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大統領の日常

作者:騎士猫
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本編
  第二十二話 謎の連続

 
前書き
今回早めに投稿できました。ちなみに今回もペルシャールはお休みです。
出来れば次の話で出したいと思っています。

感想もできればお願いします。 

 
西暦2115年 10月 20日
海軍第六艦隊司令官クリッツェ中将


「敵艦隊撤退していきます」
オペレーターがそういうと艦橋が歓声で包まれた。

何とか勝てたな・・・
敵が大部隊で侵攻してきたと報告が来たときにはどうしようかと思ったが、恐らく敵の司令官は貴族だったんだろう。
艦の配置はバラバラ、砲撃や回避などもまともにできていなかった。
敵は7割を失って撤退していった。たいしてこちらの損害は駆逐艦2隻に軽巡洋艦1隻が轟沈し、戦艦と空母が小破したのみ。守備艦隊と機動艦隊も損害軽微と連絡が来ている。
早く港に戻って酒の一杯でも飲みたいものだ。

「全艦集結して警戒態勢を維持し、港まで帰港する」
そう指示を出すと参謀長にこの場を任せて艦橋を出ようとした。その時だった。

「レーダーに反応多数!5時方向、距離27キロ!」

「なんだと!??」
参謀長が叫んだ。
ディベル粒子のせいで発見が遅れたか・・・こんな時でも冷静に対処しなければならない。
「敵か?それとも味方か?」
恐らく敵だろう。友軍が来るにしても後方からというのは妙だ。
「敵です!現在確認できる数でおよそ・・・」


「300隻以上!」


なん・・だと・・?

馬鹿な・・なぜ300もの大艦隊がこんなところに・・・
主力艦隊でさえ1個艦隊で35隻だ。300隻など、尋常な数ではない。
なぜこんなとこに300隻もの艦隊が?
いいや、今は考えている時間はない。
私は全艦に戦闘準備命令して回頭させた。

回頭中にも既に敵は攻撃を開始しており、重巡洋艦ヴォシューレが被弾した。
むろんこちらもただでやられるわけはない。回頭中にも砲撃をして少なからず損害を与えた。ただし敵にとっては微々たるものだが・・・

突然監視員が呼んだ。
「何かあったか?」
大方、敵の数が増えたのだろう。
と、思ったが違った。
「敵艦隊を望遠鏡で確認したのですが、敵の艦がある海軍の艦艇にとてもよく似ているのです」
ある海軍に似ている?貴族の趣味で昔の艦艇を再現でもさせたのだろうか。わが軍にも旧日本海軍の艦艇を再現した。艦艇はあるが・・・

「で、どこの艦艇に似ているというのだ?」
ガルメチアス帝国の領土位置的にアメリカやイタリア、ドイツなどだろうか?

「・・・・旧・・大日本帝国海軍の艦艇です・・中にはイタリア、ドイツの艦艇も混じっています」
どうやら私の予想は当たったようだ。
しかしなぜ旧日本海軍の艦艇が?アメリカではないのか。
わが軍の艦艇を見て向こうも作ったのだろうか。
むろん姿は昔の艦船でもわが軍と同様、装備などは最新のものになっているだろう。
そろそろディベル粒子が効力を発しなくなるな。無駄だろうが・・

「全艦対艦ミサイル発射用意」
「はっ、全艦ハープーンミサイルMk-Ⅱ発射用意」
「ハープーンミサイルMk-Ⅱ1番から10番まで発射用意」
「目標、アルファ1から10」
「発射準備完了」
「全艦対艦ミサイル発射準備完了」
「よし、全艦対艦ミサイル発射」
「発射!」
凄い爆音と煙とともにミサイルが発射された。
敵も恐らく撃ってくるだろうな。
「それと全艦に対ミサイル迎撃準備を」
「はっ、全艦対ミサイル迎撃準備」
「対ミサイル迎撃用意」
「迎撃ミサイル発射用意」
「主砲、対空迎撃弾装填」
「CWS起動」

「着弾まで30秒」
おかしい、普通は既に電子戦やミサイルが始まってもおかしくないはずだが・・・
「着弾まで10秒」
ミサイルはまだ一本も破壊されていない。普通なら喜ぶところだが、一発も迎撃されていないのは妙だ。
ミサイルの回避能力が向上したにしても一発も迎撃されないということはない。
「着弾まで4、3,2,1,0・・着弾」

「対艦ミサイル全弾着弾。敵艦隊の約6割を撃沈」
6割、180隻ほどか。しかしなぜ敵は何も迎撃しなかったのだろうか。

「敵からミサイルは発射されていないか?」
「レーダーには反応ありません」
「目視でも確認できません」
おかしい、向こうもディベル粒子が効力を発しなくなる頃なことぐらいわかるはずだが。

「敵艦隊なおも砲撃しつつ接近してきます」
なんだと?
「馬鹿な!6割もの損害を受けたにもかかわらず撤退しないのか!?」
敵は6割を失っても未だ120隻が健在なのだ。我が艦隊が不利なのは変わらない。物量差でつぶすつもりか。
「全艦、砲撃開始。ただし打撃力のある戦艦や重巡を優先的にねらえ」
「接近するアルファ7,9,10、14にそれぞれ主砲自由撃ち方始め」
それにしても味方への損害が少なすぎる。味方に被害が少ないのは本来喜ばしいことなのだが、あれだけの数で砲撃しているにもかかわらず、命中弾は3割程度、それも連射力のある駆逐艦や軽巡がほとんどだ。戦艦や重巡の砲撃はほとんどあたっていない。やはり何か妙だ。
可能性としては老朽艦を引っ張り出して囮として使っているということも考えられる。
しかしこの可能性はオペレーターの言葉によってなくなった。港に敵が襲来したという報告はないとのことだった。それどころか基地と普通に通信をすることも可能らしい。
いったいどういうことなのだろうか。
考えれば考えるほどわからなくなってくる。
私は考えることをやめて戦闘に集中することにした。

「現在のこちらの損害は?」
私の質問に副官が答えた。
「現在、重巡ベルーチェが中破、ヴォシューレが小破。守備艦隊は駆逐艦1隻が轟沈、軽巡2隻がそれぞれ中破と小破。機動艦隊は護衛艦コンゴウが中破。以上です」
「少ないな・・」
参謀長が呟いた。
「120隻もの艦隊に砲撃されている割には損害が少ないですな」
「考えるのは後にして、今は目前の敵を撃破することに集中しよう」
「了解しました」


・・・・・・・


4時間後、敵艦隊は30隻にまで減っていた。たいしてこちらの損害はあれから駆逐艦と軽巡が1隻ずつ沈み、戦艦クリヴォーネが小破したのみ。

「敵艦隊次々に回頭して撤退していきます」
やっと終わったか・・・
「厳重警戒で味方艦の救助を行い、それが終了次第港に寄港する」
「ふぅ・・・」
司令官席に深く座ってため息をついた。
あれほどの大艦隊と戦ったのだ、疲労度はすでに限界値を超えようとしている。

「閣下、少しお話が」
参謀長が話しかけてきた。彼は空気の読める人間だ。重要な話なのだろう。
「なんだ」
「味方艦の救助作業中に敵の兵士と思われる人が見つかりました」
捕虜か・・・
「すぐに救助して体を温めさせて、部屋に監禁しろ」
「はぁ・・それが・・・」
ん?どうしたのだ?
「なにかあるのか?」
「じつは・その・・・」
もったいぶらないでいったらどうなんだ。
「早く言ってみたまえ」

「・・・女性・・といいますか・・成人していない女の子、それもガルメチアス帝国の服装ではなくどこかドイツ軍のような服装をしているのです・・・」

成人もしていない女の子?それもドイツ軍の服装をしている?今にも頭がパンクしそうだ・・・
なんだって女の子が?たしかガルメチアス帝国では女性兵士は採用していないはずだが・・・。それ以前になぜ女の子が・・・?
ドイツ軍の服装というのも気になるな。港に着いたらあってみるか・・・

それにしてもさっきの大艦隊といい、ドイツ軍の服装をした女性といい、どうなっているんだ・・・?

  
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