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オズのムシノスケ

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第十幕その六

「オズの国の名士の人達がこんなに集まって」
「凄いじゃない」
「しかも最近オズの国によく来る子供達も」
「いるわね」
「やっぱり僕達も有名みたいだね」
「そうね」
 恵梨香はカルロスに答えました。
「ドロシーさん達の仰る通り」
「有名になってるんだ」
「私の言った通りでしょ」
 ドロシーは微笑んで五人に答えます。
「貴方達も有名になってるのよ」
「そうなんですね」
「そうよ、このことは覚えておいてね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ドロシーはヘラジカさん達にです、こう言いました。
「それでだけれど」
「はい、エイミーのことですね」
「この娘のことですよね」
「そうなの、この娘ご両親と喧嘩したのよね」
「そうなんですよ」
「実は」
 ここで二匹のヘラジカさんが前に出て来てです、ドロシーに答えてくれました。
「この娘色々と我儘で」
「前からあれこれ勝手なこと言いますけれど」
「それで今度もです」
「外に出たいなんて言ったんですよ」
「そうよ、この森から出てね」
 当のエイミーも言います、それの何処が悪いのよという顔で。
「オズの国のあちこちを旅したいのよ」
「それでなの」
「そのうえで」
「そう、そうしてね」
 それでというのです。
「私は旅を楽しみたいのよ」
「そんなことをしたら危ないぞ」
「この森を出て旅をするなんて」
「カリダもいて他にも怖い猛獣がいるのに」
「エイミーだけで森の外に出て旅をするなんて」
「怖いもの知らずもいいところよ」
「そんなこと言っても何にもならないわよ」
 これがエイミーの意見でした。
「森の中にいたら確かに安全よ」
「そうだ、この森は広いしな」
「怖い猛獣もいないじゃない」
「わし等はこの森で楽しく暮らせているだろ」
「それの何処が不満なのよ」
「だから。森の外に出て旅をしたいの」
 あくまでこう言うエイミーでした。
「オズの国のあちこちをね」
「御前一匹でか」
「そうするっていうの」
「そう、それで森を出たのよ」
 つまり家出したというのです。
「そうして一休みで草原に寝ていたら」
「私達に会ったのね」
「そういうことよ」
 エイミーはドロシーにも答えました。
「そうだったのよ」
「事情はわかったよ。けれどね」
「けれど?」
「どうして貴女私達と会った後あらためて旅に出なかったの」
「それはドロシーさん達が皆で私に強く、そしてね」
 そのうえでだというのです。
「優しく言ってくれたでしょ」
「だからっていうの」
「そう、それでなのよ」
「それじゃあひょっとして」
 ここでドロシーは気付いたことがあります、そのことはといいますと。
 ふとです、こう言ったのでした。
「貴女お父さん達に頭ごなしに言われたのね」
「その通りよ」
「だからなのね」
「そう、確かに私は旅に出るつもりだったけれど」
「実はそんなにその気持ちは強くなかったのね」
「ちょっと考えて言ってみたのよ」
 実はそれだけだったというのです。 
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