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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十七話 憂鬱な人々
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「軍人だけじゃなく政治家や財界人までクーデターに参加してた。直ぐに鎮圧されたけどクーデターの規模は大きかった、今は戦争よりも和平を結んで国内、人心を安定させる事を優先するべきだ、だろ」
「酷い話しよね、和平が来れば出世出来なくなる、経営が厳しくなる、誰も儲からない、だから戦争するべきだって言うんだから」
弟は憂鬱そうですが母の口調には憤懣が有りました。

あっけなく鎮圧されましたがクーデターの規模は大きかったと思います。軍人はエベンス大佐の他に情報部長のブロンズ中将、ムーア中将、パストーレ中将、ルグランジュ中将、ベイ大佐、クリスチアン大佐、マロン大佐、ハーベイ大佐らの高級軍人が参加していました。驚いた事にロボス元帥も参加していました。もっとも周囲からは余り相手にされていなかったようです。

財界人は殆どが軍事産業の経営者です。取り調べに対して和平が実現すれば経営が悪化する、その事を恐れたと供述しています。フェザーンを属領化し経済的な権益を得たい、そういう考えも有ったようです。彼らに親しい政治家達がクーデターに参加しました。その殆どが何らかの形で財界人から金銭面での見返りを受けていました。軍産複合体による私的利益を追求したクーデターだとマスコミは批判しています。

「俺、どうなるのかな。六月に卒業だけど和平が結ばれたら……。士官学校でも皆が心配しているよ、将来の事を。今年から入学者数も減らすって話も出てるしね……」
シェインがウーロン茶を一口飲みました。

「帝国が存在する以上急激に減らす事は無いし無制限に減らす事も無いと思うわ。でも色々な面で影響は出るわね。一番大きいのは出世が遅くなる事かな。戦争が無くなれば手当も減るから他の職業に比べてお給料も決して良いとは言えなくなると思う。まあ斜陽産業ね」
「はあ、参ったなあ」
弟が太い息を吐きました。

「何言ってるの。戦死する事が無くなったのよ、こんな有難い事無いじゃない。お給料が安いくらいで文句言うんじゃありません」
「それはそうだけど」
母に怒られて弟がボソボソと答えました。まあ母の気持ちは分かるけどお給料が安いのはちょっと辛い。それでも弟は男だし士官だからまだ恵まれている。少なくとも結婚には苦労しない筈。一番不利なのは独身の女性下士官だと思う。

「まさかとは思うけど任官拒否とか考えてるの?」
私が問うとシェインは驚いたような表情を浮かべて首を横に振りました。
「いや、それは無いよ。不名誉だからね。でも周囲には考えている人間も居るみたいだ。先が見えないから……」
「任官拒否は止めなさいね、詐欺師扱いされるから。後々不利になるわ」
弟は“うん”と言って頷きました。

任官拒否、士官学校の候補生が卒業後、軍隊へ任官するのを自発的に拒否する事です。市民の税金で学び給
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