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タケミカズチ、抜錨します。

作者:沙羅双樹
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増援艦隊と深海棲艦のどっちだと思いますか?

 
前書き
まずは前書きで謝罪させて頂きます。

前話の後書きで予告していた鎮守府の入港まで話が進みませんでした。すみません。
 

 


【視点:タケミカズチ】



前回までのあらすじ。○○○鎮守府の艦娘(2個艦隊)が深海棲艦(3個艦隊)に襲われている所を発見。某私設武装組織の様に武力介入を開始。

チート航空戦力で深海棲艦を殲滅した後、出生の関係で自分が所属不明艦であることが判明。そして、○○○鎮守府の榛名の提案を受け入れる――というか、むしろこちらからお願いする形で○○○鎮守府に所属させて貰うことになりました。

まぁ、まだ○○○鎮守府にも着いてないし、鎮守府の提督とも会っていないので、厳密には未だに所属不明艦なんだけどね。

で、現在は何をしているかというと、エネルギー残量に余裕のある8小隊24機のムラサメを護衛に着けて、私の艤装に標準装備されている高性能レーダーで慣らし索敵をしながら、○○○鎮守府へと向かっている所だったりします。

ちなみに先の戦闘で発艦させていた残りの16小隊48機は、既に帰投済みで矢に戻っています。一定時間矢に戻すことでエネルギーを補給できるみたいですね。

戦闘海域が赤城さん曰く、○○○鎮守府から通常航行(時速14ノット)で2時間程の距離(約53km)ということもあって、全くの無傷である私は大破してしまっている赤城さんに肩を貸す形で曳航。

同じく大破してしまった雷ちゃんと電ちゃんは損害軽微な夕張さんと球磨ちゃんがおんぶする形で曳航し、移動することなりました。

当然と言えば当然ですが、2個艦隊の平均損傷率が中破ということもあって、航行速度も通常時より遅い時速6ノット。戦闘海域から移動を開始して30分は経っているけど、漸く鎮守府まで残り4/5の距離を過ぎた地点です。


「このままの速度で進めば、あと2時間ほどで皆さんの鎮守府に辿り着けますよね?」
「そうですね、建御雷さん(?)。鎮守府には救援要請も行っていましたから、あと、1時間足らずで増援艦隊と合流できると思いますし、そうなれば他の娘達も曳航して貰えるので、鎮守府にはもう少し早く辿り着けると思いますよ」
「それじゃあ、その増援艦隊と合流できるまでは深海棲艦の出現をしっかり警戒していないと駄目ですね。……ところで今更なんですが、皆さん私の名前を『つ』に濁点の付いた漢字の建御雷で呼んでいませんか?」
「え?違うんですか?」
「私の名前は『す』に濁点の付いたカタカナ読みでタケミカズチです。まぁ、別に漢字読みでもいいんですけど、念の為訂正を―――ッ!電探に反応!進行方向から接近する物体あり!数は……、12!?」
「わ、私達の電探には反応がありませんが……」
「一応、私の艤装に標準装備されている電探は最大索敵半径80kmの高性能機ですから。今は艦娘になってからの初索敵ということもあって、索敵範囲を半径40km圏内の索敵に止めていますが……。
って、そんな説明している場合じゃないです。この航行速度……、時速20ノット以上!?……赤城さん、接近している2個艦隊、要請した増援艦隊と深海棲艦のどっちだと思いますか?」
「……高速航行が可能な艦娘で編成された増援艦隊の可能性は高いと思います。ですが―――」
「深海棲艦の可能性も捨てられない、ですか。ちなみに深海棲艦って、無線傍受とかできるんですか?」
「ヲ級空母を始めとする人型深海棲艦には、そういったことができる個体もいると聞いたことがあるのです」
「だから、海上に出たら深海棲艦を誘き寄せない為にも、緊急時を除けば基本的には無線封鎖することになっている」


私が無線傍受について尋ねると、電ちゃんと響ちゃんが答えてくれた。ってことは、向かって来ている相手が判別できない以上、赤城さん達に無線で確認して貰う訳にもいかない訳か。

もし、相手が深海棲艦で増援を呼ばれた挙句、挟撃なんかされたら私は兎も角、赤城さん達の内の誰かが轟沈しかねない訳だし。

かと言って、偵察型ムラサメを出す訳にもいかない。私は○○○鎮守府所属でない上、赤城さん達以外の○○○鎮守府の艦娘と面識がある訳でも無い。

迂闊に偵察型ムラサメを出して友軍に撃墜なんてされたら、色んな意味で洒落にならない。現実的な意味だと、所属と同時に資材を大量に消費してしまう。

今から航路を変えるという選択肢も、相手が深海棲艦だったとして電探に捕捉されたら意味が無い。友軍だったら無駄に燃料を消費する上、鎮守府が遠のく。

結局の所、護衛に就いていないムラサメ隊を再出撃。艦隊直上で待機と言う選択肢しかない、か。


「赤城さん。今護衛に出している航空戦力も、戦闘となると燃料の残量に不安を覚えます。なので現護衛部隊を帰投させ、待機させていた航空戦力を全機投入する形で護衛部隊を編成したのですがよろしいですか?」
「な、何で私に許可を……?」
「この2個艦隊の総旗艦は赤城さんだと言っていたではありませんか。私はまだ正式に○○○鎮守府への所属が決まった艦娘ではありません。現時点では皆さんに随伴している所属不明艦です。当艦隊の総旗艦に指示を仰ぐのは当然だと思います」
「タケミカズチさん…………。そうですね。では、艦隊総旗艦として命令します。タケミカズチさんは保有する待機中の全航空戦力を艦隊直上に護衛部隊として展開。当艦隊は航路をこのまま変えず、鎮守府へと航行を続けます」
「了解です」


赤城さんの命に従い、私は護衛に回していたムラサメ部隊を帰投させると、待機中だった偵察型を含むムラサメ部隊56機を発艦させ、新たな護衛部隊として展開した。

56機のムラサメ部隊と保有している対空ミサイルを勿体振らずに使えば、深海棲艦が6個艦隊で来ても大破炎上させて、撤退させることくらいはできる、と思いたい。

そして、航路修正することなく航行すること50分後。電探の反応を見る限り、明らかに私達と鉢合わせる様に航行していた2個艦隊が、その姿を目視できる距離に現れた。


「あれは……、金剛さんに比叡さん!それに睦月さんに夕立さん、如月さん、島風さん。川内さん、神通さん。利根さん、築摩さん。二航戦の蒼龍さんと飛龍さんまで!タケミカズチさん、あの娘達は○○○鎮守府の艦娘――増援艦隊です。間違いありません!」
「そうですか。……敵じゃなくて良かった。私は皆さんの使う通信の周波数を知らないので、良かったら増援艦隊の方々に通信して貰えますか?見慣れない航空機と一緒だと、襲われていると勘違いされかねないので」
「それなら私がやります。あの編成だと、金剛お姉様と比叡お姉様が真っ先に先走りそうなので」


電探に反応していたのが友軍ということが分かり一安心した所で、勘違いによる友軍からの攻撃を回避する為、護衛艦隊の通信をお願いすると、霧島さんが通信役を名乗り出てくれた。

霧島さんは私のことも含めて自分達の現状を無事説明できた様で、護衛艦隊から艦載機が発艦することも、対空砲火をされることも無かった。で、護衛艦隊を目視確認してから5分後。私達は護衛艦隊と合流した。


「Oh!榛名、霧島!大丈夫でしたカ!?」
「私もお姉様も、深海棲艦の3個艦隊と遭遇戦になったって聞いて凄く心配したのよ」
「はい。中破はしてしまいましたが、この通り無事です」
「これも、そちらにいらっしゃるタケミカズチさんのお蔭です」


合流するや否や、榛名さんと霧島さんに抱き着く金剛さん。比叡さんは金剛さんの様に2人に抱き着かないけど、2人の無事な姿を見てホッとしている様に見える。こういうの見ると、やっぱり姉妹なんだなって思う。

暁ちゃん達と同じ駆逐艦の睦月ちゃん達も、中破や大破はしているものの暁ちゃん達の無事な姿を見て、無事で良かったと言いながら涙目だったりする。

他の空母艦娘や重巡艦娘、軽巡艦娘の人達は、金剛姉妹や駆逐艦娘の子達の様な態度は取っていないものの、それでも仲間が無事であったことに対して安堵の表情を浮かべながら労いの言葉を掛けていた。

仲間っていうか親友でもそうだけど、何かしらの事件や事故に巻き込まれたって聞いて、無事だという知らせを受けたら安心するし、そういった感情は艦娘も変わらないんだなぁ、と私が考えていると榛名さんと比叡さんに抱き着いていた金剛さんが話し掛けてきた。


「Hi!ユーが榛名達を助けてくれた新しい艦娘ですカ?」
「あっ、はい!元オーブ連合首長国、国防海軍所属。地中海派遣艦隊旗艦を務めていたタケミカズチ級大型機動空母1番艦のタケミカズチです!!直上を飛んでいるのは私の艦載機のMVF‐M11C ムラサメといいます!艦載機共々、よろしくお願いします!!」


……ハッ!艦これの中でも1番好きな艦娘である金剛さんに声を掛けられたこともあって、ついキャラ崩壊しちゃった。変な艦娘だと思われたらどうしよう……。そんなことを考えている私に対して金剛さんは―――


「他の空母艦娘とは元気さが一味違うGirlネ。でも、元気の良さなら私だって負けないネ!金剛型高速戦艦1番艦。英国生まれの帰国子女、金剛デース!」
「同じく2番艦。恋も戦いも負けません!金剛お姉様の妹分、比叡です!!」
「同じく3番艦。榛名、全力で頑張ります!」
「同じく4番艦。新鋭艦相手でも引きません!霧島!」
「「「我ら4人揃って、金剛型四姉妹」」」
「デース!」


………ハッ!ここに来るまでの間に自己紹介は済ませていたのに、榛名さんと霧島さんも自己紹介を始めたから、ついつい呆然としてしまいました。


「……金剛と比叡は分かりますが、ここに来るまでの間に自己紹介を済ませていた榛名と霧島までする必要はあったのでしょうか?」


Oh。私が内心思っていた突っ込みを加賀さんがしてくれました。この突っ込みに対する金剛さん達の返答は?


「分かっていませんネ、加賀。私達四姉妹が一緒に自己紹介するのは、様式美なのデース!」


様式美というものは理解できませんが、ムードメイカーという意味では皆さん素敵な方々だと思います。と、これが私にとってこの世界で2度目の艦娘との出会いなのでした。


 
 

 
後書き
アニメを見ていても思いましたが、金剛型四姉妹は仲がいいですよね。ああいう姉妹を見ているとホッコリしてしまいます。(笑)

次回は鎮守府の話ですね。実戦を経験したことで、タケミカズチの装備等の詳細スペックが更新される予定です。楽しみにしていて下さい。 
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