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乱世の確率事象改変
風に消える慟哭
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ながらも、続きを紡ごうとはしない。歩み寄ろうという気が感じ取れない、というよりかは、先手はまだそちらで構わないと主導権を譲っている。
 しかしその対応に稟は彼の人となりを見て目を細めた。
 風の話をするか、稟の話をするか、わざと限定して選ばせているのだ。選ばせながらも稟個人の話に興味を匂わせ、情報収集の布石として。
 やはり、朔夜や主が認めるくらいなのだから頭のキレる人なのだと納得して、稟はその誘いに乗った。

「私の事など知っても面白くは無いですよ。仕事ばかりの人間ですので」

 自分の事を知りたいのならそちらから聞くべきだ、とそっと勧める。
 秋斗はせんべいを口に運んだ。バリッ、と乾いた音を鳴らして一口割り、ぼりぼりと小気味の良い音を鳴らして咀嚼し、飲み込んでからゆっくりと稟を見据えた。掛かった、というように楽しげな笑みを浮かべて。

「クク、妄想で暴走して鼻血を吹き出すって聞いたけど、それは十分面白いと思うんだが」
「なっ! ふ、風から聞いたのですか!?」

 驚愕に思わず思考も投げ捨てて立ち上がり問い詰めた。
 その慌てた様子を見て、彼はさらに笑い声を上げる。

「あははっ! 俺の勝ちー! 郭嘉殿の本隊の引き摺り出しに成功ってな」
「くっ……」

 探り合いや駆け引きとして自分の負けであった為に歯を噛みしめた。
 話の道筋に沿いながら、前情報という武器を使って稟の心情を乱す事に成功。戦であれば、軍師が慌てさせられるのは戦況が危うくなる事態である。
 疾く理解し、自分との探り合いを戦に見立てた秋斗に舌を巻いた。
 だが、彼は引き摺りだしに成功と言った。勝ち確定と見るなど愚かに過ぎる。戦の勝利は大将を抑えてこそ成り得るのだと、稟は彼を睨みつけた。

「まだ、まだ負けていませんっ! 本隊は壊滅しておらず、大将も無事なのですから!」
「おんやぁ? じゃあ引きずり出された本隊は何を仕掛けて来るのかな?」

 にやにやと笑う秋斗に苛立ちが少し。抑え付けて、こちらにも同じ武器があるのだと、稟は思考を巡らせる。
 しかして……その全てが、風との他愛ないやり取りの最中で為された掛け合いでしかなく、彼を動揺させるには些か心元無い。
 ならばと思い至ったのはこんな方法であった。

「そういえば私もあなたの事は聞きましたよ。夜な夜な店長の店に足繁く通う理由を。手取り足取り……という事ですが?」

 出来る限りぼかして誰から、何を、とは言わずに、彼が食いつきそうな話題に振りなおした。
 朔夜が日々出している話題の一つ。嘘は言っていない。料理の話に持ってくれば広げるだけ、薔薇色の話ならば否定するはず、だから躱して引き込む準備は万全……のはずだった。

「……うーん、ちょいと間違った情報だな。アレを取り合って
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