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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第31話 魔人は少しフライングするようです


Side 愁磨


「え、あの、愁磨、さん……?その姿は一体……?」

「【そこら辺は後で説明するから。俺から絶対に離れないで。】」

「は、ハイ!」


と、俺の背中を守る様に杖を構えるネカネちゃん。

―――そして、それを見て笑っている悪魔共。

まぁ、お笑いだろうな。プルプル震えてるんだから。


「【ネカネちゃん、良いから。俺に任せて。】」

「あ…、う、ふぇ………。」


頭を撫でてあげると、俺の服の握るネカネちゃん。(今は黒い救世主服の方にしている)

・・・・気丈に振る舞っていても、やっぱり女の子だ。

普段ネギ(9割9分)とアーニャちゃんの世話してるし、学校でも村でも頼られているから。

誰かに頼るなんて事出来なかったんだろうな。


「【さて、悪魔共並びに魔王殿。誰からでも掛かって来いよ。

順番なんて気にすんな。――どうせ、誰も生かして帰れないんだからよ。】」

「ゲギャギャギャギャ!吼エルナ、人間!!貴様ノヨウナ小サ「【どぅあぁぁああああれが

マキシマムインフィニットスペシャル豆粒ドチビだゴルァァァ!!!】」


ドグン!と腹に手刀を叩き込み、内臓を引きずり出し、捩じ上げて千切る。

・・・・・真名に背を越されてから、某錬金術師並みに敏感になったのは内緒だ。


「うっわ、エグっ!?ボクでもそこまでやんないよー!」

「しゅ、愁磨さん…?」

「【ネカネちゃんは気にしないで隠れててくれ。】」


ネカネちゃんは渡したロングコートに隠れている為、状況が掴めていないのだ。


「クッ!!アスモデウス様!!ヤッチマッテクダサイ!」

「え゛!?しょ、しょうがないなぁ。

行っくよ、おにーさん!!『魔炎(フォイエ・タウバー)』ぁーーー!!」


気の抜ける様な声と共に放たれた炎は、大気すら焼きながら迫る。

・・・・・・けど。


「【ぬるい!蠅が止まるぞ!!】」


ザゥン!と蹴りの衝撃波のみで相殺する。

この程度だったら、ナギの『燃える天空』の方が熱いし速い!


「む――、生意気!!知らないからね!!

魔炎(フォイエ・タウバー)限界値突破(リミットブレイク)』ぅーー!!」


ガォオォォォオオオン!!!

と、今度の炎は傍に居た悪魔を熱波だけで溶かし、

地面すら蒸発させながら凄まじい速さで向かって来る、それを―――


「【俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと、轟き叫ぶ!

ばぁぁく熱!ゴッドォ、フィンガァァァーッ!】」

「え、ええぇぇぇえええ!?そんな!ボクの『魔炎』を素手で!?」

「【・・・・・ヒートォ、エンドォッ!!】」


『魔炎』とやらを握り潰すと、大爆発が起こり、その煙に乗じてアスモデウスに殴りかかる。


「【男女平等ォーーー!!………………ビンタ!!】」

「あうっ!!」


ベシン、とそれなりに痛そうな音がして、アスモデウスが倒れる。

ノワール達がやられたならいざ知らず、村燃やされただけじゃそんなにキレれない!

ネカネちゃんにも手は出されてないし。・・・上条さんにはなれそうにもないな。


「アスモデウスガヤラレターー!」

「ヤッパリダメカ!コノ味方殺シノ落チコボレガーーー!!」

「【出ろ、『超々高圧体圧縮対艦砲(ヘパイストス)』!放て!!】」


ゴウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

「「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」」


とりあえず逃げ出す悪魔達を一掃し、アスモデウスを起こす。


「【さて魔王、覚悟は良いか――と言いたい所だけど、その前に。

お前ら、誰に召喚された?目的は?】」

「だ、誰かは知らないよ!真っ黒い魔力が、無理矢理扉を開いたんだ。

それで、ここの近くに召喚されて!」


真っ黒・・・・・?ツェラメルも主なのは黒だが、

多数の人間の魂が入っているせいで虹の様な魔力に見える筈だ。

(魔族・悪魔は魔力を感じるのではなく、流れを見るのだ。)


「命令は、何だか、よく分からないけど……。

『ネギ・スプリングフィールドに目的を与える』為に、この村を壊せって……。」


ネギに・・・?修正力・・・ではない事は確か。そして、ツェラメルでもないか。

魔王召喚なんて出来るのはあいつか俺・・・あと、『造物主の掟』を持った

フェイトとデュナミスくらいだから疑ったが、今思えば、目的が無い。

原作通りに行けば、ネギは蟻程度の障害になり得る。

あいつがそんな不確定要素を出す訳が無い。後で確認はする必要あるが、今はこっちだ。


「【……まぁ、駄魔王でももう一回召喚されても邪魔なだけだ。

お前には『契約(ギアス)』をしてもらおう。二度と地獄から出られない様にな。】」


フォン!と地面に魔法陣が敷かれるのを確認し、魔力を練る。


「え……!?あ、ぐぅぅ!!」

「【む、流石は魔王か……。この魔力量でも抵抗出来るのか。】」


――仕方ない。

ネカネちゃんが見ていないないのを確認し、アスモデウスの頬に手を添え――


「ほぇ!?///あの、ちょっと…!?ボク、その、はj…むーーー!!」


無理矢理魔力を注ぎ込み続ける。

仮契約でもキスをしていたが、効果付与には粘液接触が一番安定するのだ。

ましてや魔王――と真実で言い訳をしておく。


バォウ!!!と風が吹き、契約が終了した事を知らせる。


「【…ッフ、これでお前は俺の奴隷も同然だ。

よって、俺以外は触れないから。安心して地獄で御留守番してろ。『送還』】」

「ま――――」


なんだか可哀相な魔王を地獄に帰すと、遠く丘を見上げる。

ナギは杖を渡すと、空に舞い上がり消える。

ネギは泣き叫び、そして、何かを決意したように顔を上げる。


………
……



1ヵ月後、ネギはネカネちゃん・アーニャちゃんと一緒にメルディアナへ向かったのを確認し、

村の建物を直し、石化を解く。


「これで全員っ、と!!みんな、無事か?」

「おお、シュウマ!お前は無事じゃったのか!と言うか、ワシらは確か…。」

「無事だったよ。ついでに言うなら、解いたの俺だし。」

「なんじゃと!?悪魔の石化をどうやって解いたのじゃ!?」


一般人が解けばそりゃ疑問か。・・・ネギ対策が仇になったかな、こりゃ。


「あー……、改めまして。愁磨・P・S・織原だ、よろしく。」


学園の時と同様に認識阻害を解いて挨拶をすると、

スタン爺始め皆が驚いた顔をするが、それは直ぐに呆れ顔だったりに変わる。


「ナギの知り合いじゃから普通ではないと思っておったがの……。」

「それ以前に、エルザさんが生きていたからねぇ。」

「……驚かれないのは新鮮だな。もっとこう、なんかないのか?」

「では聞くがのう。お前が居たのに、何故村がこの様な事態になったのじゃ?」


それを言われると痛いが・・・・・・。ただ、一つだけ。


「英雄も万能じゃねーですよ。ナギを見れば分かり易いと思うけど。」

「そうだねぇ……。なんか大変みたいだけれど、

息子ほっぽってどっか行っちまうんだからねぇ。」


・・・・俺でも位置が分からないから、ナギとエルザさんを囲っているのは

間違いなくツェラメルなんだよなぁ。

考えあっての事だろうし、野さ・・・ネギには悪いけど、しばらく様子を見させて貰おう。


「じゃ、元気でな。

ああ、村には結界張っておくから、また襲われたくないんだったら出ないでくれ。」


認識阻害付きの、だけどな。


「む、シュウマはどうするんじゃ?」

「俺は俺で、やる事があるんだ。」


Side out
―――――――――――――――――――――――――――


subSide 地獄


「シュウマ、シュウマ……か。フフフッ。」

「アスモデウス、ご機嫌だな。」

「あ、レヴィ!あのねあのね、ボク面白い人間見つけたんだ!!」

「……ボクとか言うのやめろ。お前とて男なのだ。だから馬鹿にされるのだぞ。」

「そんな事どうでも良いもん!ボクね、契約して貰ったんだ!!」

「………え?」

「だからね、ボク、あの人…ううん、

シュウマさんと結婚して、地獄の王になるんだ!!」


Side out
――――――――――――――――――――――――――――


Side エヴァンジェリン


「えー、まずは生徒指導の―――」


体育館から、教師の声が聞こえてくる。


あれから6年間、私は兄さまの言う通りキチンと小学校に通った。

楽しくない訳では無かったが、それでも、兄さまと姉さまと居た方が・・・。

いや、これは甘えか。・・・・本当は、かなり甘えたいが。


風の噂では、第八学区に兄さまが来ているらしいが――

居たとしても、自分からは会いに行かない。

数十年も会えなかったのだから一秒でも早く会いたいが、何やら――


「大体!魔法世界で何やら楽しそうにしているのが気に食わん!!」

「マスター、なんの事でしょうか?」

「……別に、なんでも無い。」


私に膝枕していた緑髪の人物――いや、ロボットに憮然と答える。

名は茶々丸。超鈴音とか言う奇妙な奴が、数年前寄越して来た。

科学と魔法の融合体とか何とか、計画が何とか言っていたが、興味は無い。


「えー、続いて、新任の先生方をご紹介いたします。」


「チッ、ここはうるさくて寝て居られん。帰るぞ茶々丸。」

「Yes,master.」


去年からなんの陰謀か分からんが、引き続きアホなクラスになってしまい、

二ヶ月も我慢したのだ。兄さまには悪いが、少しはサボらんと気力が持たん。


―――早く、会いたいな・・・。

Side out



Side 近右衛門


「初めまして、愁磨・P・S・織原と言います。昨年度までは第―――」


数年前から麻帆良に来ておった、今は壇上で話している英雄兼死人・犯罪者の彼らは、

先に言った通り、普通に教師をしておった。

何故かここでは無く第八にの方に行っておったが・・・聞いても無駄じゃ。


「短いですが、以上で挨拶とさせていただきます。」


彼が礼をすると、男女関係なく黄色い声が飛び交う。男は野太いがの。

ノワール殿の時も同様じゃった。当然と言えば当然じゃが、一般・魔法教員問わず視線が鋭い。

そんなに見つめられると、胃に穴が開いてしまうんじゃがのう?


「以上で親任式を終了します。生徒の皆さんは―――」


願わくば平穏であって欲しいのじゃが・・・。

来年の為にも、そうは言っておられん。英雄の子が三人も揃うのじゃからのう。


Side out



Side 愁磨


「愁磨さああああーーーーーーん!!!


式が終わり職員室に向かっていると、タカミチが走って来た。・・・ああ、忘れてた。

そう言えばこいつってここで教師やってたんだった。


「愁磨さん、どうしてここに!?それに、何で生きて……。」

「なんだ?俺が生きてちゃ不満なのか?」

「だって、あの時は助からないって言ってたじゃないですか!!」

「あの時またな、って言っただろ?やっぱり信じてなかったのか。」

「信じてましたよ!!でも何年も連絡取れないし、ナギも死んでしまうし、それで―――」

「あの、申し訳ありません。高畑先生は、愁磨さんと知り合なのですか?」


俺達が話していると、しずなさんが声を掛けてくる―――

って、先生達も生徒達も見てんじゃねえか。

・・・・廊下で生きた死んだとか言ってたらそりゃ目立つよなー。


「ああ、しずな先生。愁磨さんとは、なんて言って良いのか……。」

「タカミチとはアレですよ。師弟と言うか仲間と言うか。」

「ウフフフ…切っても切れない仲、と言う事ですわね。」

「あー、まあ、それでいいです。」


相変らず大人の対応をしてくれるから助かる。・・・ある所を突くと修羅になるから困るが。


「そ、それで、しずな先生と愁磨さんは、どう言った関係で?」


と、タカミチが何やら引き攣った顔で聞いてくる。


「どう、って言われても。」

「一緒に食事する仲、でしょうか?」

「ああ、それが妥当ですか……って、どうしたタカミチ。」


なぜか石像になってるんだが。

あれ?こいつもしかしてしずなさんに惚れて?しかも勘違い?

―――いいか、面倒だし。


「しずなさん、申し訳ないけど教室まで案内して貰えます?

担任タカミチなんですけど、この状態ですし。」

「そう、ですわね。

高畑先生には悪いですけれど、予鈴も鳴っていますし行きましょう。」


と言う事で、俺達が向かう先は・・・1-A。


「ノワールさん達はいかがなさったんですか?」

「ノワールは挨拶が終わってすぐに保健室に。

アリカは所用で少々。真名は教室ですし、アリアはほら、ここに。」


そう言って、俺のスーツの裾を掴んでいるアリアの、少し高くなった頭を撫でる。

・・・擬似的にではなく、普通に体を成長させているのだ。

生前が、あれだし。親心、と言う程崇高なモノでもないけど。

でも、大きくなったアリアは少しだけ感情豊かになったし、

以前より喋る様になった。・・・嬉しい半面、何故か少し寂しいけど。


と、なぜかしずなさんは、アリアを見つけると驚いた顔をする。


「愁磨さんが自然体過ぎるから、気付きませんでしたわ……。

高畑先生も気付いていらっしゃらなかった様でしたし。」


・・・・アリアさんや、妙な立ち位置を獲得しておりませんか?


「・・・そんな事、無いよ?」

「ノワールみたいに、ナチュラルに心を読まんでくれるか?」

「・・・ママに出来て、私に出来ない事は・・・あんまりない。」


「ウフフ。相変らずね、アリアちゃんは。」

「・・・変わらないこと、ない。身長、伸びたもん・・・。」

「これで、他の人とも仲良くしてくれたら安泰なんだけどな~。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がんばる。」


アリアのちょっとだけ前向きな台詞で、教室に着く。

中からは、始業ベルが鳴っているにも関わらず、

「肉まん食うアルかー?」とか「宿題写させてーー!」とか聞こえてくる。


「タカミチは本当に教師をやっていたのか……?」

「・・・・役立たず?ずぼら?」

「え、ええ。このクラスは元気が良いもので……。」


要するに御し切れなかった訳ですね、ハイハイ・・・。


「まぁ、適当に行きますかね。」


始業ベルが鳴り終わると同時に、俺は教室の扉を開けた。


Side out
 
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