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真田十勇士

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巻ノ六 根津甚八その四

「幸村殿だけではないぞ」
「周りの者達もですか」
「見れば相当な腕前」
「だからですか」
「ここは迂闊には」
「うむ、手を出すな」
 実際にだった、水樹は男達に行くなと告げた。
「さもないとやられるのは御主達じゃ」
「ですか、では」
「ここはですな」
「あえて手出しをせず」
「様子を見ますか」
「それに徳川と真田が戦になるとまだ決まった訳ではない」
 今この時点で、というのだ。
「そのこともあるからな」
「はい、わかりました」
「我等はこのまま」
「探りに向かいます」
「次に向かう場所に入り」
「そうせよ、わしもそうする」
 水樹は前を見て歩きつつ男達に言った。
「それではな」
「はい、それでは」
「ここで一旦お別れしましょう」
「それではまたお会いしましょう」
「ではな、わしはこれより尾張から伊勢に向かう」
 この国にというのだ。
「あの国を調べて来る」
「それでは」
 男達は水樹に応えてそしてだった、影の様に消えてだった。水樹は一人道を進み岐阜を後にしたのだった。
 幸村達は水樹の動きを知らなかった、むしろそれよりもだった。
 根津甚八のいる道場に向かった、すると目的の場所のすぐ近くまで来たところで騒ぎが起こっていた。その騒ぎを見ると。
 柄の悪い男達がいた、ならず者達はそれぞれ派手なそして如何にも柄の悪い者達が着ている様な服を着てだった。
 そしてだ、囲んでいる男達に言っていた。
「前はよくもやってくれたな」
「今日は借りを返しに来たぜ」
「折角楽しく飲んでたのにな」
「叩きのめしやがって」
「今日はそうはいかないからな」
「覚悟しやがれ」
「何を言うか、あれは御主達が悪いのではないか」
 男達は十人程いた、誰もが手に得物を持っている。だが。
 囲まれている男は平然としていた、その手には何も持っていない。
 質素な色の上着と袴、そして草履という格好でだ、、中肉中背で身体は痩せて引き締まっていてだ。顔は面長で細面だ。髷は総髪を束ねたものだ。目は細く鋭いがだ。
 確かな光を放っている、その彼がだ。
 何も手に持たずだ、男達にこう返した。
「娘達が嫌がっているのに無理に誘おうとしてな」
「うるせえ、そんなの手前に関係あるか」
「関係ねえのにしゃしゃり出やがって」
「それでよくもやってくれたな」
「そのことは忘れないぜ」
「だから思い知らせてやるぜ」
「全く、難儀な者達だ」
 男はならず者達の言葉を聞いて冷静に呟いた。
「一度懲らしめてもわからんか」
「安心しな、叩きのめすだけだ」
「別に殺しはしねえよ」
「ちょっと痛い目を見てもらうだけだからな」
「数を頼もうともだ」
 男は凄む男達にまた言った。
「わしは倒せぬがな」
「たった一人でかよ」
「俺達全員相手にしてもそう言えるってのか」
「前は三人だったが今は十人だぜ」
「十人を一人で相手に出来るってのかよ」
「馬鹿言ってんじゃねえぞ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 男に襲いかかろうとする、だが。
 ここでだ、清海が前に出ようとした。 
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