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獣皮パーカー

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第二章

「アラスカだからな」
「あんたここに来て三年か」
「もうそれ位だな」
「慣れたか?この寒さに」
「あまりな」
 これがアスカイネンの返事だった。
「俺はフィンランド系だけれどな」
「フィンランドはここと同じだけ寒いだろ」
「フィンランド系でも生まれはカルフォルニアなんだよ」
 だからだというのだ。
「アラスカは堪えるな」
「カルフォルニアか、いいな」
「最高だぜ、魚介類も美味くてチャイナタウンも賑わってて和食も食えてな」
「ワシントンでソウルフードもいいがな」
「アフリカ系のかい」
「これでもアフリカ系の連れも多いんだよ」
 ワシントンはアフリカ系が多い、それでだ。
「同期にもいるしな」
「そのアフリカ系の同期は今何処にいるんだい?」
「マイアミで水着の美女に囲まれてるさ」
「へえ、あんたは寒いアラスカでか」
「ああ、そいつはマイアミだよ」 
 アメリカ屈指の観光地でありその場所に赴任しているというのだ。
「フロリダのな」
「アメリカにいるっていっても全然違うな」
「本当にそうだな」
「今度の赴任地はせめてシアトルにして欲しいな」
「あそこも寒いだろ」
「寒いっていってもここよりましだろ」
「だからか」
「ああ、今度はな」
 次の赴任地はというのだ。
「もっと寒さがましなところになりたいな」
「ささやかな願いだな」
「それでも真剣だぜ」
 ミヒャエルにしてはというのだ、そうしたことを話してだった。
 そしてだ、その話の後で。
 アスカイネンはだ、こう言ったのだった。
「今度出張するのは聞いてるな」
「よりによって北極圏にだな」
「ああ、それは聞いてるよな」
「相当に寒いよな」
「ここよりもな」
 さらにというのだ。
「そこは気をつけていろよ」
「凍死しない様にか」
「本気でな」
「ここはやっぱり違うな」
「北極圏だからな」
 とにかくこのことが大きかった。
「用心しないと本当に死ぬぞ」
「じゃあそっちのルーツみたいにいくか?」
 ここでミヒャエルは笑ってだ、アスカイネンに言った。
「フィンランドのな」
「完全防御か」
「それでいくか」
「ああ、確かにな」
「フィンランド式の防寒服でいくか」
「いや、違う」
 そこはというのだ。
「フィンランドじゃない、アメリカだ」
「アメリカ?」
「ああ、我が国の服を着るからな」
「アメリカって何だ」
 かなり懐疑的な顔でだ、ミヒャエルはアスカイネンに言葉を返した。
「アメリカ軍の防寒服でも着るのか?」
「それもいいけれどな」 
「いいけれどっていうのは違うってことか」
「そうだ、別の服だからな」
「それは一体何だ」
「その時にわかる、とにかくな」
 今はというのだ。 
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