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獣皮パーカー

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第三章

「覚悟して行くからな」
「寒さにはだな」
「それでこの寒さに対抗出来る服だからな」
 その時に着る服はというのだ、こう話してだった。
 そしてだった、ミヒャエルはアスカイネンと共にだった。その場所に行くことになった。そこはアラスカでも北のだ、まさに北極だった。
 少し遠く見れば北極海も見える、ミヒャエルはその氷と海を見つつだった。彼はこんなことを言ったのだった。
「イッカクいるか?」
「見付けたら凄いぞ」
「滅多にいない生きものだからか」
「ああ、まあ他の生きものはいるさ」
 そうした生きものはというのだ。
「いるけれどな」
「ホッキョクグマとかセイウチとかか」
「そういうのはいるさ、あとホッキョクギツネな」
「あの銀色の毛の狐か」
「今の季節はそうだよ」
 ホッキョクギツネの毛色は銀色だというのだ。
「その狐見られるかもな」
「是非見たいな」
 ミヒャエルは海の方を見つつ述べた。
「他の生きものもな」
「案外自然好きなんだな」
「生物は好きだからな」 
 それでというのだ、
「実際会いたいな」
「そうか」
「ホッキョクギツネにセイウチにな」
「後はアザラシか」
「それもいいな、ペンギンは」
 ここでだ、ミヒャエルは言ってから気付いた。
「南極か」
「ああ、その鳥はいないからな」
「そうだったな」
「カイギュウはいるかもな」
「ステラーカイギュウか」
「たまに見たって話が出て来るからな」
 アスカイネンはこんなことも言ったのだった。
「運がよかったら見られるかもな」
「それだけで一生分の運を使いそうだな」
「かもな、まだいればいいな」
「本当にな」
 そうしたことを話しながらだった、二人は目的地に進んでいた。二人共身なりは完全装備だ。靴も帽子も内側に毛のあるかなり暖かいものだ。
 その服についてもだ、ミヒャエルは言った。
「ここまで着ないとな」
「ここは辛いな」
「ああ、本当にな」
 実際にというのだ。
「アラスカの中でも特に寒いな」
「そうだな、けれどな」
「俺達がこれから行く場所はか」
「人がいるからな」
「イヌイットの人達か」
 ここでだ、ミヒャエルはまた言った。
「ここにずっといる人達だな」
「そうさ、あの人達のところだよ」
「最近はあの人達もかなり近代化してるんだろ?」
「近代化っていうか現代化か」
 アスカイネンはこうミヒャエルに答えた。
「電気もガスも水道も通っていてネットもしていてな」
「インターネットも接続されてるんだな」
「ああ、あの人達の村もな」
「そうなんだな」
「ずっと氷の家に住んでると思ってたか?」
「いや、流石にそれはな」
 そこまではだ、ミヒャエルもだ。 
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