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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS戦術解説
  高高度迎撃と高空からの攻撃

——MSやMAを用いた、高高度からの対地攻撃と高高度迎撃——

 今回はMSやMAによる高高度からの対地攻撃と、高い上昇能力を持つ起動兵器による高高度目標への攻撃について解説する。空の戦いが航空機によって支配されていた時代、航空からの対地攻撃は爆撃機などによって行われていた。また、これを迎撃できる存在も迎撃戦闘機を中心とした航空機が主であった。対空ミサイルや対空砲も迎撃に用いられたが、機動性や射程、命中精度などの問題で、高高度迎撃は航空機の独壇場であった。このように高高度からの攻撃は、高高度迎撃を有する戦闘機を持たない組織にとって、対抗手段のない攻撃方法だったのである。

 この傾向は、MSが戦力化された一年戦争でも大きな変化を見せておらず、航空からの対地攻撃は爆撃機デプ・ロッグやガウ級攻撃空母など、高高度飛行能力に秀でた航空機によって行われていた。また、これを迎撃できる戦闘機もコア・ブースターやTINコッドなど、ごく少数であり、低高度迎撃能力しか持たないMSは有効な迎撃手段とはならなかったのである。ミノフスキー粒子の登場は、MSを生み出した一方、索敵装置や誘導兵器を弱体化させ、高高度を飛行する航空機に一種の絶対性を与えることとなった。また、迎撃にMSに匹敵するほどの重火力が必要となる航空目標がなく、MSに航空機級の飛行能力を付与する技術が未完成だったことも、旧世紀と変わらない航空戦闘が行われた理由と考えられる。

 このように高高度迎撃機は高高度爆撃機への対抗策として誕生したが、MSの場合は高高度迎撃機的な側面を持つ機体が最初に開発された。その中でも特徴的な機体として、専用ブースターによって高い上昇能力を発揮した可変MA、ORX-005(ギャプラン)が知られている。ギャプランは専用ブースターを使用することで、短時間で高高度まで上昇し、ブースターを切り離した後は降下しながらの戦闘が可能であった。このような機体が必要となった背景には、大気圏に再突入する艦艇やバリュートによる降下を行うMSへの対抗策としてだけでなく、衛星軌道上の目標への攻撃能力が求められたことがあったと考えられる。これらの目標に対し、航空機では戦闘力が不足していたため、可変機を中心に高高度迎撃能力が付与されたと推測される。これに対し、航空から対地攻撃を行う高高度爆撃機的なMSやMAは、大陸弾道弾に匹敵する機動性を持つ、試作MAアプサラス以外には殆ど知られていない。ミノフスキー粒子の影響で航空からの精密攻撃が困難であったほか、そのような用途にMSやMAを使う理由が無かったことも、開発が行われなかった理由と思われる。唯一の例外としてZMT-S29(ザンネック)が知られている。ザンネックは専用サブ・フライト・システムであるザンネック・ベースを用いた対地攻撃で高い戦果を挙げた。しかし、試験的な運用という側面が強かったため、ザンネック以降、対地攻撃を目的とした起動兵器が開発されることは無かった。


——高高度からの対地攻撃——

 高高度からの対地攻撃を目的とするMSやMAは、宇宙から大気圏へと再突入して攻撃を行うタイプが多く、これが高高度爆撃機との違いとなっている。対空兵器や迎撃機の攻撃が届かない高高度からの攻撃、もしくは対応できない速度で突入するため、阻止が極めて困難である。

①大気圏上層への侵入

 敵に対し優位な攻撃位置につくため、宇宙から大気圏上層に突入する。機体によっては地上から視認できる高度まで降下するが、基本的には対空砲火が届かない高度を維持する。

②地上への攻撃

 対空砲火が届かない高度、もしくは発見されない最低高度を維持した後、長距離ビーム方などで対地攻撃を行う。高高度のため照準は正確でない場合が多いが、第一撃目は奇襲になりやすい。

③離脱

 高高度からの攻撃とはいえ、長時間の滞空は迎撃される可能性が高いため、攻撃終了後は戦域を離脱する。直接大気圏外へと上昇する場合と、大気圏内を飛行後、離脱する場合があるようだ。


——高高度目標への迎撃——

 高高度の飛行目標、または大気圏に再突入してくるMS、艦艇などを高空で迎撃する。大推力の可変機や増加ブースターを装備した機体、推力対重力比に優れる第五世代MSなどが可能な方法である。タイミングによっては、大気圏突入作業直後の目標を攻撃できるという利点も持つ。

①目標確認

 哨戒部隊や監視衛星などの情報により、大気圏に再突入あるいは高高度侵入を試みるターゲットを察知。目標はマッハ10以上の高速で移動することもあるため、情報には高い精度が求められる。

②出撃と上昇

 目標の予測コース(位置)に向かって出撃。目標は航空機では戦闘力を発揮しにくいほどの高高度にいる場合も多いため、ブースター等を用いた急速上昇が必要となる。

③攻撃と離脱

 目標を補足後、攻撃を行う。迎撃機はビーム兵器を持つ場合がほとんどなので、命中させれば撃破出来る可能性が高い。急速接近後に攻撃を行うため、一撃離脱に近い攻撃になる。



補足事項

——高高度からの対地攻撃の実例——

 大出力・超射程の火器と、宇宙と大気圏上層部を往来可能な大推力推進装置が必要となるため、高空対地攻撃が可能な起動兵器は数えるほどしかない。そのため、起動兵器による高高度からの対地攻撃が行われた例は少ない。

■U.C.0079 アプサラスⅡシミュレート

 実戦ではなく、アプサラスⅡのデータから地球連邦軍が行ったシミュレーション。大陸間弾道弾に似た軌道で大気圏に再突入したアプサラスは、軌道艦隊と防空火網を突破し、ジャブロー上空に到達。この直後、メガ粒子砲の一撃でジャブロー本部を破壊させた。

■U.C.0153.06,08 ラゲーン空襲

 宇宙への転換準備のためにリガ・ミリティアが集結していたラゲーンに対し、宇宙から大気圏上層に直接降下したベスパのザンネックが高空対地攻撃を仕掛けた。ザンネックはMSの迎撃を受けたが、ラゲーンに数発の長距離ビームを打ち込むと宇宙へと撤退した。


——高高度への迎撃の実例——

 可変機が本格的に投入されたグリプス戦役期頃から機動兵器による高高度目標に対する迎撃が行われるようになった。偵察衛星など、衛星軌道上に置かれたものや上昇中のシャトルなど、様々な機体が目標となった。

■U.C.0087,05,22 ケネディ空港追撃戦

 エゥーゴ将兵を乗せて打ち上げられたシャトルを可変MA、NRX-044(アッシマー)が追撃、更にそのアッシマーを二段階ロケットのように連結したエゥーゴのMS2機が追撃すると言う二重の迎撃戦。アッシマーの対シャトル攻撃は追尾してきたエゥーゴ機に阻止されている。

■U.C.0153,06,08 ラゲーン空襲迎撃

 ザンネックによるラゲーン基地空襲時、リガ・ミリティアのMS部隊も迎撃に出撃、MSによる高空対地攻撃と高空迎撃が同時に行われた例として知られる。リガ・ミリティアのMS部隊は書道に遅れたが、ザンネックの展開する高度まで上昇後接近戦を仕掛け、撤退させている。 
 

 
後書き
次回 人間による起動兵器との戦闘法 
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