛れるかのようにヘルメットに葉っぱをあしらえた軍人のような男、餓丸がサブマシンガンの銃口を向けていた。

「やべっ!!」

餓丸のサブマシンガンの銃口から伸びた9本の《弾道予測線(バレット・ライン)》から逃れようとジャンプしたけどーーー左足の脛に2発の弾丸が当たる。空中には逃げ場がない分、ジャンプは失敗だったな。でも他の7発はどうにか空中で回避して、柱のてっぺんに着地出来た。今度はこっちの番だ。オレは左腰のホルスターから《FN FiveSeven》を抜きーーー

「・・・無理だろ!!おわぁぁぁっ!!」

あんな丸見えな所から落ち着いて発砲出来る訳もなく、12~3発の弾丸の雨に怯んで落とされた。そして最後の1発が《コンバットスーツ》の左の二の腕に装着してある鉄製のプロテクターにかすってしまった。運良く着地して柱の陰に隠れることは出来たけどーーーこれじゃあ全く近付けない。せめて右腰に吊るしてる《FJBXー04A》で銃弾を何発か防げればーーー少なくともこの速さの弾丸を弾くには弾の軌道を正確に予測しないと絶対に無理だ。

「・・・あれならどうだ?」

ギャンブルゲームでNPCガンマンが発射した銃弾を避けた時みたいに、あれと同じことが出来ればーーーいける。ビビるな、オレ。弾の軌道は予測線が教えてくれる。オレはそれに合わせて刀は振ればいいだけだ。オレは腰から《FJBXー04A》を外して右手に握る。銃撃が止まった。弾切れか、移動してるのかーーーどちらにしろ奇襲を仕掛けるなら今だ。
目を閉じろ意識を耳に集中しろ。風になびく草木の音、そこから自然に鳴らない音を見つけろ。風じゃなくて、本当に人為的に鳴り響く草の音ーーーオレの左後ろの約38度!

「見つけた!!!」

オレは音が聞こえた場所から音が動く方向より少し前に駆け抜ける。その先にはーーー草の中から這いずって出てきた餓丸。オレの接近に気付き、立ち上がってサブマシンガンの銃口を向ける。それに対してオレは《FJBXー04A》のビームの刃を展開する。餓丸のサブマシンガンから20を超える数の予測線が伸びてきた。その中の数本がオレの首・左脇・胸・左と右の太もも・額に当たる。その予測線を辿って飛んでくる銃弾がヒットーーーする前に《FJBXー04A》で薙ぎ払う。他の箇所に向かって飛んでくる銃弾も次々と薙ぎ払い、駆け抜ける。

「嘘だろ!?」

サブマシンガンが弾切れを起こしたらしく、餓丸は慌てて新しいマガジンを取り出すがーーー間に合わないぜ。

「こんだけ近ければ当たる!!」

オレは牽制として《FN FiveSeven》で5回発砲して、餓丸にマガジンの装着を阻止した。
武器が軽いからか、今はキリトより剣を速く振れる気がするぜ。何かやべぇなーーー

「負ける気がしねぇ」

オレは《FJBXー04A》の背を肩より後ろに構えて駆ける。この挙動は二年間剣を振るって染み着いた技の中で、オレの一番得意な剣技。両手剣ソードスキルーーー

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

《アバランシュ》が餓丸の左首筋を捉え、その身体を一刀両断してーーー餓丸を赤い光の破片と化した。
オレの勝ちだ。もう剣を納めよう。オレは《FJBXー04A》を背中にーーー

「・・・またやっちゃった」

スイッチは切るだけでいいのに、二年間のフルダイブ恐っ。そしてオレの頭上にオレの勝利を祝福するファンファーレが鳴り響く。勝ったのはいいけどーーー

「はぁ~・・・しんどっ!!」

あまりに疲れる戦いだったため、地面に座り込んでしまった。この恐ろしく疲れる戦闘があと四回ーーーそう心の中で愚痴を溢し、オレは戦闘前までいた空間に自動転送された。




******




辺りを見渡せば、休憩スペースにもなる選手控え室にいた。そこにはシュピーゲルがいて、彼が見ているモニターを探す。多分彼が見てるのはシノンの試合だ、この中にはーーー

【お前・・・本物、か?】

「ッ!?」

突然後ろから機械質な声が聞こえて、オレは驚きのあまりに左に大きくジャンプする。オレが立っていた場所にいるのはーーー両腕に包帯を巻き、黒いボロボロのマントに身を包み、赤い目の骸骨のマスクを被ったーーー体格から見て男だ。いつの間に後ろにいたんだ?接近されたのに全く気が付かなかった。それよりーーー本物って何だ?

「本物って、どういう意味だ?あんた誰だよ?」

そう質問したら、ボロマントの男がオレの至近距離まで近付いてきた。オレは思わず《FJBXー04A》を握る手に力を込める。そしてボロマントの男は顔を近付けて言い放つ。

【試合を、見た・・・剣を、使ったな?】

「あ、ああ、使ったぜ。別にルール違反じゃないだろ?」

そう返答したら、ボロマントの男はさらに顔を近付けてきた。

【もう一度、聞く・・・お前は・・・本物、か?】

こいつーーーオレを知ってるのか?この赤い目の男、知ってる気がする。間違いない、絶対どっかで会ってる。もしくは特徴がよく似た人間の写真などの情報を目にしたことがある。でもどこでだ?どこでこいつに会ったんだ?そう脳内検索をしていたら、ボロマントの男が右手をあげてシステムウィンドウを開いた。そして今回のBoBの予選Fブロックのトーナメント表を表示した。その中の第一回戦の枠の中から一つを拡大して、一つの名前をオレになぞって見せた。その名前はーーー

【Rairyu】

オレの名前だった。

【この、名前・・・あの、剣技・・・お前、本物、なのか?】

オレもこいつを知ってる?誰だ?まさかとは思うけど、こいつもオレと同じーーーSAO生還者(サバイバー)なのか?誰だ?一体どこで出会った?オレの記憶の奥底に眠る記憶を呼び起こす何かが欲しい。だがそれは幸か不幸か、このボロマントの男が持っていた。
システムウィンドウを閉じたこいつの右腕の包帯の隙間に刻まれている物を見てオレはーーー思い出した。翼たちが生きていたこともあって、忘れていた。忘れられる訳がない物を忘れていた。こいつの右腕の包帯の隙間から見えるのはごく一部だが、これは不気味な笑みを浮かべたーーー棺桶の烙印。そうだ、こいつはオレの人生の中で最も忌々しい記憶の存在だったんだ。この烙印を知っている奴はSAO生還者(サバイバー)しかいない。そう、こいつはあの剣の世界にいた最低最悪の殺人(レッド)プレイヤーのーーー
























殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の人間だ。 
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