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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-6 圏内事件
  Story6-7 第二の圏内殺人

第3者side


場所・日付は変わり総勢6人、ヨルコが借りている宿屋に集まった。

聖竜連合の守備隊リーダーであるシュミットとはコンタクトをとることが出来た。

彼は、その黄金林檎の名を出しただけで過剰反応を示した。

そして、今回の事件の詳細を伝えた。それだけで直ぐに駆けつけてきたのだ。

そしてシュミットを含めた5人でヨルコが泊まっている宿屋へと向かったのだ。




シュミットは、対面するなり既に落ち着かない様子だった。

何度も何度もせわしなく脚を揺する。

そして、重い口を開いた。

「グリムロックの武器でカインズが殺されたと言うのは本当なのか?」

「本当よ」

ヨルコは、表情を極限にまで眩めてそう言う。



シュミットはその返答を聞いて驚愕する。

そして、慌てて立ち上がり

「何で!何でアイツが今更殺されるんだ!

アイツが、アイツが犯人なのか!?
アイツが指輪を!?殺したのもアイツなのか!?
グリムロックは、売却に反対した者を全員殺す気なのか!?

オレやお前も狙われているのか!?」

半狂乱になりかねないように聞く。

反対していたメンバーの1人。

そして反対していた者の死。

戸惑うのは違いない。



ヨルコが続ける。

「グリムロックさんに槍を作ってもらった他のメンバーの仕業かも知れないし、もしかしたら……」

ヨルコは次第に表情が強張って行く。


「グリセルダさん自身の復讐、なのかもしれない」

「!!!」

中でも過剰に反応を見せたのはシュミットだった。

このデジタルの世界に死者の念が彷徨う。

心情的にはありえない事だ。

だが、それを全て完全に否定できるだけの根拠は無いのも事実だ。


そして、ヨルコの続いての言葉。

「だって、圏内で人を殺すなんて事、幽霊でもない限り不可能だわ」

そして、ゆっくりと目を見開かせながら立ち上がる。

「私、私、夕べ寝ないで考えた。

結局、結局のところ、グリセルダさんの事を殺したのはメンバー全員でもあるのよ!

あの指輪がドロップした時に投票なんかしないでグリセルダさんの指示に従っていればよかったんだわ!!!」

まるで何かに取り憑かれたようにヨルコは絶叫していた。

昨日の彼女から考えたら普通ではない。


シャオンたち四人もそのヨルコの絶叫を聞いて戸惑いを隠せない。


「あの時、グリムロックさんだけが、グリセルダさんに従うと言っていました。だから、あの人には私達に復讐する権利があるんです」

ヨルコはあくまでそう信じているようだった。

だが、シュミットは

「そんな、半年だぞ?半年もたって今更!!
何で今更そんな事があるんだ!
お前は良いのか!?ヨルコ!こんなわけのわからない方法で殺されて良いのか!?」

ヨルコに摑みかかりそうになるシュミットをシャオンが手を摑んで抑える。

「落ち着けって!取り乱しても答えは見つからない!」

キリトがシュミットの方を見た時、その全員の表情が凍り付いていることに気が付いた。

「ッ!!」

直ぐに何か異変があったと感じヨルコの方を見る。

その時、ヨルコの体はぐらりとゆれた。

その背中にはダガーが突き刺さっていた。

そして、宿屋の窓から外に。

「まずい!!」

「ヨルコさん!!」

キリト、シャオンが駆け出すが、時は既に遅かった。

伸ばした手は空を切り、地面に落下したヨルコは硝子片となって砕け散った。

あの時と同じように、その体に刺さっていたダガーだけを残して。



「ッッあ、ああ……」

キリトは砕け散ったヨルコを見て唖然とする。

この場所は宿。

システム的に保護された空間で、目の前でPKが行われた事実を突きつけられて動揺を隠せない様だ。

「キリト!」

シャオンはキリトの肩をつかむ。

そして視線を前にした。

この町並みの屋根の上。

普通ならばそんな所に立つ事など誰もしないところに誰かがいた。

「絶対逃がすか………!

アスナ、フローラ、キリト!後は頼んだ!」

シャオンはその人物を見る。


そして間髪入れず飛び出した。

「まって!駄目だよ!!」

フローラは、突然の事だったので反応が遅れてしまっていた。

それはアスナも同様だ。

だが、怯え震えているシュミットをこのまま1人にしておくことなんか出来るはずも無い。


キリトもそう考え、皆シャオンの言葉に従いその場に留まった。










屋根から屋根へと跳躍するシャオン。

普段は使わないSEEDも、こんな状況では四の五の言ってられないため、使っている。

敏捷度が上がれば超人的な動きが出来るようになる。

現実的ではありえない光景が更に続いていた。

「待ってろよ!」

その人物はフーデットローブを羽織っている。

頭にまですっぽり多いかぶっているその姿はまるで死神のようだった。


シャオンは走りながら剣に手をかける。



だが……

「!」

シャオンは見た。

その人物が手に持っている鮮やかな青いクリスタルの存在を。

「くそっ!!」

思わず舌打ちをする。

「ッ!!」

シャオンは、反対の手でピックを取り出し、ローブの人物に向かってスナップスローの要領で放った。


その針は矢の様に向かっていったが……


ガキンガキン!!


本体に当たる寸前で、壁に阻まれた。紫色のその障壁はシステム的保護のものだ。

その人物が持っていた青いクリスタルは転移結晶。

そして、街中の鐘の音が響き渡るとほぼ同時に、青白い光に包まれこの場から消え去っていった。












その場に残されたシャオン。
まだ、信じられないと言った様子だった。


シャオンは無言のまま、拾ったピックを再び叩きつけるようにあの人物がいた場所に放つ。

それは先ほどと同じように紫色の障壁に阻まれた。

間違いなくシステム的保護に守られた反応。

そしてそのエフェクト後には≪Immoral object≫と表示されていた。

「一体何がどうなれば……」


――あのダガーの一撃はそんなに強力なものじゃないはずだ。

例え圏外で受けたとしても、HPを全て消滅させるほどの力はないだろう。

それを一撃……


「あのダガーも確認しとかないといけないか」



ヨルコさんの身を護る。

そう思って、彼女を宿にまで護衛した。

あの場所にいれば絶対安全という先入観が今回の事件を呼び起してしまったのだ。









そして、宿に戻ったときの事。

「もう!!無茶しすぎ!!」

フローラがそう迎えてくれた。

「それで?どうだったの?」

アスナはそう聞く。

「駄目だ。逃げられた」

シャオンはそう言い壁に拳を当てる。

「シャオン君から……」

フローラは少し驚いているようだった。

攻略組の全プレイヤー中でも1,2を争うプレイヤーだと思っている。
中でも敏捷度はずば抜けて高いはずだ。

アスナが所属しているギルドの団長、数々の伝説、異名を築き上げたヒースクリフを含めたとしてもだ。

「転移結晶を使われた。仕方ないといえばそうなんだけど」

ヨルコさんが殺されてしまったのだ。

しかも、5人の目の前で。

その場の誰もが無念感を拭えない。



いや1人は違った。

シュミットはただただ、怯えていた。

「あっ、あのローブはグリセルダのものだ……」

ガタガタ震えた口でそう答える。

「あれは、あれは、グリセルダの幽霊だ!オレ達全員に復讐しに来たんだ!!」

シュミットは、怯えていた。恐怖に体が支配されたかのように最後は笑っていた。

「で、でも!そんなっ!幽霊なんて!だって、もう、この世界では何千人もの人が亡くなってしまったんだよ?皆、皆無念だったはずだよ。そう思うでしょ!?」

フローラは皆を見ながら、そしてシュミットに否定するように言う。

「あんたらは、彼女を知らないだろ。グリセルダは、すげえ強くて、いつも毅然としてて、不正や横着にはとんでもなく厳しかった。アスナさん以上だよ。

だから、もし、罠にはめて殺した奴がいたとしたら、グリセルダは決して許さない。たとえ、幽霊になってでも裁きに来るだろうさ」



その巨体のシュミットの怯えようを見て、そのたがが外れたような笑いを聞いて、その言葉を聞いてしまえばフローラは何もいえない。


そこまで、強い強い念があるのなら、あるいは……

その時だ。


シュミットの目の前にダガーが転がり落ちる。

それを見たシュミットは、まるでスイッチが切れたかのように笑いを止めた。

光る鋸歯状の刃を数秒間凝視し……

「ひっ!!」

弾かれたように上体を仰け反らせた。

放り投げたのはキリトだった。

「それが彼女を死に追いやった武器だ。実在するプログラム。オブジェクトだ。このSAOに書き込まれたものだ。
霊的なものが存在するとして、人を殺すのにオブジェクト武器を使うのか?霊的なものでも何でもないと思うが?持って帰って調べて見ると良い」

「い、いらない!そんなものッ!!」

シュミットは全力でキリトの言葉を拒否する。

そしてシュミットは、再び怯え震え出した。

「絶対にこの事件には絶対に何らかのシステム的ロジックが存在するはずだ。幽霊なんかじゃない。絶対にな」

シャオンは壁に拳を当てたままの体勢でそう呟く。


――完全に油断をしていた。

圏内だから安全?宿屋だから安全?なぜ安易にそう信じてしまったんだ?半年前のことをもう忘れたのか?

『笑う棺桶』の連中とやりあった時に、『タイタンズハンド』の犠牲になったギルドの人たちを見た時に俺は決めていたはずだろ……!

「絶対に暴く。これ以上好き勝手にさせるかよ」








「攻略組プレイヤーとして情けないが、オレは暫くフィールドに出る気になれない。Boss攻略パーティは俺抜きで編成してくれ。それと……」

かつての剛毅さがすっかり抜け落ちた虚ろな表情でギルド聖竜連合のリーダー職を務めるランス使いは呟いた。

「これから、オレをDDAの本部にまで送ってくれ。頼む」

この時、この男を臆病だと思う事など誰も出来なかった。

心底怯えた巨漢を中央に挟み、57層の宿屋から転移門経由で56層の聖竜本部にまで送っていった。

シュミットも、心なしか少しだけ安心でき、そして道中も落ち着くことが出来た様だった。















Story6-7 END 
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