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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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別世界より⑪

<グランバニア>

ここグランバニア城では、数日前より天空城の主…マスタードラゴン(プサン)と、幾人かの天空人を交えて、新技術の提供について打合せを行っている。
勿論これは完全なる代表者同士の会談で、グランバニア側には常に女王リュリュと宰相ポピーの姿が存在する。
マスタードラゴン側は、ポピーさえ居なければ優位に進める事が出来るのに…との思いがあり、終始笑顔ではあるが目は笑っていない。

「……つまり、この金色の宝玉と銀色の宝玉が共鳴して、蒸気機関に代わるエネルギーを生み出すワケね。天空城のと同じ仕組みかしら?」
ポピーは金銀に輝くゴルフボールくらいの大きさの宝玉を両手に持ち、技術を提供したプサンを見据え問いかける。

「仕組みとしてはそうですが、パワーとしては遙かに小さいです…とは言っても、蒸気機関に比べれば遙かに強力ですし、持続時間も長く経済的です。充電も人間が魔法力を込める事で行えますし、ほぼ永久機関と言って良いでしょう!」
「ふ~ん…なるほどね…」
プサンの説明を聞き、美しい顔で宝玉を眺めながらポピーが呟く。
「名称は…ゴールドオーブ・シルバーオーブだと、天空城に設置されている物と被るから、金玉と銀玉で良い?」

「「「絶対ダメ!!」」」
出来れば女性…それも高貴な血筋の女性からは発してほしくない単語を、サラリと言い切るお茶目なポピー。
マスタードラゴン・リュリュ以下、その場に居る全員からダメ出しを受け、再考する宰相閣下。
「ちぇっ…じゃぁ、ゴールドスフィアとシルバースフィアなんてどう?」
「何でそんなに素晴らしいアイデアがあるのに、最初から出さないんですか!?…貴女と会話していると、リュカと喋っている様で疲れます!」
「うっさいヒゲメガネね!親近感があって、最初の方が良いなぁ…と思ったの!」

「良いわけないでしょポピーちゃん…そんな事女の子が口にしちゃダメなんだからね!」
「そんな事言ってるから何時までも処女なのよ…いい年なんだから早く男を見つけなさいよね」
「わ、私は良いんです!お父さん以外に処女をあげたくないんだから…」
「お父さんが貰ってくれる訳ないでしょ…そこだけはまともなんだから」
珍しく姉妹で喧嘩を始める2人…内容が普通なら、皆も微笑んで見ていられるのだが…

「そ、それでマスタードラゴン様…このスフィアにはどの様なセイフティーロックが施されているのですか?」
うら若い少女の下品な会話を打ち切る為、オジロンが慌てて話題をスフィアに戻す。
セイフティーロック…それは、今後グランバニアが天空人の技術を悪用し、戦争への使用や人々を苦しめる技術への応用を防ぐ目的の措置。
「えぇ…それは…」



プサンの説明は以下の様だ。
シルバースフィアは魔法力がある者ならば誰でも充電が出来るのだが、ゴールドスフィアの方は天空城から送られる魔法力でのみ充電か可能。
そして天空城から魔法力を送る為、中継用に七色に輝く1メートル程のオーブを複数託されたポピー等…
このレインボーオーブに近付ける事によって、ゴールドスフィアにエネルギーが充電される仕組みになっている。
もしグランバニアが、天空人の技術を使い戦争などを起こした場合は、1度の警告の後オーブへの魔法力送信を打ち切るシステムだ。



「なるほど…良く考えてありますなぁ…」
説明を聞き感心するオジロン。

「一部修正を要求する!」
しかし反対したのはポピー…
「『1度の警告の後』と言ったけど、悪用と判断するのはそっちでしょ!?一方的な言い掛かりに、国家を混乱させたくないわ…警告の後に会談をし、それでも悪用であると判断された場合にのみ、一時的に魔法力供給をストップする…と言うので手を打ちましょう!」

「一方的な言い掛かりとは失礼な!我ら天空人は、常に人々の事を思い考え、行動しております。そこを疑われるのは「テメーふざけんな!」
些か憤慨しながらのマスタードラゴンの反論…
しかしポピーはそれを遙かに上回る激怒で台詞を遮り、天空人…いやマスタードラゴンの浅はかさを、大声で主張し始めた。
「何が『常に人々の事を思い…』だ!何の相談もせず、勝手に我が国の絶大なる指導者を異世界へと連れ去ったクセに、『疑うな』と言うのはおこがましいゾ!リュカ陛下が居なくなって、どれだけの人々に迷惑がかかってると思う?下手したら内乱が起き、大勢の罪な気人々が死んでいたかもしれないんだぞ!そんとこ解ってんのか馬鹿!」

今回の事にはマスタードラゴンに大きな失点があり、そこを突かれると退かざるを得ない。
「わ、分かりました…では、警告をして共に話し合いの場を設け、その結果で判断する事に致します…」
この提案を受け入れた事により、リュカやポピーが健在中であれば間違いなく言いくるめられる事になる。
また未来においても、リュカの様な口の達者な者が存在すれば、圧倒的にグランバニアに有利な状況なのだ!



そんなポピーにとって大満足な状況の中、リュカの娘の1人であるリュリュの妹フレイが、その身体には大きすぎる剣と本を持って現れた。
「ヒ、ヒゲメガネさん!お願いします…今すぐにこの天空の剣を、異世界のティミーさんへ届けてあげてください!」

「ど、どうしたのフレイ…いきなり入ってきて?」
驚くリュリュ…
「異世界の状況を読んでいたら、ティミーさんが武器を失ってしまったんです!それなのに大魔王の下へ進んで行っちゃって…大魔王と戦うのに、武器がないなんて危険ですよ!でもティミーさんの専用剣があれば、みんなも守れるだろうし、何よりティミーさんが………」
フレイは泣き叫びながらプサンに、天空の剣とリュカ等の冒険記録本を押し付ける様に渡し、悲鳴に誓い声で懇願し続ける。

「し、しかし…天空の剣を異世界へ飛ばしたとして、上手い具合に彼等の下へ届けられるとは限りませんが…」
「何言ってるんですか!星降る腕輪が吸い込まれた時は、上手い具合にお父さんへ直撃したでしょ!…今回ティミーさん達のパーティに、向こうの神様も居るのだから連絡を取り合って、上手くティミーさんの手元に剣を送ってくださいよ!」
泣き叫び、プサンはタジタジだ。

「ですが…この剣は、こちらの世界には必要不可欠な代物…万が一、あらぬ場所に送ってしまい、二度と回収出来なくなっては…」
「な…世界を救った伝説の勇者の命より、そんなどうでもいい剣1本の方が大切だと言うの!?」
天空の剣を送る事に渋るマスタードラゴンを見て、これまでにない程激怒したのはポピーだった。

「お前、何もしないでティミーが死んだら、絶対お前等天空人を滅ぼすぞ!勝手に巻き込んだのだから、皆が無事帰れる様に最大限に努力をしやがれ!」
目が血走っているポピーに襟首を締め上げられ、苦しそうに足掻くプサン。
「わ、分かりました…い、今からルビスに向けて思念を送ります…だ、だから…離してください…く、苦しい…」

プサンの呻きを聞き我に返るポピー。
普段はそう見せないが、誰よりも家族の事を大切に思っているのは彼女なのかもしれない。




 
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