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ウイングマン スキャンプラス編

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■2■ 捕獲

1.
「ついでだ、こいつも捕えろ!」
美紅の登場を想定していたわけではなかったが、ヴィムは慌てることはなかった。
それどころかこれはチャンスだとすら考えた。
ウイングマンの仲間を捕まえればウイングマンの秘密を知ることができるかもしれない。
そして、スキャンプラスに命令を下した。
「オッケーオッケー」
仕事が増えても軽いノリは変わらなかった。。
「もちろん、そのつもりですよーっ」
スキャンプラスは美紅の登場を気にも留めていない。
美紅にやられる、なんてことはまったく考えていない。
それだけ腕に覚えがあるのか。
「とりあえずまずこっちの女の子から捕えましょーか」
軽いノリとは裏腹にスキャンプラスは着実に仕事をこなすタイプだった。
まずは最初に当初の予定通り、くるみに狙いを定めた。
両腕がにょろにょろと伸びて、くるみを捕まえようとした。
「きゃあっ!」
くるみが身構えて避けようとしたが間に合わなかった。
しかし、捕まりそうな間一髪のタイミングで閃光が走った。
「うわっ!」
スキャンプラスに向けて美紅がディメンションビームを放ったのだ。
「ちょ、ちょっと、ちょっとー、聞いてないよーっ!」
スキャンプラスはギリギリのところでビームを避けたが、いきなりオロオロし始めた。
美紅は拍子抜けだ。
「え? ちょ、ちょっと……」
いつもならすぐに反撃を始めるプラス怪人のイメージしか持っていなかったので、あからさまに逃げ腰になった相手に逆にどう対応するべきか戸惑ってしまった。。
「オレは戦闘用じゃないんですよーっ! 話が違うじゃないですかーっ!」
スキャンプラスはヴィムに泣きつき始めた。
「確かにお前は戦闘用ではないが、そんな小娘にやられるようなやわな体には作ってないぞ!」
「そんなこと言ったって……」
いきなりもめ始めた相手をよそに、戦わないで済むならと、このタイミングに美紅はくるみの手を引いた。
そして、気づかれないように逃げようとした。
しかし、それでうまくいくほど世の中は甘くはなかった。
「ちょい待ちーっ!」
2人の動きを察したスキャンプラスは両手はロープのように伸ばして後を追いかけた。
そして、右手がくるみの足を掴んだのだ。
「きゃああああああっ!」
スキャンプラスの右手は急に縮み始め、くるみがバランスを崩した。
「もう! 邪魔しないで!」
美紅は急いでその手に向かって再びビームを放った。
ビームが命中すると、熱いものでも掴んだときのようにスキャンプラスは反射的にくるみの足を離した。
「あぶないあぶない!」
くるみは事なきをえたが、恐怖で顔が引きつっていた。
美紅は前に出て、くるみに向かってほほ笑んだ。
「ここは私にまかせてくるみちゃんは早く逃げて!」
美紅は自分より年下だが、何の能力もないくるみが役に立てるとは思えない。
それよりも早く健太の元に行って、応援を頼むべきだと考えた。
「わかった。広野君を呼んでくる!」
そう言うとくるみは走り出した。


「何をしている! お前の能力ならあいつらを動けなくできるだろうが!」
ヴィムの声にスキャンプラスの表情が変わった。
何かを思い出したかのようにポンと手を叩いた。
「オッケーオッケー! オレ様は捕えて調べることが役目でしたね!」
そして、くるみに目がけ、手から円盤が発射した。
円盤は輪っかになると手錠のようになったくるみの足を捕えた。
「きゃっ!」
くるみはつまずいた拍子に声を上げた。
「オッケーオッケー!まずは一人!」
美紅は後方を振り返って人気アイドルの様子を見た。
「くるみちゃん!?」
スキャンプラスはニヤリと不敵な笑みを見せた。
「でも、貴様は人のことを気にしている余裕があるのかな?」
そして美紅に向けてピンクに光るビームを放った。
美紅は咄嗟に飛び上がって避けようとしたが、一瞬遅く、スカートにかすってしまったようだった。
ビームは太もも付近で消滅したが美紅に体に当たった感触もなかったし、当然、痛みはなかった。
スカートがも少しばかり破損したかもしれないが、それは別に大した痛手ではないと、美紅は思っていた。
しかし、違った。
「えっ!?」
スカートが消滅したのだ。
スキャンプラスはビームを当てることでその物質をデータに変換することができる。
美紅のスカートはスキャンプラスによってデータ化されてしまったのだ。
スカートが消えると美紅のパンツは丸出しになってしまった。
上着の裾で多少隠れているとは言え、完全に丸見えだ。
「な、な、何? どういうこと?」
プラス怪人の攻撃に掠ったかもしれないが、決して致命傷ではなかった。
やられた感触さえなかったのだ。しかし、自分のスカートが消えてなくなった。
予想外の事態に自分に何が起きたのか理解できずに、美紅の動きが一瞬止まった。
「小川さん!?」
くるみも驚いた。
振り返ると美紅のスカートがなくなり、パンツ丸出し状態になっているのだ。
何を言えばいいのかわからなくて、思わず名前が口から出た。
その声に美紅は自分の格好がどうなっているのか理解した。
スカートが消えたのは夢でも見間違いでもなく、現実だった。
さすがに中学3年にもなると人前でパンツ丸出しで飛び跳ねるなんてことは恥ずかしくてできない。
「いや~ん、何、これ~」
慌てて下半身を隠そうとすると、飛行もままならない。
手で前を隠せば後ろが丸見え、後ろを隠せば前ががら空きだ。
どうすることもできない。
「フフフ。スキャンプラスは非生物をデータに変換して保存することができるのよ」
恥ずかしそうにスキャンプラスの攻撃から逃げる美紅にヴィムは得意げにそう語った。
「もう、イヤだ~」
美紅は不安定に着地すると、自分の下半身を必死に隠すためにしゃがみこんだ。




2.
健太は自分の前に陣取っている桃子が気になって仕方がなかった。
時計を見るとそろそろくるみが学校に入る頃だ。
くるみとの約束は取材が終わってからだから、今から2時間は後になる。
しかし、桃子は下校時間になっても帰りそうになかった。
「美紅ちゃんはどうしたんですか?」
健太の思惑を桃子が知るはずもなかったが、その質問には健太に動揺した。
「あ、いや……」
別にやましいことをするつもりもないが美紅には黙っていることは確かだった。
嘘は言ってない。ただ、本当のことを言っていないだけなのだ。
「今日は一人で頑張ろうと思ったから……」
どうしたら桃子をまけるか考えていたところで、この鋭い質問。
咄嗟に出たわりにはなかなかの答えだった。
「そうなんですか……」
桃子もなんとなく納得した。
しかし、だからと言って、一人で健太を頑張らせる桃子ではなかった。
先日のバレンタインで健太にチョコを渡すことができたことで、少し、積極的になろうと思っていたところだった。
もちろん、美紅を出し抜きたいとは思ってはいない。
しかし、自分の気持ちをもう少しアピールすることにしたのだ。
「へえ。でも、どうしてなんですか?」
少し前に乗り出してみた。
近い!
今までより桃子の距離が物理的に近くなったような気がして、健太の表情がこわばった。
普段はまったく気にしていないのだが、桃子が一部の男子に人気があるという噂は聞いたことがあったが、確かにその魅力はわかる。この距離には少しドキドキしてしまった。
「え? あ、いや力試しっていうか……」
くるみに会うことを内緒にしていることが美紅に対してとかよりも、桃子に対して済まないような気になってきた。
そして、それが態度にそのまま出てしまって、桃子に不信感を抱かせてしまった。
「リーダー、何か隠してますね?」
健太はその言葉に冷や汗をかいた。



「小川さん……」
くるみはパンツ丸出しにされた美紅のことが心配になった。
特別な能力を持っているとはいえ、自分より年下の、根は普通の女の子なのだ。
それと同時に女の子に破廉恥なことをしたスキャンプラスに対して怒りがわいてきた。
「女の子になんてことするのっ!?」
スキャンプラスとヴィムに向かって思わず声を荒げてしまった。
人影がないとは言ってもここは正真正銘の屋外なのだ。いつ人が通るかもわからない。
そんな場所でいきなりパンツ姿にされたのだ。
それは恥ずかしすぎる。
「それもそうね」
ヴィムはそういって少し笑った。
「確かに女の子にそんな恰好で戦わせるのはかわいそうだわ」
そう言って右手を上げた。
「人目に付くといろいろ困るのはこちらも一緒だしね」
ヴィムの手の動きに合わせて周りが一瞬にして壁にに覆われた。
そして、その壁で天井まで覆われて、美紅たちが1つの建物の中に閉じ込められたような状況となった。
建物の中には人1人入るようなカプセルも何体か姿を現した。
美紅とくるみの目には、そこは研究室のように見えた。
「これなら安心よね」
そう言ってヴィムはニヤリと笑った。
「いや、そういうことを言ってるんじゃないんだけど……」
建物の中だから裸にしていいというわけではない。
くるみはそういう思いでツッコミを入れたのだけれど、ヴィムはまったく耳を貸す様子はなかった。
「いろいろ調べさせてもらうわよ、覚悟しなさい」
ヴィムのそのセリフを合図に、スキャンプラスは美紅にむけてビームを放った。
パンツ丸出しの現状は恥ずかしいが上半身にビームを食らえば、胸までさらけ出してしまうことになる。
そんな恥ずかしい目には遭いたくはない。
顔を赤らめながらも立ち上がって、咄嗟にビームを避けた。
「オッケーオッケー。なかなか機敏じゃないか。だったらこっちを狙うまでだ」
そう言ってスキャンプラスはくるみにビームを放った。
「くるみちゃん、危ない!」
自分が標的になることを予想していなかったくるみは咄嗟に避けてはみたものの、肩にビームが命中した。
痛みはあまりなかったが、衝撃と同時に着ていたダッフルコートが消滅した。
「え? 何?」
ビームに当たれば服が消滅してしまうことは美紅を見てわかっているはずだったが、自分の服が消えたことはやはり衝撃的だった。
「くるみちゃん、逃げて!」
叫ぶ美紅の声も頭には入ってこなかった。
狙われている実感がうまく持てなく、体を思い通りに動かせることができなかった。
ビームに対して思わず手を出てしまって、腕に当ててしまった。
すると今度はシャツが一瞬にして姿を消した。
くるみの上半身を隠しているのはブラジャーだけになった。
「えっ!? イヤ、きゃああっ!」
くるみは尻餅をついた。起き上れない。
さっきまではプラス怪人に対しても強気だったくるみだが、実際に攻撃を受けるとその凄さに思考が停止してしまっていた。
「くるみちゃんっ!?」
このままではくるみはすぐに捕まってしまう。
くるみは多くの人間を魅了できるスーパーアイドルだが、身体的には普通の人間なのだ。
でも、自分は今、ディメンションパワーを使うことができる。
それにいつもは助けてくれる健太がここにはいない。
くるみを守ることができるのは自分しかいないのだ。
今は自分が恥ずかしがっている場合ではないと美紅は戦う決意を決めた。
ジャンプをし、スキャンプラスに跳び蹴りを決めた。
「うわあっ!?」
頭にキックが命中したスキャンプラスは吹っ飛んだ。
そして、壁に叩きつけられた。
「何をやっている、あんな小娘相手にっ!」
ヴィムは声を荒げた。
「す、すみません!」
スキャンプラスは完全に動揺した。
怒られると萎縮してしまうタイプだった。
いきなりビームを放ってみたものの狙いが定まっていない。
美紅は余裕で避けることができた。
「もうあんたなんかにやられないわよっ!」
そう言うとディメンションビームを放った。
スキャンプラスはそれを避けようとしたが動揺はまだ続いていた。
そして、体制を崩して手元が狂ってしまった。
放ったビームはヴィムの方に飛んでいった。
この状況はヴィムにも予想外だった。
まさか自分の方に味方のビームが飛んでくるとは思っていなかった。
咄嗟に避けるが少しばかり出遅れてしまい、肩を掠ってしまった。
ヴィムのブラもスキャンされ、消滅した。
そして、小ぶりなヴィムの胸が露わになった。
「何をやってる!」
ヴィムが叱咤すると、スキャンプラスはさらに動揺をした。
「す、すみません!」
スキャンプラスは速攻でヴィムの前に土下座をして謝った。
ヴィムは胸がはだけていることを気にする様子はまったくなく、隠すこともしない。
「そんなことはどうでもいいから、さっさとあの娘を黙らせろ!」
美紅の方を指差して指示を出した。
「は、はいっ、わかりましたぁっ!」
緊張したからなのかオッケーと軽口を叩くことなく、軍隊に配属された新人のようにビシッ立ち上がってヴィムに敬礼をした。
そして、すぐに美紅に向けてビームを連射した。
「きゃっ」
緊張しているせいか狙いは定まっていなかったが、連射をされると避けるのに精いっぱいだ。
美紅としてはこの光線に当たるわけにはいかない。
さすがにヴィムのように胸を出したまま平然と戦える自信はなかった。
外れたビームは壁に当たっていくが壁が消えることはなかった。
パンツ姿で戦っていることを考えると、壁が消えないこと自体にはホッとしているところもあったが、ここから脱出すればいけない美紅にとっては安心ばかりもしていられなかった。
「こっちの女は私に任せろ」
ヴィムはくるみを指差した。
「あ、ありがとうございますっ!」
スキャンプラスの攻撃を見て、自分も手を動かした方が事態は早く進むと考えたのだ。
もともとスキャンプラスは対戦用ではないのだから戦闘で手こずってしまうことは、現状は仕方がないことだ。それはヴィム自身もわかっていた。
くるみを捕えにかかったヴィムの方に、美紅は一瞬目がいった。
そこに隙ができた。
そのタイミングをスキャンプラスは逃がさなかった。
上司であるヴィムの手を煩わせている現状を打破するためには自分がしっかりしなければいけない。
このチャンスを逃さないため、気を引き締めて集中した。
そして美紅に向けてビームを放った。
美紅もジャンプして避けようとしたが、一瞬反応が遅かった。
狙われた上半身には届かなかったが股間に当たってしまった。
痛みはほとんどなかったが、さすがに渾身の一撃が下半身に直撃したので軽い衝撃が走った。
吹っ飛ばされてしまった。
尻餅のついた美紅のパンツは、すでに消滅していた。
「いや~ん」
慌てて下半身を隠そうとするがコスチュームの裾が短くて隠しきれない。
パンツだけでも恥ずかしかったが、さすがに下半身丸出しで戦うことはできない。
「小川さんっ!?」
思わず声を上げたが、くるみもヴィムに捕えられて動きを封じられていた。
ヴィムは鍛えているだけあって、小柄ながら力強い。
さすがにライエルから幹部を任されているだけはあった。
「くるみちゃん……」
美紅はくるみのことも心配だったが、恥ずかしさが勝っていた。
しゃがみこんだまま、一歩も動けなくまってしまった。
そこをスキャンプラスはつけ込まれた。
もう1発。
ビームは美紅の背中に命中した。
一瞬にして上着は消滅し、ブーツ以外身に着けているものはなくなってしまった。
美紅はしゃがんだまま、さらに身を縮めることしかできなかった。
「広野君……助けて……」



3.
桃子の追及はとどまる事を知らなかった。
「ねえ、リーダー!」
このままとぼけていても桃子は帰らないと健太は考えたので、仕方なく問題ない程度で、答えることにした。
「実は、このあと、人と会うことになっていて……」
その言葉に桃子の表情は驚きに変わった。そして身を乗り出した。
「女の人ですねっ?」
桃子はピンときたのだ。
根拠はまったくなかったが、自信はあった。
「そ、そんなわけないじゃあ……」
口では否定しようとしたが、健太の表情は、それが正解だと言っているようなものだった。
「リーダー、誰と会うんですか?」
健太は答えない。答えるとボロが出てしまうような気がしたからだ。
「わかった! アオイさんですね!」
そう言われるとドキッとした。
事実ではないのにアオイと会うと指摘されたということを一瞬思っただけで、なぜかドキッとしてしまったのだ。
その表情に桃子は正解だと思った。
「違う違う違う! なんでアオイさんと会うのに美紅ちゃんにも内緒にするんだよ!」
なぜか都合よく桃子が誤解してくれたのに、健太も思わず否定してしまった。
それにその否定の仕方も自分で言ってて嘘くさく感じるほどだった。
仕方がない。健太h観念した。
「ピンク、ちょっと来て」
もうくるみももう校内に入っている頃だ。最善の注意を払えば、話しても大丈夫だろう。
ピンクは少し戸惑いながら健太に続いた。
図書室には図書委員やそれほど多くはないが読書や勉強をする生徒が何人かいる。
健太はそれを警戒した。
とりあえず、ヒーローアクション部の部室である美術準備室に案内した。
桃子を先に入れ、辺りに人影がないことを確認すると、健太も後に入った。
「リーダー……」
桃子はちょっとドキドキした。
健太と2人っきりで密室に入るなんて、ないとはわかっていても少しは期待してしまう。
「ピンク、実は今日、この後、会う人ってくるみちゃんなんだ!」
そう言われると一瞬固まった。
「リーダー! くるみちゃんと浮気してるんですか!?」
桃子の声が思いいのほか大きく、健太は慌てた。
「ちょ、ちょっと、そんなワケないじゃん!」
そう言って桃子の口を押えた。
「今日、学校に来るからそのついでに……」
健太としては本当のことを伝えているつもりだが、桃子は納得してくれない。
「だいたい人気アイドルが、こんな町の中学校に来るわけないでしょ!」
「そう言われても……」
桃子に押されて健太がタジタジになっているところに部室の扉ががガンと開いた。
そこには桜瀬りろが慌てた表情で立っていた。
「くるみちゃんが行方不明になっちゃいました!」
健太と桃子は驚きの声を上げた。
「え~っ!?」



健太と桃子とりろの3人は手分けをして、くるみを探すことにした。
「本当にくるみちゃんと会うことになってたんですね!」
アイドルからアプローチがあることに桃子は素直に驚いていた。
「仕事で来たついでなんだけどね」
健太はりろの方を見た。
りろの表情は慌てていたが、桃子は合点がいって大きくうなずいた。

りろは状況を簡単に健太たちに伝えた。
取材の時間になってもくるみが現れない。
くるみのマネージャーの話では2時間も前にはこの街には来ていたのだが、くるみが用事があるというので、マネージャーは別行動をとったという話だ。
取材30分前には学校近くで待ち合わせることになっていたのだが、30分待っても来ないので、もしかしたらと思い、マネージャーだけで学校に来てみたのだという。
ただ、当然学校には来ていないし、連絡をつける方法もない。
ということで行方不明としてりろたちも騒ぎ始めたのだ。
最近、この街では異常気象や不思議な事件も起きているし、りろにはライエルという心当たりもあった。
そこで健太の元にかけつけたのだ。

健太と桃子が上空から探すことになった。
りろも探しに動いた方が効率はいいが、くるみが来ない上にりろまでどこかに行ってしまったら、取材現場はパニックになってしまう。
それを考えれば、りろが探しに動くのは得策ではないと健太が指示を出した。

健太と桃子が階段を上っていくと久美子とすれ違った。
「広野君に森本さん、慌ててるみたいだけど、どうしたの?」
くるみが仲額中に来ることは秘密だった。
しかし、緊急事態だ。
本来なら久美子は最も知らせてはいけない相手だったが、情報を集めることに関しては学校でも最も頼りになる存在だった。
この際、仕方がない。
「布沢さん、秘密にしてほしいんだけど、実は……」
健太は思い切って、久美子にも相談してみることにした。

「ああ、あれはくるみちゃんか!」
人気アイドルがお忍びで学校に来るという話なのに久美子はその話を聞いても驚かなかった。
それどころか、合点がいったかのように手をポンと叩いた。
「え? どういうこと?」
桃子は久美子の言葉に突っ込んだ。
「さっき、小川さんときれいな女性が喫茶店に入るのを見たのよ。どこかで見たことがあるとは思ってたけど、あれ、くるみちゃんだわ!」
健太と桃子は驚いた。
そして、健太は久美子の肩を掴んだ。
「そ、その喫茶店はどこ?」
その切羽詰まった表情に久美子もちょっとだけびっくりしたが、慌てることはなかった。
「たぶん、話が盛り上がったんじゃないかな? 女の子同士だもん、時間を忘れて話し込んだりすることもあるわよ」
桃子もその言葉にうんうんと頷いた。
「そうよね。女の子だもん」
しかし、健太は違った。
「喫茶店はどこ?」
美紅の性格から考えても何かあったとしか思えなかった。
もいくら話が盛り上がったとしても、相手の仕事そっちのけで話をつづけるタイプではない。
「公園近くの喫茶店よ」
久美子はおもしろくなさそうに答えた。
「あ、私、そこ知ってるわ!」
桃子は以前、兄に連れられてそこに行ったことがあった。
ピンときて、慌てて階段を上って屋上に出た。
健太も桃子に続いた。
階段を駆け上がりながら桃子はバッジを付けてウイングガールズにコスチュームチェンジした。
健太は屋上に出てから変身した。
「ピンク! 案内、頼む!」
桃子が飛び、健太は後に続いた。

 
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