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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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我は天空の勇者

<ゾーマの城>

「な、何故これがここに!?」
突然天空の剣が現れた事に驚くティミー…
それは攻撃をしていたキングヒドラも同じで、思わず炎を吐くのを止めてしまう。

そんなチャンスを逃す程ティミーは甘くはない。
即座に天空の剣を引き抜き、戸惑っているキングヒドラへ斬りかかる。
気付いた時には間に合わず、為す術なく一刀両断されるキングヒドラ。


「ティミー、大丈夫!?」
キングヒドラが崩れ落ち、一息ついた所でアルルがティミーに抱き付き無事を確認する。
《ぐはぁぁ…》
未だ回復させていない折れた肋骨に抱き付かれ、悲鳴を上げない様に努力するティミー…
「ぼ…僕は大丈夫……それよりアルルに怪我はない?」
即座にアルルを引き離し、怪我の確認をするフリをしながらきわどい所を覗き込む。

「きゃ、やだぁ~…ティミーのエッチー!」
「いやいや…大事な所だから、しっかり見て確認しないと…何なら触ったりなんかしちゃって!」
リュカとビアンカかと思う様なやり取りをする2人…

「あ~…ゴホン!…その…なんだ…少年…危ない所を、娘共々助けてくれてありがとう…その…君は…何なんだ?」
彼女の父親の前で、やらしく娘とイチャついている事に気付き、慌てて身を整えるティミー…アルルもゴツイ鎧を纏っているが、恥ずかしそうに顔を赤らめ彼氏と寄り添いオルテガに向き直る。

「し、失礼しました…僕の名前はティミー。アルルと一緒に…あ、いや…アルルさんと一緒に、大魔王ゾーマを倒す為、ここまでやって来ました」
「あー…うん…そうだね。アルルも居て君も居るって事は、一緒に大魔王退治に来た訳だよね…うん…それは分かるよ、言われるまでもなく。それよりさぁ…何だかもう一つ説明する事がある気がしない?…パパそっちが気になってるんだけど…」

「あ!…そ、そうですよね…あ、あのですね…僕「うわぁ…すげーなぁ!こんなでっかいモンスターを一刀両断じゃん!」
戸惑いながらも慌ててアルルとの仲を説明しようとしたティミーだが、やっと追いついたリュカに阻まれチャンスを失う。
「あれ?それって『天空の剣』じゃね?どうしたの…実はパンツの中に隠し持っていたの?」
「か、隠せる訳ないでしょ、こんな大きい剣なんですよ!よく分かりませんけど、急に出現して助けられたんです」

「そうだよなぁ…パンツの中はムリだよね…マリファナだったら隠せるけど…でも、そんな所にそんな物隠したら『勝○○郎』って呼んじゃうよ」
「だ…(ハァハァ)誰ですか…(ハァハァ)そ、それ…(ハァハァ)は…」
まだ体力は常人の範囲内のウルフは、慌ててアルル達を追いかけてきた為、息が整ってないのだが、義務であるツッコミを辛うじてこなす努力家な一面も見せつける。

「その剣は…(ハァハァ)さ、先程…(ハァハァ)マスタードラゴン…(ハァハァ)に、言われ…(ハァハァ)私が…(ハァハァ…スゥ…ハァ~!)…私がこの場へと導いた物です」
ルビスも息が切れ切れだったが、何とか整え状況を説明する。
「ルビス様が?それではマスタードラゴンと連絡が取れる様になったんですか?」
「いえ…申し訳ありませんティミー。私の方からは大魔王の力が影響して、メッセージを送る事は不可能です…きっとマスタードラゴンがこちらへのゲートを開き、その時にメッセージと剣を送ってきたのだと思います」
ティミーの問い掛けに、簡単に天空の剣が送られてきた事を説明するルビス。

「おぉ…何だこのパーティーは、美女揃いじゃないか!?初めまして美しいご婦人方…私はアリアハンより参りました、勇者オルテガでございます。以後お見知りおきを」
最も近くにいたルビスの前に片膝を付き、そっと右手の甲に口吻をして挨拶するダンディー・オルテガ。
「やぁ。僕はリュカ…君の命を救った少年の父親だ!そしてこっちが妻のビアンカ。わざわざ紹介する意味解るよね」
つまり…他の女は構わないけど、ビアンカだけは口説くのも禁止だよ…って意味。

「了解した!」
サムズアップで答えるオルテガ。
多分思考回路が近いのだろう…全てを語らずとも会話が出来る2人。
「因みに僕も、君の奥さんだって分かってからは口説いてないからね」
と告げると、最後にやって来たカンダタの影に隠れて、見えなかったアメリアを手繰り寄せ、オルテガの前にまで連れ出すと再会させる。

「げ、アメリア……な、何でここに居るんですか?」
「アナター!!」
アメリアは勢い良くオルテガに抱き付き押し倒す。
そしてディープな口吻で喜びを表現する。

「うわぁ…変だなぁ…自分の両親で見慣れているのに、彼女の両親だと直視出来ない…」
ティミーは恥ずかしくなり、慌ててそっぽを向いて見ない様に心掛ける。
「何だ?『彼女』だぁ!?おい、どういう事だ、説明しろ…アメリア…何でここに居るんだ?ともかく説明してよ!!」



突然襲い来る数々の出来事に、かなり混乱気味のオルテガ…
アルル達もゾーマの城へ入って、かなりの時間が経過している為、ひとまずの休息を取ろうと、敵が襲ってこなさそうな袋小路で野営をする事に。
その際、アメリアが居る事やリュカ等が異世界の者である事…更には精霊神ルビスまでもがパーティーに参加している事など、1つずつ説明し理解をして貰う。

そして遂に、ティミーの口から説明する時が訪れた。
「改めまして…始めまして、僕はティミー。父のリュカと同様、異世界より参りました天空の勇者です。娘さんのアルルとは、真剣にお付き合いをさせてもらっております…世界の平和を取り戻したら、僕はアルルと結婚するつもりです!」
説明するまでに結構な時間があった為、多少は落ち着いて挨拶が出来たが、少しでも良く見せようと自らを勇者と言ってしまうのは、まだまだ未熟な証…
リュカは苦笑いで息子を見つめている。

「何が天空の勇者だ…他人様(おれ)の娘を誑かしやがって…そんな(ヤロー)に大切な娘はやれん!」
「そ、そんな…お父さん酷い!私はティミーの事を愛してるのよ!」
よく知りもしない彼氏を拒絶され、アルルは泣きながらティミーに抱き付き、愛し合っている事を見せつける…
しかしティミーは、肋骨の骨折を治しておらず、抱き付かれるたびに悲鳴を上げるのを我慢して、顔を歪ませる。(勿論、苦痛の表情はアルルには見せない)

「あ、うん。愛し合ってるのは解ってるから、ティミー君に抱き付くのを控えなさい。お前、気付いてないけど…ティミー君は怪我しているから…抱き付かれると痛そうだから!」
「え!怪我してるってホント?」
オルテガの言葉を聞き、慌てて離れるアルル。
「う、うん…さっき大魔神の攻撃を受けた時(の後、アルルに抱き締められた時)に、肋骨を…ちょっと…」
「ご、ごめんなさい…私…全然気付かなくって…大丈夫…?」
「う、ううん…僕こそみんな(アルル)に気付かれない様に黙ってたから…気にしないで…大丈夫だから!」
大丈夫である事を誇示するティミー…男の悲しきサガです。

「はっ!…と、と言う風に私達は愛し合っているんです!」
父親の前である事を思いだし、慌てて先程の続きを始めるアルル。
「お父さんが何と言おうが、私はティミーと結婚します!反対したらぶっ殺すわよ!」
10年ぶりに再会した父への言葉とは思えない事を言うアルル…

「うん。大丈夫…別に反対はしないから。良さそうな青年じゃないか!」
「………え?…でもさっき…」
先程と言っている事が180度変わるオルテガに、呆然とするアルル。
因みにティミーは何となく分かっていた様で、それ程驚いてはいない。

「うん。娘が生まれた時から、彼氏を連れてきたら絶対1回は拒絶してやろう…『お前に娘はやらん!』って台詞、言ってやろうって思ってたから………いや~、言いたかったんだ、この台詞!」
「うわぁ!(笑) ちょ~解るぅ~!僕も娘が彼氏を連れてきた時に、言っちゃったもん!でもね、あまりその話題を引っ張ると面倒な事になるから、早々に認めた方が無難だよオルテガっち」
「でしょでしょ!娘を授かったからには言いたいよね、この台詞は!気が合うじゃんリュカちん」

初めて会うはずなのに、愛称で呼び合う程マブダチになっている勇者の父親2人…
「うわぁ…どっちの家に入っても、同じタイプの父親がついてくる…ヤダなぁ~……」
「ごめんティミー…どうか耐えてちょうだい。別れるなんて言わないでね…」
「それは大丈夫だよ。…むしろ僕にしか耐えられないでしょう…あの人の義理の息子なんて…」
大親友のリュカとオルテガが楽しそうに会話する横で、これから来る未来を憂いでいる若いカップルが…

大魔王の本拠地で、場にそぐわない楽しそうな笑い声が木霊する。
完全にマブダチへと化した2人の男の笑い声が…



 
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