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タケミカズチ、抜錨します。

作者:沙羅双樹
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私に自沈願望はありませんから

 
前書き
海上で長話とか沈没志願者かと思われるかもしれませんが、一応描写がないだけでムラサメ隊が警戒に当たっていると思って下さい。

あと、今回の話でオリ設定的な説明されていますので、その点もご了承下さい。 

 
【視点:タケミカズチ】



「皆さん、大丈夫ですか?かなり手酷くやられたみたいですが……。もし航行不能な方が居られる場合は遠慮なく言って下さいね。私で良ければ牽引しますので」


深海棲艦の艦隊を殲滅した私は救助に来たという意思表示の為、できる限りの笑顔を浮かべながら助けた艦娘達に声を掛けた。すると―――


「あ、危ない所を助けて頂き、ありがとうございます。私は○○○鎮守府、第一航空戦隊所属。当第一艦隊旗艦を務めている赤城型正規空母1番艦赤城です」
「同じく一航戦所属。第二艦隊旗艦の加賀型正規空母1番艦加賀よ。救援、感謝します」


両艦隊の旗艦である赤城さんと加賀さんが敬礼しながら感謝の言葉を言ってきた。一般人なら絶対に見ることが無い軍人さんの生敬礼です。って、そんなことに感動している場合じゃない。返礼しないと。


「私はオーブ連合首長国、国防海軍所属。地中海派遣艦隊旗艦、タケミカズチ級大型機動空母1番艦タケミカズチと言います」


赤城さん達と同じ様に敬礼しながら、私は種運命におけるタケミカズチの所属を言いました。で、私の所属を聞いた赤木さん達は当然と言えば当然ですが、全員が首を傾げていました。


「オーブ連合首長国、ですか?」
「一体どこの国かしら?雷、知ってる?」
「流石の私も知らないわ、暁。響なら知ってるんじゃない?」
「私も知らない」
「あの、建御雷さん(?)。オーブ連合首長国というのは一体どこにあるのですか?電達は聞いたことが無いのです」
「南太平洋のソロモン諸島にあるヤラファス島、オノゴロ島、アカツキ島、カグヤ島から構成される島嶼国です。先程、○○○鎮守府と仰っていましたが、皆さんは日本の方ですか?」
「はいなのです。電達は日本国海軍の○○○鎮守府に所属する艦娘なのです」
「と言うことは、ここは太平洋ですか?」
「日本近海ではあるけど、太平洋であることは違いないね」


私の質問に答えてくれたのは響だった。まぁ、日本艦船の艦娘と遭遇した時点でアジア圏の海だってことは分かっていたけど、どうせなら出身地であるオノゴロ島近海か、轟沈したクレタ沖で目覚めたかった。まだその方が説明はし易かっただろうし……。


「どうかしたのですか?」
「え?あっ……。電さん、だったかしら?」
「はいなのです」
「私は確か、地中海クレタ島沖で沈没してしまった筈なの。それなのに目が覚めたら人間みたいな姿になっていた上、地中海から遠く離れた太平洋にたった1人で漂っていたから、これは一体どういうことだろうって思って……」
「地中海ってことは、欧州からの帰国子女なの?建御雷さん(?)は見た目もそうだけど、欧州帰りの立派なレディなのね!」
「き、帰国子女?私、別に欧州に留学していた訳じゃなくて、艦隊旗艦として派遣されていただけなんだけど……。それに渡航経験者がレディとは限らないと思うのだけど……」
「帰国子女やレディは置いておいて、建御雷さん(?)はかなり特殊な存在みたいですね。基本的に艦娘は工廠で開発と言う形で誕生するものです。
それ以外の誕生手段は、妖精さんの力で艦船時代に進水式を行った港湾で再誕するか、艦娘の魂を取り込んでいる深海棲艦を撃破し、囚われた魂を解放することで再誕させるという方法しかありません。
建御雷さん(?)が太平洋――日本近海で目覚めた以上、深海棲艦に魂を囚われていた艦娘としか考えられない訳ですが、その場合―――」
「建御雷さん(?)が1人で太平洋を漂っている訳が無いってことね。霧島」
「その通りよ、榛名。だから、建御雷さん(?)の誕生はかなりイレギュラーということになるわ」


……言われて気付いたけど、ゲームの艦これも艦娘をゲットする方法は開発かドロップしかないもんね。進水の件は初耳だけど、それを抜きにしても私の説明では前例のない生まれ方をした異端艦(イレギュラー)にしか聞こえない。しかも――


「それに私達艦娘が生まれてから人類が深海棲艦に対抗できる様になって以降、深海棲艦を撃破した際に誕生した艦娘は元の国籍が何処のものであろうと、その深海棲艦を撃破した艦隊が所属する鎮守府・基地の艦娘になるということが国際規則で定められているわ。
つまり、建御雷さん(?)が再誕した時にその周囲に他の鎮守府・基地の艦隊がいなかった以上、建御雷さん(?)は所属不明艦ということになってしまうのよ」


そうだよね。開発でもドロップでもない生まれ方をして、海上を彷徨ってる艦娘は所属不明艦扱いになるよね。でも、敢えて言わせてもらうわ。種運命序盤のガーティ・ルーと同じ扱いになるなんて、思いもしなかったよ!


「けど、建御雷(?)は艦船時代の記憶があるクマ。えっと―――」
「オーブ連合首長国。国防海軍所属、でしょ?」
「そうクマ。艦船時代の所属に戻れば問題ないんじゃないかクマ?」


確かに球磨の言う通り、この世界にオーブが存在しているなら問題ないかもね。けど―――


「深海棲艦の出現から艦娘が生まれるまで、人類は制海権を奪われていたのですよ。建御雷さん(?)が所属していた国は聞いた話では島国なのでしょう?
その国が無事である保証が何処にありますか?建御雷さん(?)には申し訳ありませんが彼女の艦載機の能力を考えたら、その技術力に危険を感じた深海棲艦が大規模艦隊で襲撃していてもおかしくありません。
私達艦娘の誰1人として彼女の国を知らないのが、奪還されている制海権内の島国ではないという何よりの証拠でもあります。つまり、彼女1人では国に帰すにも帰せないということです」


うん。聞き覚えのない島国である以上、深海棲艦の勢力圏内にある国だと思うよね。下手したら深海棲艦の棲地になっていると思われても仕方ない気がする。

ってことは、私はこれから流浪艦ってことになるのかな?C.E.艦娘浪漫譚 るろうかんタケミカズチが始まりそう。帰る基地(イエ)が無いから、補給とかは海上でボーキサイトを如何にか手に入れないといけなくなっちゃうよ。


「じゃあ、どうするの?このままじゃ建御雷さん(?)、所属不明艦で補給や修理も受けられなくなっちゃうわよ!?」
「恩を仇で返すとは正にこのこと」
「他人事の様に言ってるんじゃないわよ、響!」
「雷。私は事実を口にしただけ。だから、行動の推奨はしてない」
「あ、当たり前なのです!」
「暁さん達、落ち着いて下さい。……あの、建御雷さん(?)。建御雷さん(?)さえ良ければ、榛名達の鎮守府に所属しませんか?
榛名達の鎮守府に所属してしまったら、建御雷さん(?)の国が発見され、所属していた基地の無事が確認されても戻れなくなってしまいます。
ですが、現時点で建御雷さん(?)の国・基地の安否や周辺海域の状態が判明していない以上、所属不明艦認定をされて孤立無援状態で海上を彷徨い続けるよりいいと思います」
「所属不明な以上、補給や修理を鎮守府から受けられなくなるのは当然ですね。でも、私は現時点で既に所属不明艦。そんな私を現場の判断で勝手に受け入れるとか言って問題ないの?」
「榛名達は建御雷さん(?)に命を救われた御恩があります。そのことを話せば、提督や他の艦娘の方達も理解してくれます。榛名は提督や仲間の皆さんのことを信じていますから」
「………そう。なら、あなた達の鎮守府に身を置かせて貰おうかな」


流石の私もたった1人、孤立無援で海を漂い続ける度胸は無い。海上での資材遭遇率も高くはないだろうし、そう考えたら確実に資材を補給できる所に所属するのが良いに決まってる。

そんな訳で、割とあっさりと彼女達の鎮守府に所属すると決めた訳なんだけど、流石にこの場で返答が来るとは思っていなかったのか、彼女達は全員が驚いた顔をしていた。


「ほ、本当にいいんですか?別にすぐに決める必要はないですよ?元々所属されていた国・基地に戻られるなら止めはしませんし、その場合は今回限りということになりますが、恩返しに榛名達の鎮守府で資材を補給して貰えるよう提督を説得することもできるんですが……」
「流石にたった1人でいつ深海棲艦に遭遇するか分からない海を彷徨い続ける気はありません。私に自沈願望はありませんから。それに艦船時代の私に乗艦していた総司令官が最低な人だったので、オーブにもあまり未練がありませんし」


この世界にオーブが存在していたとして総司令官がカガリなら良いけど、ユウナやウナトなら最低だ。あんな奴らの命令で沈没とかしたくない。


「ど、どんな司令官さんだったのですか?」
「戦場で艦隊としての面子ばかり気にして、殉職した将兵も数でしか知ろうとしない。そして、艦隊の受けた損害の責任を同乗していた艦長に押し付けようとする。そんな軍人としての矜持すら持たないクズだったわね」
「そ、それは何て言うか……」
「建御雷さん(?)も色々と苦労したんだね」
「総司令官以外の将兵は至ってまともだったんだけどね。でも、軍人は自分より上の階級の人間の命令には逆らえないから……。私の最期は艦長だけが残った状態で敵艦へ特攻。その途中で艦橋を破壊されて爆沈だったかな?
心中相手としては選びたくないけど、正直な話艦長より総司令官があの時死んでれば良かったと思ってる。……って、暗い話になっちゃったね」


種運命でのユウナの行動とタケミカズチの最期を説明すると、場の空気がお通夜状態になってしまった。どうにか空気を換えないと!


「取り敢えず、私に望郷の念とかは特に無いから、その点は気にしないで。というか、むしろ私の方からお願いします。あなた達の鎮守府に入れて下さい」


そう言いながら私はこれから仲間となってくれるであろう彼女達に頭を下げた。
 
 

 
後書き
今回、高雄と愛宕以外のほぼ全員のセリフが出ていたのですが、誰が誰だか分ったでしょうか?その点が不安だったりします。

あと、その内深海棲艦でボズゴロフ級潜水空母とか出したいとか思い始めてます。そうなると、他の艦娘達も近代化ならぬC.E.化改修をしなくては……なんてね(笑)

これで一応、タケミカズチの所属不明艦化を回避した訳なんですが、どっちにせよ種運命での最期を見るとオーブが存在していたとしてもオーブに帰るとは思えませんね。(笑)
(タケミカズチが本当に艦娘になっていたら、ユウナ――というかセイラン家は憎悪の対象でしょうし。)

次回は増援艦隊を登場させて、鎮守府への入港まで書きたいと思います。それではまた次回お会いしましょう。 
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