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乱世の確率事象改変
風に消える慟哭
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 透き通る白絹のような肌。濃い茶色の髪はしっとりと艶やかに。鋭い視線は鋭利な刃物のように研ぎ澄まされ、見る者を突き刺す。
 クイ……と押し上げる仕草は知性をより深く際立たせるには十分であった。
 郭嘉――――稟は目の前の人物を推し量ろうと、その動作、言動、視線、表情の一片に至るまで、会話を繰り返す中で観察しようと見据え続ける。
 言うなれば、警戒している、疑っている……と取れる。
 しかし本心としては違う。ただ単に、自分の相手への現在の評価というモノを分かり易いカタチで表しているだけ。
 言い換えるのなら、その男と真名を交換した親友に置く信頼の裏返し。
 腹の探り合い上等、真っ直ぐに来るならそれも良し、自分は曹操軍の軍師『郭奉公』として、あなたをしっかりと見極めさせて貰います……そう、示しているのだ。
 対して、その鋭い視線に気付いていながらも、ぽりぽりと『せんべい』を齧る秋斗はなんら言葉を発さずに、ゆったりと椅子に腰かけて空を見上げていた。
 中庭の東屋。晴天は明るく、日差しは暖かい。からりとした空気は湿り気を帯びず、洗濯物が良く乾くのだろうな……などと場違いな事が秋斗の頭には思い浮かんでいた。
 半月前までならまだしも、華琳が帰って来てから忙しくなった彼が、日中にこの城でゆっくりしている方が珍しい。
 この出会いは偶然である。
 先日に話す時間を作るからとの約束を果たす為、朔夜が来るまで待っていた所を稟が偶然見つけて立ち寄っただけ。

「あなたは……徐晃殿、ですね」
「……ああ。そういうあなたは郭嘉殿、かな」

 そんな一言から始まり、華琳が求めて今も城に置いている相手が気になり、稟は同席する事に決めた。
 前情報として、稟は風や朔夜から今の秋斗がどういった人物なのかは聞いている。しかし現物を自身で確認してこそ、その人となりが見えるというモノ。
 半刻もまだ経ってはいない。秋斗も稟も、互いに言葉を掛ける事無く時間が過ぎていた。
 ふっ……と一つ息をつき、稟は目線を切った。自然体で菓子を貪り、遠い目をして空を見上げる彼の思考など、言葉で切り崩さずにどうして分かろうか、と。

「風と親しくなったようですね」

 一言、大きく投げやった。
 共通の友の名を出して親しみを感じ取らせる為、相手の警戒心を下げる為、風に対してどういったモノを感じているのか調べる為、そして何をかいつまんで話を進めて行くのか……多くの意味を含ませた。
 緩慢な動作で秋斗はもう一つせんべいを手に取り、口には持って行かずに眺めていた。

「真名のことを言ってるのならそうなるかな。郭嘉殿の話も少しばかり聞いてるけど……話してみてからのお楽しみでーと詳しくは教えてくれなかったなぁ」

 返答ははっきりとしないモノであった。話の本筋をずらし
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