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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第72話 異常なる殺人鬼

 
前書き
序盤から残酷描写があります。 

 
「へへ」
かつて共に過ごした男が俺達の目の前で愉快そうに笑う。
その手には先程までクロト・シャルガが所持していた聖剣が握られていた。
「………ガ……ベ…ベル……」
地面に倒れ付していたクロト・シャルガが起き上がろうとしていた。
「お、まだ生きてたかクロト」
「……そいつを…よこせ…ベル……」
どうやらクロト・シャルガはまだやる気の様であった。
「ほいほい」
ドスッ!
「ガァァァァッ!?!?」
『!?』
ベルの奴が返事をするなり、いきなり手に持つ聖剣をクロト・シャルガに突き刺した。
「……ベル!…テメェ!……何のマネだぁ!!……」
「よこせって言うから渡したんだが?」
ベルは何の詫びれも無く、疑問に首を傾げる。
「ざけんなぁぁぁぁぁッ!!!!」
激昂したクロト・シャルガは自身の出血などお構いなしに自身に突き刺されている聖剣を引き抜き、ベルに斬りかかる。
ズバッ!
「ギャァァァァァァッ!?!?!?」
だが斬られたのはクロト・シャルガの聖剣を持つ腕だった。
ベルの手には一本の白銀のナイフが握られていた。
そしてベルは醜悪な笑みを浮かべ…。
ズバッ!
「アァァァァァァッ!?!?!?」
クロト・シャルガのもう片方の腕を斬り飛ばす。
「ヒヒ♪」
ベルは心底楽しそうに、真紅の瞳を輝かせ、恍惚な表情をし、先程よりも醜悪な笑みを浮かべていた。
「ひ、ひぃ…」
ドサ。
「へ?」
クロト・シャルガが恐怖のあまり後ずさろうとすると突然後ろに倒れ込み、素っ頓狂な声を上げる。
そして倒れた原因は…。
「ア、ア、アア、アアァァァァァァァァッ!?!?!?!?」
原因を見た奴はこの世の物とは思えない絶叫を上げる。
倒れた原因は奴の両足がベルによって切り離されていたからだ。
「俺の腕がッ!?俺の足がッ!?俺の!?俺のォォォ!!」
「ヒヒ♪イヒヒ♪キヒヒヒ♪」
目の前でベルの行われる残虐な光景に俺は圧倒され動けなくなり、ユウナは目を逸らす。
ベルは器用にナイフを手で弄びながらクロト・シャルガに近付く。
「ヒッ!?来るな!?来るなァァァ!!」
……四肢を失った奴にベルから逃げる術は無かった。
ベルは奴の髪を掴み、軽々と持ち上げる。
「……や、止めろぉ……止めてくれぇ……」
クロト・シャルガは涙と恐怖で顔を汚しながら必死に命乞いをする。
「イヒ♪」
ベルは一笑いすると、クロト・シャルガを上空へ放り投げ、ナイフを構える。
「アアァァァァァァァァッ!!!!!」
クロト・シャルガは死への恐怖から絶叫を上げながらベルの下へと自由落下を始める。
「キヒヒ♪」
そして奴に向かってナイフを振るう。
ガキィン!
「ん?」
が、ナイフは横合いからの刀によって止められる。
行ったのはもちろんユウナであった。
「……もう止めてベル君…」
ユウナは涙を流しながら懇願する。
「ハハ、優しいなユウちゃんは♪でも残念♪」
パチン。
そう言うなり、ベルは指を鳴らす。
「え?」
ブシャァァァッ!
「え?」
ユウナは素っ頓狂な声を上げ、音がした方を見る。
「ッ!?」
それを見たユウナは驚愕の表情を浮かべる。
「なぁ!?」
そこではクロト・シャルガが原型を留めない程無惨に切り裂かれていた。
(ベルの奴、一体何をした!?)
とどめをさそうとしていた一撃はユウナが確実に防いだはず!
「ヒヒヒ♪驚いてる、驚いてる♪」
ベルは驚愕している俺達を見て愉快そう笑う。
「ユウ!!こっちに来い!!」
「ッ!」
俺の叫びを聞き、ユウは慌てながら俺の横まで跳んでくる。
不可解な事がある以上、奴の近くにいるのは危険だ!
「イヒ♪焦っちゃって♪」
「……ベル君…」
「ん?」
「……どうしてこんな事を?…」
「こんな事って?」
「……どうして……どうして!!あんなに優しかったベル君が平然と人を殺す様なッ!!」
「………」
ユウは未だに目の前のベルの事を信じられない様だった。
「何があったの!何がベル君をそんな風に…それにサラちゃんはどうしたの!」
「……キヒ…」
「え?」
「キヒヒヒヒ!イヒヒヒヒ!アハハハハ!!」
「……ベル…君?」
「……な…」
ベルが突然高笑いしだした。
「ユウちゃん♪面白い事を教えてやるよ♪」
「え?」
「俺はユウちゃん達と初めて会った頃から…いや、当の昔からこんな人殺し大好きな性格だったんだよ♪」
「……嘘…嘘!!」
「嘘じゃないんだな、これが♪あ、ちなみにサラとはあの後いろいろあって生き別れっちまったんだよ。ま、野垂れ死んでるって事は無いだろうが」
「………」
「あ、もう一つ面白い事を教えてやるよ♪」
「え?」
「何?」
「ユウちゃん達は俺とサラが親に捨てられた孤児だと思ってたみたいだけど、全然的外れだぜ♪」
「え?」
「なんだと?」
「俺はユウちゃん達みたいに親に虐待されてた訳じゃねえし、それどころか普通に愛して育ててくれてたんだぜ♪」
『ッ!?』
ベルの告げた事実に俺達は驚愕する。
「じゃあどうして…」
「路頭に迷っていたかって?キヒ、単純さ…俺が殺したんだからな♪」
『ッ!?』
「イヒヒ♪」
俺達はもう何が何だか分からず、言葉を失ってしまう。
「………何言ってるの…何を言ってるの?……」
「……ユウちゃん、俺がどう言う時に一番殺人衝動が湧くか知ってるかい?」
「え?」
「……それはな…心を許した相手を前にした時なんだよ♪」
「ッ!?」
「……まさか、ノモア神父を殺したのも…」
「ああ。ノモア神父は俺の事を愛をもって育ててくれた。だから俺は心を許した。だから殺した♪キヒヒヒ♪」
「………狂ってる!……」
「ヒヒ♪良い表情してんなぁ♪」
俺達の知ってるベルと目の前にいるベルは別人だと思っていたが、むしろ同一人物だったと言う訳か。
「……ユウ…構えろ」
「……うん」
「……少しでも躊躇すれば死ぬぞ」
「……分かってる」
ユウはもう迷いは無さそうであった。
俺ははなっから迷いは無い。
「行くぞ!」
俺達は左右に別れて駆け出す。
「キヒ、来た来た♪」
奴が何か妙な力を持ってるのは確実。
それを使われる前に倒す!
俺は二丁拳銃で奴を撃ちながら接近する。
銃弾はナイフで弾かれるなり、避けられるなりされるが、別に問題は無い。
奴のモデル・ナイフの十字具(クロス)によるナイフ術や身軽さは俺達がよく知ってる。
だが、妙な事をさせない様に封じる事はできる。
「ハァッ!」
ユウが二刀流で斬り掛かるが、銃弾に対処しながらベルもナイフの二刀流で対処していた。
(だが、これで!)
奴に完全に隙が生じ、俺は右手の銃を十字架に戻し拳を放つ。
ユウの対処に手を割いている状態、背後からの攻撃、十字具(クロス)よりも突発力のある十字義肢(クロス・リム)による一撃、俺は勝利を確信していた。
「キヒ♪」
シュバババッ!
『ッ!?』
そんな俺の十字義肢(クロス・リム)の右腕が突然、何かによって意図も容易く引き裂かれた。
ドガ!
「きゃ!?」
ドス!ドス!
「ぐっ!?」
その光景に仰天していた俺達をベルはユウを蹴り飛ばし、手に持つナイフを投擲し、俺の生身の左足と左肩を貫く。
「キヒヒヒ♪」
「……ぐっ…」
……何だ今のは!…。
ほぼ不可視の何かが十字義肢(クロス・リム)の右腕を切り裂いたのは間違いなかった。
だが、ベルが何かをしたそぶりは無かった。
(一体!?)
「ヒヒ♪昔のよしみだ、サービスで教えてやるよ♪」
そう言い、ベルは何かを取り出した。
「これな~んだ♪」
それは漆黒の色をした十字架だった。
「………漆黒の十字架……まさか!…黒十字具(ブラック・クロス)……」
「せぇか~い♪パチパチパチパチ♪」
黒十字具(ブラック・クロス)、名に十字具(クロス)とついてはいるが、実質全くの別物である。
特筆すべきはその特殊な能力だ。
通常の十字具(クロス)は量産性と使い手を選ばない事を重点した物なら、黒十字具(ブラック・クロス)はそれらを捨てる代わりに強力な力を所有者に与える様に作られた物だ。
……それをこいつが…。
「正解したご褒美にこいつの事を教えてやるよ♪こいつは黒十字具(ブラック・クロス)モデル・マジック、タイプ・スラッシュの斬花、能力は触れた場所から好きなタイミングで斬撃を発生させる。クロトを殺ったのもこいつさ♪」
……触れた場所だと?
いつあの場所に触れた?
「別に手で触れた場所じゃなくても良いんだぜ♪例えば足で踏みつけた所とか♪まあ、仕掛けれる数に限りはあるんだけどな」
つまり、この辺の至る所に奴が仕掛けた罠があると言う事かよ。
「さてさて、俺はどこに仕掛けたでしょうか?」
「……どこに仕掛けてようが、タイミングはお前の自由なんだろう?…」
「まな♪」
これじゃあ、不用意に動けねえ…。
……クロト・シャルガみたいに姿を消せれば別なんだろうが…。
「キヒヒ、さて、まずはお前を…」
ドス!
「ッ!?」
突然、後ろから何かがベルの胸を貫いた。
「あれ?」
「………」
ベルの後ろにはユウがいて、手に持つ刀で背中から胸を貫いていた。
「………終わりだよ、ベル君……」
ユウは刀を抜きながら、静かにそう告げる。
ユウの言う通り、ユウの刀は完全にベルの胸…心臓の部分を貫いていた。
いかに生命力の高い血の悪魔の子供達(ブラット・チルドレン)とは言え、結局はそれだけだ。
つまり、普通の人同様致命傷を負えば死ぬ。
「……………キヒ……」
「え?」
「………キヒヒ…」
「な…にぃ…」
「キヒヒヒヒヒ♪」
心臓を刺し貫かれ致命傷を負ったはずのベルが何事も無かったかの様に高笑いしだす。
「惜しかったねユウちゃん♪」
そう言い、着ている神父服の胸の部分を手で引き裂く。
「な!?」
「そんな!?」
そこには多量の血が付いてはいるが全くの無傷の肌があるのだった。
確かに血の悪魔の子供達(ブラット・チルドレン)には高い治癒力がある。
だが、それにしたって傷が治るのが早すぎるぞ!
「ヒヒ、これの事も出血大サービスで教えてやるよ♪あ、本当に出血してるな」
終始ふざけながらもベルは述べる。
「俺達血の悪魔の子供達(ブラット・チルドレン)には血の力(ブラット・アビリティ)って言う普通の人間とは比べ物にならない身体能力が高い体質をもって持ってるよな」
「……それがどうした?…」
「もし、それとは別の異質な能力があるとしたらどうだ?」
「何?」
「俺にはそれが有るんだよ」
「何だと!?」
「俺な二、三年くらい前にちょっとヘマして崖から転落した事があったんだよ。血の悪魔の子供達(ブラット・チルドレン)と言えども即死するような高さからな。そして当然、地面に激突した。でも何故か俺は生きてたんだよ。気になった俺はそれを確認するためにわざわざ登ってもう一回落ちたわけよ。で、分かったんだけどよ、どうも俺は普通の奴よりも治癒力が異様に高かったんだよ。つまり、死にそうな傷を負っても死ぬ前に傷が治るってくらい治るスピードがはえぇって訳だ」
なんだよそれ…。
「それから俺が殺した同族の連中の中に脚力が異様に高い奴がいたり、中には本当に異質な能力を持った奴がいたんだよ。その事から個人によって違う能力を得るみたいなんだよ。んでもって俺のは超高速自己治癒って訳だ。イレギュラーな血の力(ブラット・アビリティ)、血の異常力(イレギュラー・ブラット)って俺は呼んでるな」
血の異常力(イレギュラー・ブラット)、血の悪魔の子供達(ブラット・チルドレン)にそんな力が…。
「二人にもその内手に入るかもな…この場から生きて帰れればだけどな♪」
『ッ!』
その言葉を聞き、俺とユウは警戒を強めて構える。
ズバァァァッ!
『ッ!?』
だがその瞬間、俺とユウは足下から発生した斬撃でいたる所を斬られた。
「まあ、そんなに慌てんなって♪」
そう言い、俺達を制止する様に手のひらをかざす。
「……クソッ!…」
「……ッ!…」
俺とユウはその手のひらをにらむ。
そこで俺は不意に嫌な予感がした。
「せぇか~い♪パチパチパチパチ♪」
……………。
「能力は触れた場所から好きなタイミングで斬撃を発生させる」
……………。
「パチパチパチパチ♪」
……………。
(ッ!?マズイッ!?)
「避けろッ!!ユウゥゥゥゥッ!!!!」
「お・そ・い♪」
俺が叫び終わると同時にベルの手のひらから斬撃が発生し、俺とユウの身を切り裂いた。 
 

 
後書き
次回、戦闘狂堕天使さんの登場です。 
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