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101番目の哿物語

作者:コバトン
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第十五話。最悪の都市伝説

ついに俺の体は、目の前にある襖の中に吸い込まれていく。
ズブ、ズブと、まるで底なし沼に沈んでいくような感触を感じながら俺は脱出方法を考える。

(何か方法はないか? 引力から脱出する方法は……引力より速く動ければ!
いや、あの技は体の負担は大きい。これから音央を探しに行かなきゃならんのに、消耗して動かなくなったらもともこうもない……だったら!)

ヒステリアモードの俺はある方法を思いついた。
まず、最初に思い浮かんだのは、人喰い村で音央が村人に襲われた時に使った『夜桜(よざくら)』。
超音速を超える光速で突っ込む技だが、あの技は体力の消耗が激しいので、この後、音央を探しに行かなきゃならない俺としては使いたくない。
次に思い浮かんだのは……。

オイオイ、本当に大丈夫か?
ヒス俺よ?

思いついたが……それはいいのか?
しかし、やらなきゃいけない。
覚悟を決めろ、俺!
その技は俺にしか出来ない。
いや、俺にしか……かなめは許さないだろう。
かなめが俺の寮に住み着いた時、かなめは米国が提唱した机上の空論。『双極兄妹(アルカナム・デュオ)』を成し遂げようとしてきた。その時にかなめが俺と結ばれるように仕向けてきた時に起きた出来事。
そう、これは……対かなめ用の撃退法。

(行くぜ! この桜吹雪……散らせるものなら)

「散らしてみやがれ!」と内心思いながら俺は体の力を抜いて、自ら襖の中に飛び込んだ。
襖の先は驚いたことに、飛行機の機内だった。
座席とその座席の上部に荷物入れがある、見慣れた普通の機内。
見た感じここはエコノミークラスか?
そのたくさんある席の一番前の席に見たことのある茶髪のボブカットをした少女がいた。
他でもない。それは俺の妹、遠山かなめさんだ。

「……来てくれたんだね、お兄ちゃん」

「可愛い妹が呼んだんだ、来ないのは兄として失格だろう?」

ヒスってる俺はつい、そんな言動をしてしまう。

「背徳ぅー! やっぱりお兄ちゃんはいい、いいよ! お兄ちゃんがいないと私は耐えられないッ!」

「全く困った妹だな……」

「こんな妹は……嫌い?」

「いや、愛してるよ」

あっ、コラ。そんな誤解されるようなこと言うな、ヒス俺よ⁉︎
そこはハッキリ家族愛と言え!

「っ〜〜〜〜〜背徳ぅ______!!!」

かなめは、かなめでうっとりした顔をしてるし。ああ、なんだか誤解が深まった感じがしてるな。
どうすんだ、これ。
などと、思いながら俺は周りを見渡す。
普通の機内と変わらない、ありふれた飛行機の中。
……なのだが、ここは普通の世界じゃないのは何となく感じられる。
それだけじゃない。なぜかはわからないが、この機内には見覚えがある。
まるで乗ったことのあるような気がするのだ。

「ここも……『ロアの世界』なのか?」

「うん、そうだよ。ここはANA600便を再現したところ。
もし、あの時、お兄ちゃんが来なくて、アリアが一人で『武偵殺し』と戦っていたら……っていう世界。
『H』の真の能力を発揮できなくて、武偵殺しにアリアは負けて、そしてこの飛行機も墜落する……そんな世界。或いはお兄ちゃんが間に合っても、不時着に失敗する世界。操縦機材が全て狂って制御が効かなくて墜落してしまう世界。
この世界は『もし、ANA600便に不測の事態が起きて墜落したら?』という噂から成り立つ世界なんだよ!」

「そんな世界も再現出来るのか?」

「うん、私は『悪戯妖精(グレムリン)』のロアでもあるからね。だから過去、現在、未来で起きるありとあらゆる航空機事故、事件を再現出来るという逸話を持ってるんだよ」

なんだよ、そのチート能力。
隙間女だけでもやっかいなのに、さらにやっかいじゃねえか!

「それでお兄ちゃん……自分から来てくれたってことは私と結婚してくれる気になった、ってこと?」

「そうだね。その返事をしに来たんだよ」

俺はかなめの隣の席に腰掛け、そしてかなめに向き合う。
かなめの暴走を止める為とはいえ、これからすることはかなめを傷付ける行為かもしれない。
だが、俺はどうしても守りたいものがあるんだ。
だから……すまん。かなめ。
俺にはこうすることしか出来ないんだ。
俺は顔をかなめに近づけて、その唇に自身の口を押し付けた。
ああ、やっぱりかかりは甘いが……かなめでもなれる(・・・)んだな。
ヒステリア性の血流が高まるのを感じながら、俺は舌を絡ませるように。
かなめを弱らせる為、キリカ直伝のキスをしてやった。

「ぷはぁーっ……どうだかなめ。兄のキスは凄いだろ?」

かなめの顔を見ると、キスをされたかなめは……。

「はっー、はっー、だ、ダメ。こんなことしちゃ……ダメっ……!」

さっきまで俺にされるがままにキスされていたのに、その手を俺の胸に押し付けるように、拒んで(・・・)きたのだ。

「……」

「や、やめてっ______兄妹でこんなことしちゃ……ダメっなのに……!」

かなめは今までと矛盾することを言いながら、愛おしさを感じさせる仕草で、潤んだ瞳から涙を零している。
その姿は小動物のように儚く、か弱い。男の力で押し倒したら抵抗すら出来ない感じに。足の膝は震え、本能的に内股に閉ざされてしまっている。
これは……演技でやってるのではない。
かなめは、変化したんだ。

(すまん、かなめ。後で泣かせた責任は取るからな)

俺の目論見通りかなめはなった(・・・)
HSS……ヒステリアモードに。
ヒステリアモードは『子孫を残す』という本能が発達したもので、それにより男は『女にとって魅力的な男』を演じることで『強くなる』。しかし、逆に女は『弱くなる』。
『男が守りたい女になることで、生き残る』為に。
そうなることを知っていた俺はそれを利用させてもらった。
かなめを無傷で倒す為に……。

(体は無傷だが、心のケアは後でしてやるからな)

恨まれてもいい。呆れられてもいい、俺はお前に拳を向けることなんか出来ないんだから。
鈍感な俺だって、これが最低な行為だってことくらい解る。
だけど、それでも俺はやらなくちゃいけなかったんだ。
俺を信じて待ってる人達の為に。
すまん、かなめ……そう、心の中で謝りつつ、この空間から出るために行動を起こそうとした俺の肩を誰かが掴んだ。
いや、誰かじゃない。
ここにいるのは……俺と、かなめしかいないんだから。

「……お兄ちゃん、どこ行くの?」

泣き止んでいたかなめの手が俺の肩をがっしりと掴む。
ギリギリ、ともの凄い力で掴まれているのだが……かなめさん、弱体化してるはずですよねー?
どこにこんな力が?

「……お兄ちゃん、行っちゃダメ! 行ったらお兄ちゃん……死んじゃうよー、嫌だよ。もう、お兄ちゃんがいなくなるのは嫌っ______!!!」

ギリギリ、肩を掴むかなめの手はさらに強まる。
ちょっ、ヒステリアモードとはいえ、筋肉や骨までは強化できないから普通に痛いんですが、かなめさん⁉︎
肉が裂ける⁉︎ 骨が砕けるー!

「ヒステリアモードになってない……のか⁉︎」

そんな……確かにかなめからは弱くなった雰囲気があるのに。
この力はどうゆうことだ? ロア化したからか?
いや、そうだとしてもここまで強くなるだろうか?

「……お兄ちゃんは……私と一緒になればいいの。強さも何もかも……」

かなめのその言葉にある可能性が思い浮かんだ。
……待て。待ってくれ。
そんな……まさか!
そんなことが可能なのか!
ソレを認識した瞬間、俺は自身の身に起きてる変化(・・)を感じた。
そんな……こんなことってあるのかよー⁉︎
血流が収まってる。ヒステリアモードが解除されてる⁉︎

「……気づいたお兄ちゃん?」

「これはお前がやったのか⁉︎」

「うん、お兄ちゃんのおかげで『私』が人格の主導権を握れたからね」

「お前はもしかして……?」

「そうだよ。今の私は『脚本作り(ブックメイカー)』のロア。お兄ちゃんが言ってた『チャンネル3(ヒステリアモード)のかなめ』だよ!」

やはりか。チャンネル1のかなめが普通のかなめだとしたら。チャンネル2のかなめは攻撃性が増したかなめ。そして、今のかなめはヒステリアモード時の弱体化したかなめになる。
しかし、弱体化してるはずのかなめだが、俺には俺と同等の力を持つように感じる。
まさか……!

「なるほどなぁ、『相手を自分と同じレベルまで引き下げる』……それがお前のロアの力か」

レベル99の敵も、同じレベルに落としてしまえば脅威ではなくなる。
つまり、ヒステリアモードになって弱くなったかなめと強制的に同じ強さに俺はさせられているのだ。

「弱くなっちゃえばお兄ちゃんもう戦えないよねー?
合理的ー、最初からこうすればよかった!」

それのどこが合理的なんだ、どこが!
しかし、困ったな。かなめの言う通り今の俺は弱体化している。
マイナス30倍くらいになった感じだ。
いや、マイナス30倍とか、自分で言っといてアレだが意味わからん。

「待て、かなめ! 俺の力を弱めたとしても俺の意思は変わらないぞ。
嫌だからな。俺は!
他の仲間だけを戦わせておいて、自分は高みの見物をするとか、絶対に嫌だからな!」

「それなら心配いらないよ?
お兄ちゃんの仲間達は理亜ちゃんが全部きちんと消して(・・・)あげるから」

消す? 消される?
俺の仲間が、一之江やキリカ、音央、鳴央ちゃん……みんなの力が、存在が消される?

「見てみる? ほら、もうすぐ一人消えるよ?」

かなめがそういった瞬間、機内にあるモニターが点滅して映像が流れる。
そこは俺がよく知っている場所。
学校のグランド。
夜坂学園のではない、一文字疾風がかつて通っていた十二宮中学校の校庭。
そのグランドで、音央がボロボロになりながら誰かと戦っていた。
誰か、そんなのは決まっている。
だが、その現実を認めたくない!
そんなの。そんなの。

「認められるかぁぁぁああああああああ!!!」

つい、叫んでしまうが俺の声は届かない。

『『茨姫の檻(スリーピングビューティー)』‼︎』

音央は校庭の真ん中を走りながら、茨を一本だけ放った。
伸びた茨の蔦が地面にある白い手を薙ぎはらうが、すぐさまにょきにょき新しい手が生えてくる。
あの手はスナオの能力か?
走って近づく音央の足をその白い手が掴み、音央は前のめりに転ばされる。
大量の手が音央に伸びる!

まずい、このままだと音央が……。

映像を見た俺はそこで自身に起きてる変化に気づく。
ドクン、ドクンドクン。
ああ、なる。なっていく。この身体の真芯に血が集まる感覚。
そして、通常のヒステリアモードではない、湧き上がるドス黒い感情もないから、ベルセでもない。
だが、なっていくのがわかる。
自分の女が傷付かれた時に発動する最強のヒステリアモードに。
ああ、俺はなっちまったみたいだな。
『ヒステリア・レガルメンテ』に。
だが、今の俺は弱体化している為、レガルメンテになっても普段の俺と変わらない。
マイナス30倍から0になったってところか。
通常時と比べたらちょこっと強くなってはいるが、その変化量は普通のヒステリアモード時とあまり変わらないからな。
これならベルセの方が強い。
だが、それも仕方ない。ヒステリア・レガルメンテは傷付かれた女性の数だけ便乗して強くなっていくモードだから音央一人分だけじゃ、あまり変わらないのだ。

「大丈夫だよ。お兄ちゃんはもう戦わなくていいから。理亜ちゃんと私でお兄ちゃんに降りかかる火の粉は振り払うから」

「それは魅力的な提案だけど、お断りするよ。
女性に守られるだけの男にはなりたくないからね」

映像を見ると、音央は空を飛んだ。
アレは理子やアリアがやったみたいなツインテールで飛行……ではないな。
背中からなんか小さな羽が見えたし。
その姿はまるで『妖精』のようだな。

「『妖精の羽』かぁ。ロアってなんでもありなんだね〜」

かなめが感心するかのような声をあげた。
確かになんでもありだな。
『都市伝説』の通り、噂をなぞえばなんでも出来る、応用が効く力。
それが『ロア』の強さなんだろう。
そう、応用が効くんだ。
だから、俺が今からやることも成功するはずだ!
成功率は50%・50%(フィフティー・フィフティー)だが、0じゃない。だからきっと成功できる!

「かなめ、悪いけどそろそろ俺は音央のところに行くよ」

「どうやって? HSSになれたみたいだけどそれでもいつもよりは弱いのに?」

「どうにかするよ。俺は『不可能を可能にする』……そんな(ロア)だからな」

かなめにそう言った俺はかなめの手を振りほどき、何もない空間に掌をかざす。
そして、ただ一言呟いた。

「『削除(デリート)』」

パキィィィン‼︎

空間に亀裂が入り、そしてその空間の先には……。

「兄さん⁉︎」

俺の姿を見て驚く理亜の姿と。

「あ、なんだ。来たのね。ふふーんどう? 『妖精』すらも攫っちゃう私の赤マントはやっぱり最強なのよ! はい」

得意げな顔をしながら気絶した音央を差し出すスナオの姿があった。
かなめに視線を向けるとかなめは絶句していた。自分の『ロアの世界』を破られたことがショックだったようだな。だが、これでわかったろ、かなめ? 俺を相手にするのは容易じゃないって。
俺はかなめが展開していた『ロアの世界』を強制的に解除して、尚且つ、空間を十二宮中学校に繋がるように『干渉』したのだ。
『消去』と『干渉』。
それが俺のロアの力だからな。
音央を受け取りながらそんなことを思っていると、理亜が語りかけてきた。

「音央さんは、兄さんの代わりに戦いに来たと仰いました。自分の罪は決して許されることはないけど、自分や鳴央さんにとって兄さんは恩人で……これからも、自分のようなロアやハーフロアを助ける『主人公』である、と」

「……音央……」

よく見ると俺の腕の中で気を失っている音央の目元はちょっと赤くなっていて、泣いたような形跡があった。
音央が泣くほど悩んでくれた。その事実に嬉しさも感じるが、だが何より泣くまで追い詰めてしまったことに悔しさを感じる。

「ん……え? あ、モンジ……」

と、腕の中でもぞもぞっと音央が動く。どうやら失っていた意識を取り戻したみたいだな。

「何勝手に突っ走ってるのかな? 後でオシオキだよ」

「お、オシオキって何する気よ! っていうか、あんたなんでこんなトコ来てんのよ! ってか下ろせ変態むっつりスケベスケコマシ‼︎」

「むっつりじゃねえ⁉︎」

返對って、何で音央がヒステリアモードの昔の呼び方を知ってるんだ?

「むっつりしか否定しないのねっ」

スナオちゃんからツッコミが入り、理亜とかなめのじとーっとした冷たい視線が突き刺さる。
いや、否定したいんだけど……今までいろいろやらかしてきたから否定できないんだよ。
そんなことを内心思いつつ、音央の体をゆっくりと地面に立たせた。

「でも、ありがとう。俺と理亜の為に悩んでくれて」

そう言いながら俺は音央と理亜の間に入るように立つ。
そして、理亜と目を合わせる。

「音央さんが『妖精の神隠し(チェンジリング)』そのもので、大勢の人々を消してしまった罪滅ぼしがしたいというのは理解できました。そして、兄さんがそんな貴女達罪のあるロアでさえ救おうとしているのも、納得しました」

「理亜ちゃん……」

「ですが、それとこれとはまた話が別なのです。音央さんだからこそお話しますが、私が兄さんを私の物語にしたいのは、兄さんを信用していないからではありません。むしろ、兄さんならば私よりも多くのロアやハーフロア、ロアの事件に巻き込まれた人々を救うこともできるとすら思っています」

「っ、だったら‼︎」

「だからこそです。そうやって仲間を増やし続けた兄さんは、その仲間が傷付くことや消失を恐れるあまり、単独で最悪の敵に挑むことになるからです」

「最悪の敵……?」

音央が疑問の声を上げる。
俺はかなめが語っていたいくつかの話からそれがどういった存在かを思い浮かべることができた。

「かなめが言っていた破滅の属性を持つロアか?」

俺の呟きに理亜はキッとした表情を浮かべ、かなめを見る。

「……話されたんですか?」

「うん。でも、まだその正体までは言ってないよ?
多分、お兄ちゃんは薄々感付いているとは思うけど」

ヒステリアモードの時に思い浮かんだのは、理亜が見たあの夢。
真紅に染まった空。大災害にでもあったかのような崩壊した街並み。
そして、狂ったように高笑いしていた聞き覚えのある少女の声______。

「さ、最悪の敵って……理亜ちゃんとか、あの氷澄って人とか、みんなの力を合わせればなんとかなるんじゃ……」

「おそらく、今集められる全員の力を使っても。それどころか近隣のロア達を集めても。勝利する確率は低いのです。それだけ、その敵は恐ろしいロアなんです」

「そんなのっ! だって、自分で言うのもなんだけど『神隠し』とか、ええと、なんかマッハの凄い技とかだって、なんとかしてたのよ?」

「そうですね。兄さんはそういった意味ではとてもよくやっていると思います。最初から強いロアばかりと戦い、そのレベルアップも早く、頼もしい『主人公』になっているのは確かなことでしょう」

「だったら!」

「でも不可能です。それだけ、その『最悪の敵』というのは恐ろしい存在なんです。兄さんがいくら人間離れした人でも、8番目のセカイに『逸般人』なんて書かれた変人だとしても、ぜーったい勝てません。
皆さんが力を合わせても、この町にいるロアの力を集結させても勝てないくらい、それだけ強い敵なんです。
それこそ、皆さんを守る為に単独で挑む、なんて愚かな選択をとってしまうくらいに」

俺が挑むことになるロアはそんな凄い存在なのか……っていうか、あの、理亜さん。さりげなく、俺のことディスってません?
しかし、『終わらない(エンドレス)千夜一夜(シェラザード)』と呼ばれる、どんな都市伝説でも対抗できるはずの『主人公』が恐れる存在かぁ。
……二つほど、思い浮かんだんだが……それは流石にないな。
絶対、違うな。うん。頼むから絶対に当たらないでくれ。もし、当たったら俺は戦わないぞ、絶対だぞ!
などと、思うが俺が絶対、絶対言うとロクな目に遭わないわけで。

「い、一体なんなの? 理亜ちゃんくらい凄い『主人公』がそんなに恐れる敵って。えっと、都市伝説なんだよね?」

「はい。それは世界中で信じられたほどの、恐怖の都市伝説______」

その名を口にするのも恐ろしいとばかりに、理亜は間をとって、そして、言うのを躊躇うかのように視線を落とす。

「そ、それってなんなの?」

尋ねる音央の声も震えていた。ロアである彼女は、もしかしたら何かを察したのかもしれない。
世界中で噂されるには、世界中の人間がそれを半信半疑で語り合わないといけない。
それくらい有名な、誰でも知っているレベルの噂話______『世界』が危険になってしまうような噂話。
それは……。

「はい、その最悪のロアは、かつて1999年7月に、多くのロアやハーフロアが挑み、戦い、多大な犠牲を払って、絶望的な戦争の果てになんとか封じることの出来た存在」

1999年、7月。
それは、子供でも知っているほど有名な『予言』。
俺が子供の頃流行っていた、『世界』をも巻き込む大騒動を起こした『逸話』。



「『ノストラダムス(アンゴルモア・)の大予言(プロフィット)』です」 
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