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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第71話 血の悪魔の子供達

 
前書き
今回は前回出てきた血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)の説明会とクロト戦の決着と言う感じです。  

 
血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)。
悪魔と呼ばれてはいるけど、悪魔ではなく、人間…ただし、普通の人間じゃない。
人間には魔法、神器(セイクリッド・ギア)等の異能の力を持つ者がいるが、どれも後天的に身に付けたり、与えられた物。
でも、血の悪魔と呼ばれる子供達には生まれつき、血の悪魔と呼ばれる由縁となった異常な身体能力と生命力、そして、それらの能力を使う際に真紅に染まる瞳を持っていた。
そして何故かその様な子供達は異能の存在とは縁の無い、ごく普通の一般家庭との間に生まれる事が多かった。
当然、そんな異能の存在を知らない人達は異常な体質を持つ子供達に恐怖し、蔑み、忌み嫌い、迫害する。
……たとえそれが自身の子供であってもだ…。
……私とライ君もこの能力を忌み嫌った両親に捨てられた…。
いや、たとえ異能の存在を知る人達でさえも、この体質を持つ子供達に恐怖の念を抱いていた。
それほどまでにこの体質は異常なまでに高いのだった。
まずは身体能力。
腕力や脚力はもちろん、五感も異様に発達していた。
その高さは、一般の成人男性を軽く凌駕し、襲い掛かってきた猛獣でさえも撃退するほどであった。
そして、その生命力の高さ。
軽傷なら一瞬、重傷もそう時間も掛からず完治する。
免疫力も高く、病気とはほぼ無縁と言ってもよく、毒物にも強かった。
そんな子供達をとあるカルト集団の間で悪魔に呪われた子供と布教し始め、真紅の色の瞳から血を連想し、血の悪魔と呼び始めた。
そして、一部の人達はその様な子供達を総称して、血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)と呼び始めた。


「シシシ♪話には聞いちゃいたが、教会の戦士(エクソシスト)になった奴がいるなんてな♪」
私とライ君が血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)である事に彼は一瞬驚くが、すぐに嬉々とした様子になる。
「あ、元が付くけどベルもか」
「ッ!?」
(……ベル君…)
……ライ君と一緒に同じ孤児院で過ごした、家族だと思っていた男の子…。
(……あの士騎明日夏さんって人が言っていた事が本当なら……今回の事件には彼も…)
「……ナ……ユ…ナ……ユウナッ!!」
「え!?え?」
ベル君の事で思慮していた私をライ君の呼び掛けが現実に戻す。
「戦闘中だぞ!ぼんやりしてんじゃねえ!!」
「ご、ごめん!」
ライ君に叱咤され、慌て目の前いるクロト・シャルガに視線を戻す。
「……ベルの事を考えてたのか?」
「……………うん」
「アイツはもう敵だ!アイツがやったことを忘れた訳じゃないだろ?」
「……………」
忘れるはずがない。
あの時の事は鮮明に覚えている。
「とりあえず今は目の前の敵に集中しろ!」
そう言い、ライ君はクロト・シャルガに銃口を向ける。
「…………うん、そうだね」
私は思考を切り替え、刀を構える。
「シシシ♪話し合いは終了か?なら…」
彼は槍を数回回転させて構える。
「いっちょ、バケモノ退治としゃれこむか♪」
『……………』
彼が発したとある単語を聞き、私とライ君は俯いてしまう。
「バケモノめ!!」
「寄るなバケモノ!」
「あっち行けバケモノ!」
……バケモノ…。
まだ幼い私やライ君、沢山の血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)と呼ばれた子供達がおそらく一番多く聞いたであろう単語…。
正直、私にとってはトラウマにすらなっている単語であった。
「ん、何だ?バケモノって言われたのショックだったのか?そりゃあ悪いな♪シシシ♪」
まったく詫びれている様子は微塵も感じられなかった。
「……久々に聞いてイラッとしたたけだ。それに…」
ライ君の真紅の瞳から彼に対し、鋭い眼光が放たれる。
「これから死ぬお前にどれだけ俺達に対する罵詈雑言を述べようがもう気にもしねえし、詫びも要らねえよ」
「そうかよ、シシシ♪」
彼はライ君の言葉を聞いて愉快そうに笑う。
ライ君はなんともない様に振る舞っているが、私は幼い頃のトラウマで畏縮してしまっていた。
「……ユウナ。確かにどいつもこいつも俺達の事をバケモノと罵る連中ばかりだ。だが、そうじゃねえ奴もいたはずだ…」
「……ライ君。うん、そうだね」
そんな人達ばかりじゃなかった。
私達を育ててくれた教会の人達がそれだった。
「ありがとう、ライ君」
「ふん」
私とライ君はクロト・シャルガに向き直る。
「行くぞ、ユウ!」
「あ」
「ん?なんだ?」
「久しぶりにそう呼んでくれたね」
「どう呼ぼうが俺の勝手だ」
「ふふ」
「フッ」
私達はお互いに微笑み合い、それぞれの得物を構える。
「あ~あ、な~に青春的な事をやってんだか」
そう言い、彼も槍を構える。
先に動いたのはライ君だった。
ライ君は銃を乱射しながら彼に接近する。
私もライ君の後ろについて行く。
「シシ♪」
彼は不敵に笑いながらライ君の銃弾を槍で弾き、聖剣の力を使い姿を消した。
けど…。
「同じ手が二度も通用するか!ユウ!」
「うん!ハァッ!!」
私はもう一本刀を取り出し、血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)としての体質(私達は血の力(ブラッド・アビリティ)と呼んでいる)による筋力を最大にして刀で地面を巻き上げ、広範囲に土煙を発生させる。
「そこか!」
ライ君は土煙が不自然に揺らいでいる場所目掛けて銃を乱射する。
「チッ!」
案の定、そこに彼はいた。
銃弾は、おそらく透明になった槍で弾き落とされたが、彼の居場所を特定できれば十分であった。
私はその場から跳び上がり、二刀流で斬り掛かる。
「このッ!」
彼も姿を現して手持ちの槍と聖剣で対抗するが、槍しか扱ってこなかったからなのか、剣の扱いがなってないのに加え、安易にやったことの無い二刀流にしたせいで容易に聖剣を弾き飛ばす事ができた。
「ッ!?クソがッ!!」
今まで余裕の態度を崩さなかった彼が初めて歪んだ表情を見せた。
その表情からは焦りが容易に読み取れた。
「オラァァッ!!!!」
彼は力任せに槍を振るってくるが、私は両手の刀で受け止め、そのまま彼の力を利用して後ろに飛ぶ。
「………」
そこへすかさず、ライ君が殴り掛かる。
「コノォッ!!」
彼はライ君に向けて槍の一突きを放つ。
「フゥッ!!」
ライ君は構わず、槍に向けて拳を突き出す。
「シシ、バ~カ!」
彼はライ君の行動に嘲笑し、槍を突き出す。
ガキィン!
「ッ!?」
が、すぐに驚愕に表情を染める。
槍の切っ先がライ君の拳によって折られたからだ。
その事実に彼は今までに無いほど狼狽しだす。
「どうなってんだよ!?なんで俺の十字具(クロス)がッ!?」
生身の拳で槍の切っ先を折られたのがよほど信じられないと言う様子であった。
「ハァッ!!」
メキャ!
「グハァッ!?」
狼狽している彼をライ君は容赦無く回し蹴りで嫌な音を鳴らしながら吹き飛ばす。
「……ガ…ガァ……ガッ……ガァッ!?……」
顔を押さえながら苦悶の声を出しながら立ち上がる。
「………テメェ……なにしやがったッ!?……」
前髪で隠れているが、おそらく怒りで滲んだ目で私達を睨んでいる。
彼が顔から手を寄せる事で彼の顔が露になる。
鼻から血を大量に流し、鼻が原型を留めていなかった。
さっきのライ君の蹴りで鼻の骨が折れたのだろう。
「フン、ずいぶんな面構えになったな」
「ッッッ!!!!」
ライ君の挑発を聞き、彼はさらに顔を怒りで歪ませる。
「テメェは一体何なんだッ!!」
「ただの十字具(クロス)使いの人間だ」
ライ君がそう言うと同時にライ君の右腕と右足が光り、戦闘服が弾け、皮膚が弾け飛ぶ様に剥がれ落ちる。
そしてライ君の右腕と右足は白銀の物となっていた。
「なッ!?なんだそりゃッ!?」
「……十字義肢(クロス・リム)、モデル・アーム、モデル・レッグ。要は十字具(クロス)の義肢だ」
「十字具(クロス)の義肢だと!?んなもん聞いた事ねえぞ!?」
「それはそうよ。君がはぐれになって間もない頃に作られた物だから」
十字義肢(クロス・リム)、文字通り十字具(クロス)の素になった十字架で作られた義肢。
ライ君はとある事件で右腕と右足を失い、本来なら教会の戦士(エクソシスト)として活動できない状態になってしまったのだけれど、これを装着する事で復帰する事ができた。
しかも十字義肢(クロス・リム)は通常の十字具(クロス)とは違い、強度が高い。
だからこそライ君の拳が彼の槍を折る事ができた。
そしてライ君の血の力(ブラッド・アビリティ)も加わり、彼の教会の戦士(エクソシスト)としての戦闘能力は高い物となった。
「そろそろ終わらせる!!」
決着をつけようとライ君が駆け出す。
「クソ!!」
彼も新しい槍を取り出して応戦しようとするがその時にはすでにライ君は彼に肉薄寸前だった。
「フゥッ!!」
「グゥッ!?」
ガキィン!
「ハァッ!!」
ガン!
「ッ!?」
バン!バン!バン!
「ッッッ!?!?」
ライ君の十字義肢(クロス・リム)の拳の一撃を彼は槍で防ぐが、ライ君は槍を十字義肢(クロス・リム)の脚で蹴り上げ、そしてすかさず、彼に空いている手に持っていた銃で銃弾を数発撃ち込む。
「………ガアァッ!!……クソがぁっ!!……」
それでもなおライ君を攻撃しようとするが…。
「私の事を忘れないでよね」
「ッ!?」
「ハァッ!!」
ズバァッ!
「ッッッ!?!?」
追い討ちで上から彼の左右の肩から横腹までを二刀流で一閃する。
「終わりだッ!!」
「ッッッ!!!!」
ドガァァァッ!
さらに上からライ君が留めにと彼の頭を地面に叩き付けながら殴り付ける。


「……………」
殴り付けたクロト・シャルガは全く動かなくなっていた。
運が良ければまだ生きてるかもしれないが、もう戦えないだろう。
「……ふぅぅ…」
気を少し抜いたら体を疲労感が襲った。
十字義肢(クロス・リム)は十字具(クロス)に比べて、消耗が激しいからな。
まともに使える奴がいなくて少数しか生成されなかったらしいが、なるほど、血の力(ブラッド・アビリティ)を持つ俺でさえこれだからな、うなずける話だ。
(まあ良い)
「さっさとエクスカリバーを回収するぞユウナ…」
「む~」
「なんだよ?」
「……またユウナになってる」
ああ、血の力(ブラッド・アビリティ)を使っている状態で戦意高揚するとついつい昔の呼び名呼んでしまうんだよな。
昔はユウと呼んでいたんだが、とある事件を境に呼ばなくなってしまった。
「……どうでも良いだろ。さっさと回収するぞ」
「ちぇ~」
こいつは普段から親しくなった奴に自分をユウと言う愛称で呼ばせる。
イリナもそれでユウにちゃんを付けて呼んでいる。
俺は不貞腐れているユウナを放っておいて、ユウナが弾き飛ばしたエクスカリバーの下に向かう。
「待ってよライ君!」
ユウナが慌てて着いてくる。
「ん?」
……妙だな。
「おいユウナ、お前確かこの辺に飛ばしたよな?」
確かこの辺に飛ばされたはずなのだが、見当たらなかった。
「うん、この辺のはずだけど」
(……どうなってる…)
「捜し物はこれか?」
『ッ!?』
背後から突然話し掛けられ、俺とユウナは慌てて振り替える。
そこにいたのは…。
「久しぶりだなぁ、ライ、ユウちゃん♪」
『ベル(君)!!』 
 

 
後書き
ベル本格的に登場。
次回はライニー達のベルとの戦いです。
ちなみにクロトは一応まだ生きています。 
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