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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第32話 吸血鬼と魔人達は再会するようです


Side 千鶴


「「「ウシシシシシ!!」」」


美空さん、風香さん、史伽さんが悪戯っ子のように笑っているわ。

・・・事実、その通りだけれど。


今日の集会で紹介された先生が副担任になるって朝倉さんが言ってたから、

それに触発されたのでしょうね。

担任が高畑先生になった初日、今日と同じ仕掛けをして全部防がれたのが悔しかったのかしら?


ガラガラガラッ!

と扉が開いて、その人が入ってきた。


遠くても分かった、正に絶世の美女と言える顔。

ポニーテールにした美しい白髪と、その間から窺える同色の瞳。

スーツとYシャツは逆に真っ黒で、ネクタイが白。

手足もスラッと長くて、見ているだけで引き込まれ――――


ガボン!!


と、多少惚けていた所に急に大きな音がしたから、驚いて体が跳ねてしまったわ。

(皆も同じ様だったけれど)

音の方向――即ち、入ってきた先生を見ると、バケツを頭から被っていた。


「………冷たい。」


・・・・容姿とは裏腹に、意外と普通の反応を返してくれた。

面白そう・・・いえ、不思議な先生ね。


Side out



Side 刹那


初め見た時は見間違えかと思ったけど、あんな綺麗な人

・・・もとい、カッコイイ人を、見間違える訳がない。


数年前、このちゃんが川に落ちそうになった時、何処からともなく表れて助けてくれた。

・・・慌てて落ちた私も助けてもらってしまったけれど。

私がその事を悔やんでこのちゃんから離れようとしていた時も、

どこからともなく来て、励まして、叱ってくれた。


長と一緒に剣の稽古もつけてくれて・・・結局、全く勝てなかった人。

三言ほど言って、突然居なくなってしまったけれど。だからこそ私の目標で、目的で・・・。


『言わなくても、伝わる事も有るかも知れない。でも――』

「大切な事なら、言わなきゃ伝わらない事もあるから、か……。」


その人は今、頭からバケツを被ってビショビショだ。

しかし、なぜか黒板消しは避け、足元にあった紐は切り、吸盤矢を全て避けている。


「皆さん初めまして、愁磨・P(プテリュクス)S(ゼクスパール)・織原と言います。」


剣の達人の長をも指一つで圧倒して、鬼を千から薙ぎ払えるくせに、

虫が嫌いだったり、キノコが苦手だったり、人間的な所が見えて。

届きそうだと誤解してしまうから―――


「だから、諦められないんですよ……。」

Side out



Side 愁磨


水も滴る――とか巫山戯た事考えた数十秒前の俺をボコボコにしてやりたい。

寒い。冷たい。濡れて気持ち悪い。


「愁磨・P・S・織原と言います。科目は時間割りの通り、社会科。

頑張ってるおバカさんは助けますが、不真面目な人は狗の餌になって貰いますので。

……授業は、真面目に受けてくださいね?」


ハーイ・・・と返事してくれるが、概ね呆気に取られている。

掴みを間違えた様だな。・・・まぁ、いいか。


「コホン。と言っても、私語を慎めとか勉強だけしろなんて言いませんので。

あくまで授業は楽しく、がモットーですので、よろしくお願いします。」


そう言って軽く頭を下げると、漸くやんややんやと騒ぎだす生徒達。


「ハイハイ、他の所は授業中だから静かに。

とりあえず初日だし、授業か質問タイムかで多数決―――」

「「「「「「「「質問っタァァァーーーーイム!!!」」」」」」」」

「うん、完全にハモったね。でも、その前に転校生も紹介しないと。

アリアさん、入って来てください。」


呼びかけると、廊下にいるアリアとしずなさんが一緒に入って来る。

・・・・今は先生モードなんだから、未練がましい目で見ないでくれ!

抱きしめて機嫌を取りたくなるから!!


「・・・アリア・P(プテリュクス)W(ウーリティクノス)・織原です。よろしく・・・。」

「それじゃあ、成績順番に質問あったらどうぞ。」

「ちょおっと待った、先生!!ここは報道部である朝倉和美に任せて頂きたい!!」

「あー、質問がまとまればそれで良いよ。じゃあ、15分以内に皆の意見を纏めてね。

よーい、スタート!」

「え、ちょ、いきなり!?ええい、先ずはゆーなから!」



―――10分後。



「よっし、じゃあ行くよ先生!!」


15分どころか10分でまとめ終わったよ。ふむ、少々評価を改めないとな。


「その1!性別・年齢・身長・体重・スリーサイズを!!」

「見ての通り男、現在23歳、174cm、69kg、えーと……74・59・77だね」


ま、まさかスリーサイズの為に『答えを出す者』使うとは・・・。


「「「「「「「「男おおおおおおおおおおおおおおお!!?」」」」」」」」


「……次、アリアの番だぞ。」

「・・・・13、歳?140cm、33kg・・・?66・45・70・・・。」

「お、男……!?貰っても微妙…いや、使えるか!!

その2!ハーフですか?付き合ってる人・結婚している人は!?」

「繋がりが見えない……。ええと、妻が二人と子が一人居る。

妻が二人って言うのは、故郷で一夫多妻・多夫一妻が法的に許されてたから。」

「・・・・私は・・・ロシア系のハーフ。」


嘘だけど。アリアの含めて設定だけど。


「二人ともハーフですね!

というか奥さん二人ぃ!!?因みに、法的に許されて居なかったらどうしていましたか!?」

「二人とも愛しているんだ。当然、許される所に移って結婚する。」

「か、カッコイイ……。それで、娘さんと言うのはまさか?」

「うん、アリアだよ。」


隣にいるアリアの頭を撫でてやると、幾分か機嫌も直ったようだった。

・・・手を乗っかったままで押さえるんじゃない。可愛いだろうが。


「あ、その3!!このクラスで気になる人は!!」

「うーん、そうだね。

第一印象とさっきの問答を見ていた印象で行くと、明石、大河内、那波かな。

後は近衛、桜咲、龍宮かな。

――ああ、この教室内と言う事であれば、アリアと…しずな先生も、かな。」


「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」

「この状況下で、喜んでいいのかしら……。

(いいえ、確かに嬉しいけれど・・・婚期云々が迫っているから急いでもいるけれど・・!)」


と、俺の回答に教室がどよめき、しずなさんは何やら思案顔だ。

ちなみに、ノワール達を抜いたのはこの教室に居ないからだ。


「むむむ、とs……お姉さんスキーかと思いきや!そして難攻不落しずな先生まで!!

これは大物だね!!アリアさんは如何ですか!?百合属性をお持ちですかにゃ!?」


マイクをアリアに向けて楽しそうに笑う朝倉。

情操教育上悪いから百合とかやめなさい。・・・俺とアルの話を聴いてるから無駄か。


「・・・百合・・?お花は好き・・・。あと、ここで好きなのは、パパと真名だけ。」

「おおっとおおおお!?

まさかの謎の褐色スナイパー龍宮をご指名だああああああ!!」

「なに、私も家賊と言うだけだよ朝倉。」

「この一家謎だらけだ!記者魂が燃えますな!どう言う家族で?」

「家賊だ――と言っても分からないか。

それと、止めておくといい朝倉。この世界の闇を知ることになるよ。」

「比喩に聞こえない!!?」


質問タイムがいつの間にか漫才タイムになったな。


「さて、一段落したし授業……は、あと5分もないからやめておこうか。

じゃ、騒ぎ過ぎない様に自由時間にして良し。」

「フッフッフ!!ならば皆の衆!

織原先生&アリアちゃん歓迎会の話し合いをしようか!!」

「「「「「「「おおおーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」


ああ、やってくれるんだ。(と言うか、そう言うのは本人の居ないところでやれよ)

なら―――


「ふむ、そう言う事なら、お祭り騒ぎは一つにまとめた方が良いよな?」

「「「「「「「え?」」」」」」」


疑問まで完璧にハモるのか、このクラス。どんだけ仲良いんだよ。

と言う疑問はさておき、明石にとある質問をする。


「明石、今日は予定あるか?」

「ひょえ?!い、いや、無いですけど……。」

「よし。全員聞け!!今夜は俺達の歓迎会&明石の誕生日会だ!!!」


そう、さっき教師用の生徒簿を見て発見したのだ。今日は6月1日、つまりは明石の誕生日。


「ええええ!?い、いいよそう言うのは!!は、恥ずかしいじゃん!///」

「安心しろ、明石父にもちゃんと話は通しておく!

食料・飲み物は全部俺に任せろ!!開催は今夜6時半、世界樹広場でだ!!」

「「「「「「「わーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」


キーーーン コーーーーン カーーーン コーーーーン

と、決定と同時に終業ベルが鳴る。


「じゃあ、授業はここまで。今夜遅れるなよ~。」

「ちょっと待ってぇぇぇぇえーーーーーーーーー!!?」


明石の叫びを背に、職員室に戻って行く。

うん、中学教師って言うのも(授業はして無いが)意外と楽しいかも知れない。


――――――――――――――――――――――――――――――
subSide アリア


パパが出て行った後も騒がしい人達を素通りして、真名の所に行く。


「・・・・真名、エヴァって、どれ?」

「ん?エヴァンジェリンなら、今日はサボリのようだ。

ここ毎日はキチンと来ていたからね。このクラスに耐えるのも辛いんだよ。」


パパの言い付けを守ってないのは許せない・・・けど、確かに、疲れそう・・・。

それを小学校から守っていたのだから・・・少しは、プラス。


「愁磨さんの事を大事に思っているのは分かるけれど。

だったら、エヴァンジェリンも信用して良いんじゃないかな?」

「・・・・一番、古いのは・・・分かってる・・・。」


ママの次に、パパと一番長い付き合い。

・・・・私よりも、ずっと、ずっと・・・。だから、分からない。


―――なんで、パパ達と離れていられるんだろう?


Side out
――――――――――――――――――――――――――――――


「で、なんの用だ、ジジイ。」


現在、21時。歓迎会&誕生会がお開きになった後、

ジジイから呼ばれた俺は、エヴァの所に行く前に一瞬だけ寄ることにした。


「フォッフォッフォ、大した用事では 「じゃ、帰るわ。」

フォ!?だ、大事な事じゃから待ってくれんかのう!?」

「で?25文字で終われ、制限時間3秒なよーいスタート。」

「魔法先生達に紹介させてくれんか!?」


24文字・・・やるな。


「死んだ英雄兼犯罪者をご披露させてどうするんだ?

それに今となっちゃ、俺は『白帝』じゃなく『アーカード』だ。お前に旨みはないさ。」

「む……。」

「安心しろ、今まで通り警備員はやってやるよ。んじゃ。」


言い残し、学園長室から出ていった。

ああ、待っててくれエヴァ!今すぐ行くからな!!


――――――――――――――――――――――――――――――

subSide 茶々丸


「マスター、新任の歓迎会に行かなくて宜しかったのですか?」

「フン、どうせ下らん教師だ。行く必要もなかろう。」


今日はマスターと一緒にいましたから、私も情報がありません。

まぁ、明日になれば分かることですが・・・


――コンコン


と、家のドアが叩かれました。

来客とは珍しいですね。ましてや、深夜――と言うにはまだ早いようですが。

マスターが学園側と話をつけていますから、此処には超鈴音くらいしか来ません。

と言うか、魔法先生達は来られませんから。


――コンコンコン

「茶々丸、夜分に訪ねて来る不粋者をさっさと追い返せ。」


ああ、いけません。取り敢えず出ないと。


ガチャッ

「……どちら様でしょうか?」

「初めまして、今日こちらに赴任した愁磨・P・S・織原と―――」

「にいさまあああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「ブルァ!?」


・・・居間で紅茶を飲んでいたマスターが、急に飛んできました。

そのまま来た女性に飛びつき、一緒に飛んで行きました。

初めての現象ですので、どう言った対処方法を用いれば良いのか―――


「フフフ…あれは気にしなくていいわよ。それよりお茶、入れてくれるかしら?」

「・・・・ん。」


と、白髪の方の後ろに立っていたお二方に言われます。

説明はしてもらえそうですし、お茶を入れに行きましょう。


Side out
――――――――――――――――――――――――――――――



「兄さまぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁ!!」

「お゛、おー、よしよし。」


鬼気迫る顔で特攻してきたかと思ったら今度は泣き出したエヴァを

抱き締めながら、これでもかと撫でる。・・・ああ、懐かしい感触だなぁ・・・・・。

成長しない筈の体だが、幾分か柔くなっている気もする。


「…………遅い。何をしていた。」

「何って……戦ったり、戦ったり……後は歓迎会?」

「何だと!?と言う事は、新しい教師と言うのは兄さまの事か!!」

「そうだよ。って、何で今日に限って居ないんだよ。」


・・・・居たら居たで抱き締めてたが。


「だって、小学校の頃からあの訳の分からん連中と付き合って、だな。

ちょっと疲れたから、今日くらいならいいかなと思ったんだ……。

それなのに、兄さま達は今日来るし……。」


うぅぅぅ、と唸りながらまた泣き出しそうなエヴァを抱き上げて、家に向かう。


「小学校、楽しかったか?」

「……楽しくない訳ではない事もあったが………

でも、兄さまと姉さまといた方が数億倍楽しい。」

「フフフ……そっか。」


尊大だけど、ちょっと昔の甘えた感じに戻っているエヴァの返答に、

思わず微笑ましい感じがして笑ってしまう。

ドアの前についた俺はふと立ち止まり、エヴァを見下ろす。


「エヴァ、言ってない事あったな。」

「ふ………フン!なんだ!?今更謝られても―――」

「ただいま、エヴァ。」


ふぇ?と可愛らしい声を上げたエヴァは少し呆気にとられ、

・・・・泣きそうにながらも、笑顔で言ってくれた。


「おかえり、兄さま。……もう、離れんからなぁぁ……。」


――結局、たっぷり5分。軒先でエヴァを抱き締めている事になった。


Side out



………
……



――――時は少々流れ、ウェールズの山奥。



……
………



Side ???


「卒業証書授与!ネギ・スプリングフィールド!」

「ハイ!」


僕は一杯勉強して、メルディアナ魔法学校を首席で卒業出来た。

でも、全然足りないんだ。

あの時助けに来てくれた父さんみたいに、僕も『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』になって、

困ってる人を助けないといけないんだ!


「ネギー、あんたはなんて書いてあったーー?」


向こうから走ってくるのは、幼馴染のアーニャだ。

炎系の魔法を使うのが上手くて、未だに炎系の魔法だけは勝てないんだ。


「私はロンドンで占い師だって!」

「ネギはどこだったの?」

「うん、ちょうど今浮かび上がるところ。」


一緒に来たのは、従姉妹のネカネお姉ちゃん。

いつも優しくてニコニコしているんだけれど、

暫く村にいたシュウマさんの話をすると真っ赤になっちゃうんだ。


「あ、来た。えーっと……

日本で教師をやる事(A TEACHER IN JAPAN)』……って。」



「「えぇぇぇええぇぇええぇぇぇぇぇええええ!!!??」」


Side out 
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