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オズのムシノスケ

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第十幕その七

「ふと思いついてね」
「それでご両親に言ったら」
「物凄く頭ごなしに言われてね」
「当たり前だ、危ないじゃないか」
「そんなこと止めるのは当然よ」
 これがご両親の言葉でした。
「全く、御前ときたら」
「無茶なことを言うから」
「それでだよ」
「私達も強く言ったのよ」
「だからそう言われるのが嫌なの」
 エイミーはご両親に言い返しました、右の前足を手の様に動かして。
「私だって子供じゃないから」
「何を言うんだ、子供じゃないか」
「そうよ、私達のね」
「親として子供に言うのは当然だ」
「それの何処が悪いのよ」
「いや、ちょっと待ってくれるかな」
 ここで双方の間にです、教授が入りました。
 そうしてです、こう言うのでした。
「どちらも言いたいことがわかったよ」
「というと?」
「これは認識の違いだね」
 教授は自分の学識のことから話すのでした。
「子供という言葉についてのね」
「それどういうことなの?」
 エイミーがその教授に尋ねます。
「一体」
「うん、まず君は自分を子供じゃないと主張するね」
「ええ、そうよ」
 エイミーは胸を張ってそのうえで教授に答えました。
「こんなに大きいのよ、何処が子供なのよ」
「そう、確かに君はもう子供じゃないよ」
「ほら、教授もこう言ってくれるじゃない」
 エイミーは教授の言葉を受けてご両親に返します。
「私はもう子供じゃないのよ」
「いや、子供だよ」
 けれどここでなのでした、こうも言う教授でした。
「君は子供だよ」
「今子供じゃないって言ったじゃない」
「年齢的にはそうだよ」
「年齢が?」
「そう、もう成人したと言っていいかな」
 エイミーの歳はというのです。
「外見から見る限りはね」
「もう結婚して赤ちゃんも出来るわよ」
「そうだね、けれど」
「けれどなの」
「君は子供なんだよ」
 またエイミーに言うのでした。
「ご両親のね」
「お父さんとお母さんの」
「そう、君は子供なんだ」
 二匹のというのです。
「そうなるんだよ」
「そうだ、御前はわし等の娘だ」
「可愛い子供なのよ」
 ご両親はここでエイミーに強く言います。
「ずっと育ててきたんだ」
「誰がどう言おうと私達の娘よ」
「そう、君はご両親の子供なんだよ」
「ええと、どういうことなの?」
「つまり年齢ではもう子供ではないが」
 教授は少し勿体ぶった調子になってエイミー達にお話しました。
「間柄では子供になるのだよ」
「お父さんとお母さんの」
「その通りだよ」
「だからお父さんとお母さんは私を子供っていうのね」
「二人の間のね」
「それで子供として」
「君に言ったんだよ」
 そうだったというのです。
「君のことを案じてね」
「そうだったの」
「そうだよ。これでわかったかな」
「ええ、何とか」
 エイミーは大体七割位わかっている感じで教授に答えました。完全ではないですがある程度わかったというお顔で。
「そういうことなのね」
「そう、だからね」
 こうエイミーにお話するのでした。 
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