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人面痩

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2部分:第二章


第二章

「敦君に。私の脚」
「脚だけ?」
「脚だけじゃないわ」
 甘えて言った。
「身体全部」
「それじゃあさ」
 無論これは陽子の狙いだったが敦もその気になってきた。
「これから」
 陽子の身体に手を添えてきた。その肩を掴んできた。
「ええ、いいわよ」
 彼が何をしたいのかよくわかっている。にこりと微笑んで言った。
「だから。来て」
「うん」
 ゲームをそのままに二人はその場で抱き合った。そのまま敦が上になって倒れ込む。それから暫くの間二人で同じ時間を過ごしたのであった。
 それが終わった時にはもう深夜になっていた。二人は裸のまま一息ついていた。
「もう遅いね」
「そうね」
 陽子は敦の言葉に頷いた。二人共かなり汗をかいていた。
「どうする?もう寝る?」
「その前に御風呂は入らない?」
「御風呂?」
「それで汗を流してね。寝ましょう」
「そうだね。それじゃあ」
「敦君が先に入って」
「いいの?」
「うん、私少し落ち着きたいから」
 缶ビールを手に取って答える。
「後でいいわ」
「わかったよ、それじゃあ」
「ええ」
 敦が先に風呂場に向かった。二人のいるアパートは風呂場もトイレもある。ユニットではない。アパートといっても結構整っているものである。
 風呂場からシャワーの音がする。暫くしてそれも止み敦が髪の毛を拭きながら部屋に戻って来た。派手な柄のトランクス一枚であった。
「次、陽子ちゃんの番だよ」
「わかったわ」
 互いのことを君付け、ちゃん付けで呼んでいる。愛称だった。歳下でもそうして愛称で呼ばれることに抵抗がなかった。その方が恋人だと実感出来たからである。
 陽子は残ったビールを飲み干すと風呂場に入った。そしてシャワーを浴び頭と身体を洗いはじめた。情事でかいた汗が落ち、身体が清められていく。彼女は上機嫌で身体を洗っていた。
「明日はドライブね」
 もう明日のことに想いを巡らせていた。
「それでレストランに行ってカラオケ行って」
 考えるだけで楽しみになってきた。その時だった。
『見て』
 不意に声が聞こえてきた。
「!?」
 それに気付いてシャワーを止める。そして耳を澄ませる。
 だが何も聞こえなかった。気のせいだと思った。
「気のせいね」
 そう思ってシャワーをまた開いた。汗を洗い落として身体と髪を拭く。それからコバルトブルーのブラとショーツを着ける。そのまま部屋に戻ると敦がまた飲んでいた。トランクス姿のまま胡坐をかいて飲んでいた。
「寝るんじゃなかったの?」
 くすりと笑って恋人に言う。
「これ飲んでから」
 彼はそう答えながらビールを飲んでいた。
「寝るよ。まだあるしね」
「結構買ったからね」
 見ればテーブルの上にはまだ幾つか缶を開けていないビール缶が幾つかあった。敦も陽子も酒は好きだ。だから結構買ったのだ。
「じゃあまだ飲むの?」
「うん、飲むよ」
 彼はそれに答えた。
「まだ飲めるしね」
「じゃあ私も」
 彼女もそれに付き合うことにした。
「今日は飲みましょう」
「そうだね。二人でね」
「ええ」
 互いに下着姿のまま飲みはじめた。あの声はもう聞こえなかった。結局気のせいだと結論を出して楽しく飲みはじめた。飲み終えた二人が起きたのは翌日の朝だった。ダブルベッドに二人で寝ていた。二人共下着姿のままである。
 起きてパンとミルクの簡単な昼食を済ませるとまずは歯を磨いて顔を洗った。昨日の酒は残ってはいなかった。
「それでドライブ何処に行くの?」
 陽子は着替え終えてテーブルの上に置いた鏡の前に座って化粧をしていた。リップを塗っている。紅いルージュであった。
 服はやはりミニスカートであった。ラフな黒いジーンズのものだ。今度は素足を出している。上は赤い半袖のブラウスだ。首にはネックレスをして自然にそちらに目がいくようにしてある。やはり見せる格好であった。
「山にでも行く?」
「山?」
「それとも海か。どっちがいい?」
「山や海より街がいいわ」
 陽子はリップを塗った後でこう言った。
「街!?」
「ええ、軽くショッピングしてレストランで食べて」
「レストランって言ってもあれだろ、いつものファミレス」
「わかってないわね、ファミレスだからいいのよ」
 陽子は敦に言い返した。彼はもう準備を整え彼女の横でゲームをしていた。昨日二人でやっていた格闘ゲームだ。今度は一人でプレイしていた。
「色々なものが食べられるから」
「味も安定してるしね」
「そういうこと。それからカラオケ行って」
「それだけ?」
「それだけって?」
「いや、それだけだと時間が結構余るからさ、今まだ八時だし」
「ええ」
「時間かなりあるよ。他には何処か行かないの?」
 ゲームをしながら尋ねてくる。
「他にはって言われても」
 陽子は少し困った顔になった。
「今は。別に買いたいものもないし」
 服もバッグも化粧品も。今欲しいものはもう買っていた。この前二人で買いに行ったのだ。
「本もDVDもね」
「買いたいものはあるって?」
「ええ、だから」
「じゃあ、プールにでも行く?」
「プール!?」
「ほら、新しい水着買ったじゃない」
 相変わらずゲームをしながら言う。
「だったらさ、行こうよ」
「この辺りにプールなんてあったかしら」
「あるよ、スポーツジムにね」
「へえ」
「それでさ、そこで泳がないか?」
「いいわね」
 その申し出ににこりと笑って応える。
 
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