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オズのムシノスケ

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第十幕その八

「君は子供じゃないと思っていても」
「お父さんとお母さんが違ったのは」
「そういうことだったの」
「そうだったのね」
「そして」
 教授は今度はです、ご両親の方にお顔を向けました。 
 そのえで、です。今度はご両親に言うのでした。
「お二方にとって娘さんはずっと子供ですな」
「はい、私達の」
「紛れもなく」
「そうですな、可愛いお子さんです」
 このことを言うのでした。
「しかし娘さんはもうです」
「成人した」
「そうなったのですか」
「左様です」
 年齢的にはそうだというのです。
「大人に頭ごなしに言ってはです」
「よくない」
「そういうことですね」
「そうです、ですから」
「ここはですか」
「絶対に」
「そうしたことをしてはいけないです」
 また言う教授でした。
「穏やかに。諭すべきだったのです」
「そうでしたか」
「そうあるべきでしたか」
「左様です」
 こう教授はお話するのでした。
「それがいいのです」
「そうでしたか」
「そうすべきだったのですか」
「そうなのです、子供ではあってもです」
 家族ではあってもです。
「もう大人ですから」
「だからですか」
「もう」
「そうです、強く言うべきではなかったのです」
「それで、ですか。わし等が強く言ったので」
「この娘は」
「怒ってだったのよ」
 抗議めいた口調で、です。エイミーはご両親に言いました。
「私も家出したの」
「そうだったの」
「それで」
「そうよ、わかってくれたかしら」
「そうか、事情はな」
「わかったわ」
 ご両親も納得しました。ですが。
 ここで、です。ふとです。
 教授はエイミーにです、こうも言いました。
「けれどね君はね」
「私は?」
「旅に出るにしても」
 それでもというのです。
「一匹だけで行くのはよくないね」
「危ないからっていうのね」
「そう、君は確かに大きいけれど」
 それでもだというのです。
「草食動物だからね」
「肉食動物に狙われるから」
「一匹で旅をすると危ないよ」
 こうお話するのでした。
「だから私もそれは賛成出来ないよ」
「やっぱりそうなのね」
「うん、それに君は今の暮らしに不満があるのかな」
「そう言われると」
「不満はないね」
「ええ、この森はとてもいい場所よ」
 はっきりと答えたエイミーでした。
「過ごしやすくて食べるものも美味しいものが一杯あって」
「満足しているね」
「ええ、とてもね」
 それでだというのです。 
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