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真田十勇士

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巻ノ六 根津甚八その三

「ではやはり」
「いや、拙者の名は水樹十蔵と申す」
 男は鋭く細い目を持つ顔で笑って言った。
「根津甚八殿ではござらん」
「左様でござるか」
「しかし根津殿を探しておられるとか」
「はい」
 その通りだとだ、幸村はその水樹という者に答えた。
「実は今人を探しておりまして」
「見たところ家臣をですな」
「おわかりか」
「勘で」
 水樹は笑って幸村に答えた。
「そう思いましたが」
「はい、家臣に相応しい人材を探しています」
「だから根津殿と会われ」
「若し根津殿がよいと言われるなら」
 その時はというのだ。
「家臣になって頂きたいと思っています」
「そうですか、しかし」
「しかしとは」
「先程根津殿の道場の方にならず者が多く向かいました」
 水樹は幸村にこのことを話した。
「若しやと思いまするが」
「その根津殿の道場に」
「ならず者が行っているかも知れませぬな」
「殿、では」
「すぐに道場の方に向かいましょうぞ」
 水樹の話を聞いてだ、穴山達は幸村にすぐに言った。
「ならず者達が道場を荒らせば大変です」
「すぐにならず者達を止めに行きましょう」
「根津殿の腕が我等と同じ程度なら問題ないと思いますが」
「どちらにしてもならず者は放ってはおけませぬ」
「そうじゃな、ではすぐに行こう」
 幸村もこう答えた、そしてだった。
 あらためてだ、水樹にこう言ったのだった。
「はじめてお会いしましたが」
「これでお別れですな」
「すぐに道場の方に向かいます」
 こう水樹に言ったのだった。
「その様に」
「それでは」 
 幸村は水樹に一礼してだった、穴山達を連れてすぐに道場の方に向かった。水樹はその幸村達を見送ると踵を返した。
 そしてだ、一人歩き人気のない道に入ると。
 周りに影の様に男達が来てだ、口々に言った。
「あれが、ですな」
「真田幸村殿ですな」
「真田家のご次男の方ですな」
「うむ、まだ若いが」
 水樹は前を進みつつ男達に言った。
「相当な強さじゃな、剣もな」
「氷剣殿と同じだけと」
「そう仰いますか」
「双刀殿、雷獣殿と並ぶ伊賀きっての剣の使い手である氷剣殿と」
「互角と」
「うむ、忍術も出来る」 
 水樹は男達にこのことも話した。
「それも相当じゃ」
「忍術までとは」
「では、ですか」
「まさかと思いますが」
「半蔵様とも」
「有り得るな、まさかとは思うがな」 
 水樹は鋭い目のまま答えた。
「あの方の域に至るやもな」
「では今のうちに何とかしますか」
「真田家との戦になった時強敵になります」
「ここで我等が闇討をして」
「若しくは一服盛りますか」
「いや、それが出来る相手ではない」
 水樹はこう言って周りの者達を止めた。 
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